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スキー コラム 2010年3月5日

【アルペンスキーW杯転戦記特別編】 バンクーバー五輪男子スラローム

アルペンスキー・ワールドカップ(白いサーカス)転戦記 by 田草川 嘉雄
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閉会式を翌日に控えた2月27日午前10時(現地時間)、アルペン競技の最終種目として男子スラロームが行なわれた。大会半ばは比較的好天が続いたウィスラー・マウンテンだが、日程が進み男女の技術系レースが始まる頃になると急激に下り坂となり、この日も朝から雨まじりの雪が降りしきる最悪のコンディション。コースはぐずぐずに緩み、気まぐれなガスがコース一帯を行ったり来たりする厄介な条件は、4年に1度の大勝負にかける選手の闘志に、文字通り水を差すことになった。このあまりにひどい状況に、急遽スタート位置を下げて、このコースでもっとも斜度のきつい急斜面をカット。その下の緩斜面からスタートする苦肉の策をとらざるをえなかった。インスペクションの終了後には、コースに約30人もの“つぼ足隊”が入り、その後で大量の水を撒き、さらに雪面硬化剤を投入。こうした必死のコース整備で、どうにかこうにかレースを実行できるだけの条件は確保された。

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【写真1】押し寄せる重圧に打ち勝ち、1本目のリードを守り切ったジュリアーノ・ラッツォーリ。イタリアの男子にとっては、あのアルベルト・トンバ以来、18年ぶりの五輪金メダルである
【写真2】イヴィッツァ・コスタリッチはこの大会ふたつ目のメダル獲得。ともに銀色だがこれまでの充分に満足できる結果だという

レースは1本目から、少し意外な展開となった。スラロームでは、とりわけこういう軟弱なコースでは絶対的に有利なはずのトップ7(第1シード15人のなかのさらに上位グループ)の選手のタイムが予想外に振るわなかったのだ。1番スタートのシルヴァン・ツルブリッゲン(スイス)がトップから0秒99遅れの7位に沈み、4番スタート、ジュリアン・リゼロー(フランス)は1秒03を失って8位。大本命、7番スタートのラインフリート・ヘルブスト(オーストリア)にいたっては、取り立てて大きなミスはないのにかかわらず、12位(+1秒44)と今季のワールドカップから考えれば信じられないほどの低空飛行だった。

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【写真3】アンドレ・ミューラーは1本目の10位と目立たない位置だったが、2本目は強烈なアタックを成功させ銅メダルをつかみ取った
【写真4】1本目は、むずかしい条件とトリッキーなポールセットを巧みに攻略した佐々木明。しかし2本目はアタックが裏目に出て失速した

かわりに1本目のベストタイムをマークしたのは、13番という第1シードのなかでは不利なスタート順を引き当てたジュリアーノ・ラッツォーリ(イタリア)。ワールドカップ第3戦(ザグレブ)で優勝し、第6戦(キッツビューエル)でも3位表彰台に立っているラッツォーリだが、反面失敗も多く、3試合で途中棄権。一発決まればやたらと速いものの、安定感という点から見れば、あまり高い評価の与えられる選手ではなかった。だが、軟らかい雪面と喧嘩することなく、柔らかなタッチのエッジングでこのむずかしい条件を攻略。2位につけたミトヤ・ヴァレンチッチ(スロヴェニア)に0秒43もの大差をつけてトップに立った。

これまで怪我が多く、地元イタリアで行なわれたトリノ五輪には出場していない彼にとっては、今回が初のオリンピックだ。重圧に押しつぶされても不思議はない状況だが、ラッツォーリは2本目も驚くほど冷静だった。もともと芒洋として、どこかつかみどころのない印象を受ける人物。こういう状況下で平静を保つ能力は高いのかもしれない。それでも、インターバルの間は、アルベルト・トンバやジョルジオ・ロッカといった大先輩からアドバイスを受け、とても気が楽になったという。

「アルベルトからは、1本目のことは忘れろ。そして2本目に集中するんだ、アドバイスをもらった。ジョルジオは2本目のインスペクションの間中、ずっとついてくれて僕を落ち着かせてくれた」という。30番目のスタートと言う不利な条件ながら、着実に滑り切り1本目のリードを守り切った。

「この日のために、厳しいトレーニングを積んできた。膝を怪我したり、背中の痛みに悩んだり苦しい日々が続いたが、今は最高の気分。本当に信じられないくらい嬉しい」とイタリア男子にとって18年ぶりのアルペン金メダルを獲得した25歳は初々しく喜びを語った。

2位にはイヴィッツァ・コスタリッチ(クロアチア)が入り、3位はアンドレ・ミューラー(スウェーデン)。いずれも2本目の強烈な追い上げでメダルをつかみ取った。コスタリッチは、きわめて高いコース適応力を誇る選手で軟らかいコースを苦にしない。今季も湿った雪が降り続いたウェンゲン(ワールドカップ第5戦)で優勝しており、この日の悪天候はひそかに歓迎していたはずだ。

3位は、アンドレ・ミューラー(スウェーデン)。彼もウェンゲンで2位に入っており、その経験がこの日の自信につながったという。

対照的にまったくの不振に終わったのがオーストリア勢。この大会まだメダルをひとつも獲得していないアルペン王国は、前回トリノ五輪の技術系2冠王ベンジャミン・ライヒ、今季のワールドカップでスラロームの種目別トップを走るヘルブスト、昨年の世界選手権チャンピオン、マンフレッド・プランガー、そして今季急成長のマルセル・ヒルシャーと最強の布陣で臨んだ。だが、ライヒ4位、ヒルシャー5位とわずかにメダルに届かず、ヘルブストは2本目もぱっとせず順位をひとつあげただけで、10位にとどまった。

日本から出場した佐々木明(エムシ)は18位、皆川賢太郎(竹村総合設備)は1本目のスタート直後に途中棄権という成績に終わった。佐々木は27番スタートの1本目、荒れたコースをひるまずアタックし14位と健闘。しかし、2本目は勝負に出た中盤過ぎで大きなミスを犯して失速。順位を4つ下げる結果となった。いずれもアタックした結果のミスとはいえ、結果にはやはり後悔が残るだろう。オリンピックでのメダル獲得、という日本アルペン界の大目標はまたしても実現されず、次回以降へ持ち越しとなった。

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【写真5】スタート直後の細かいセットにリズムを乱した皆川賢太郎。トリノ五輪4位の悔しさを晴らすべく乗り込んだバンクーバー五輪はわずか10秒足らずで終わった
【写真6】スタート前に急きょ“つぼ足隊”を投入し、何とかコースを作り上げたが、軟らかい雪質と視界の悪さが選手を苦しめた

田草川嘉雄

田草川 嘉雄

白いサーカスと呼ばれるアルペンスキー・ワールドカップを25年以上に渡って取材するライター&カメラマン。夢は日本選手が優勝するシーンをこの目で見届けること。
[email protected] ≫ReplaySkiRacing

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