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スキー コラム 2010年2月26日

【アルペンスキーW杯転戦記特別編】 バンクーバー五輪男子大回転

アルペンスキー・ワールドカップ(白いサーカス)転戦記 by 田草川 嘉雄
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最初に訂正を。前回のコラムで「男子GSコースの標高差は385m」と書いたが、実際は405m。参考にした資料が間違っていました。お詫びして訂正いたします。

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【写真1】昨年の世界選手権での優勝に続き、カルロ・ヤンカはオリンピックでもGSチャンピオンの座についた
【写真2】2本目の強烈なアタックで一気に銀メダルを獲得したのは、チェティル・ヤンスルッド

とはいえ、405mという標高差も一般的なワールドカップと比べると小さな数字だ。そして、その割には所要タイムのかかるレースだった。優勝したカルロ・ヤンカ(スイス)でさえ、1本目が1分17秒27で2本目は1分20秒56もかかっている。GSの場合、公式にはコースの全長が発表されないので計算のしようがないのだが、標高差と所要タイム、そしてコースサイドで見た印象を合わせて言えば、かなりスピードの遅いジャイアント・スラロームだった。おそらくふだんはワールドカップには出場しない、(言葉は悪いが)技術レベルの低い選手もエントリーするオリンピックという事情もあってのコース・セッティングなのだろう。103人がスタートして81人が2本ともゴールに到達。この数字からも、スピードを抑えた、しかも完走しやすい比較的簡単なレースだったことがうかがわれる。

しかし、そんな簡単なコースでも、レースである限り技術の優劣は表れる。優勝者はひとりで、メダルをもらえる選手は3人しかいないのだ。男子大回転、オリンピック・チャンピオンの座をかけたトップレーサーたちの争いは、非常にスリリングでエキサイティングだった。

約1週間続いた好天もそろそろ終わりに近づき、この日は朝からどんよりとした曇り空。気温もスタート地点こそ氷点下だが、ほぼ全域にわたってプラス。硬いアイスバーンとなっていたコースはやや緩み始めており、デリケートなエッジ操作が求められる条件だった。

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【写真3】この五輪で3色すべてのメダルを獲得したアクセル・ルンド・スヴィンダール
【写真4】トリノ五輪の技術系2冠王ベンジャミン・ライヒは6位に沈んだ。果たしてスラロームのタイトルは守れるのか?

1本目は、各国のエース級レーサーが上位に入り乱れる結果となった。1位から10位までわずか0秒78差。しかもそのなかに8カ国の選手がパックされるという混戦模様で、2本目の展開が予想しにくい状況であった。優勝候補にあげられていた選手は、ほぼこの上位集団に入っていたが、意外だったのはディディエ・クーシュだ。ミスらしいミスはなかったにもかかわらず、1秒48遅れの21位にとどまり、早々にメダル争いから脱落した。今季のワールドカップでは3種目(ダウンヒル、スーパーG、ジャイアント・スラローム)で4勝を記録しているクーシュは、このオリンピックでも当然のように優勝候補にあげられていた。しかし、大舞台でのプレッシャーにつぶされたのか、あるいはここウィスラーマウンテンの雪に対応できなかったのか、35歳の大ベテランは本来の力をほとんど発揮できずに終わった。

クーシュ同様、大きな期待をかけられながら不本意な滑りを続けていたのが、同じスイスのカルロ・ヤンカだ。ダウンヒルで11位、スーパーGでも8位、スーパー・コンバインド4位と、いずれもメダルに手が届かずファンを失望させていた。しかしこの日のヤンカは、それまでとはまったくの別人だった。というより、むしろ本来の姿に戻ったというべきだろう。1本目から果敢にアタックし、そしてそれを成功させた。

「きょうは、ある程度は失敗を覚悟してリスクを負って滑った。その結果、スタートからゴールまでミスなく滑り切ることができた」と勝因を語る。

「このオリンピックで僕が一番欲しかったのは、ダウンヒルの金メダルだ。ダウンヒルがアルペン競技の王者だからだ。GSはその次に欲しかった種目。これが最後のチャンスだったので、重圧はあった。ダウンヒル、スーパーG、スーパー・コンバインドと、どれも自分が望んでいたような成績が出なかったので、ここまではつらいオリンピックだった。でも最後のチャンスでメダルを手に入れることができて、とても嬉しい」。23歳という若さに似合わぬ、つねに沈着で冷静な態度からつけられたニックネームが“アイスマン”。周囲の大騒ぎをよそに、いつも通りクールな表情を崩さないが、それでもときおりのぞかせる笑顔には、こみ上げる喜びがにじんいた。

2位、3位はノルウェー勢が占めた。チェティル・ヤンスルッドとアクセル・ルンド・スヴィンダールの強力デュオが2本目のアタックで、それぞれメダルをつかみ取った。スヴィンダールは、ダウンヒルの銀、スーパーGの金に続き、銅メダルを獲得。これですべての色のメダルが揃ったことになる。

一方のヤンスルッドは、もちろん初のメダル獲得である。1本目10位から2本目のベストタイムで一気に表彰台に駆け上がった。

「オリンピックで表彰台に登れるなんて信じられない。チャンスはないと思っていた。説明のしようがないほどうれしい」と、本人も予想外のメダル獲得を満面の笑みで喜んだ。

対照的に、表情が暗かったのがオーストリア勢だ。ライバル国の活躍をよそに男子はここまでメダル0。このレースでも今季急成長のマルセル・ヒルシャーが4位となったのが最高で、ディフェンディング・チャンピオン、ベンジャミン・ライヒは6位。1本目で100分の2秒差の2位につけていたロメッド・バウマンも5位に沈んだ。常勝を義務づけられているアルペン最強国は、思いもしなかった不振にあえぐ結果となった。残るレースは、最終日のスラロームのみ。ラインフリート・ヘルブスト、マンフレッド・プランガーら強力な布陣で臨むラストチャンスで、オーストリアは最強国のプライドを保つことができるのだろうか?

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【写真5】念願の五輪金メダル獲得に、“アイスマン”カルロ・ヤンカの顔もさすがにほころんだ
【写真6】今季のワールドカップで絶好調だったマルセル・ヒルシャーもわずかにメダルに届かなかった

田草川嘉雄

田草川 嘉雄

白いサーカスと呼ばれるアルペンスキー・ワールドカップを25年以上に渡って取材するライター&カメラマン。夢は日本選手が優勝するシーンをこの目で見届けること。
[email protected] ≫ReplaySkiRacing

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