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スキー コラム 2010年1月25日

【アルペンスキーW杯転戦記】男子スラローム第7戦 シュラドミング

アルペンスキー・ワールドカップ(白いサーカス)転戦記 by 田草川 嘉雄
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つい先ほど、キッツビューエルのハーネンカム大会が終わった。最終日はスラローム。加えて、前日に行なわれたダウンヒルとの合計タイムで競うコンバインドも併催された。

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【写真1】キッツビューエルのスラローム第6戦で15位に入った湯浅直樹
【写真2】シュラドミングはワールドカップでもっとも観客動員数の多いスラロームだ

スラロームでは、フェリックス・ノイロイター(ドイツ)が優勝した。これまで6回も表彰台に上がりながら、1度もその真ん中には立てなかった25歳が、ついにワールドカップ初優勝に到達した。ノイロイターと言えば、クリスチャン・ノイロイターの名前を思い出すオールドファンも多いだろう。そう、フェリックスは、70年代のワールドカップで活躍したスラロームのスペシャリスト、クリスチャンの息子である。しかも、母親はロジ・ミッターマイヤーで、こちらはインスブルック五輪の2冠王。両親の優勝回数を合計すると16回にもなる文字通りの超サラブレッドだ。早くから注目されたのは当然のことで、彼はつねに偉大な両親の影響下で、戦ってきたのだ。2世アスリートの宿命とはいえ、それは彼にとって大きな重圧だったに違いない。25歳での初優勝というのはけっして早くはないが、ここにいたるまでの道のりには、彼本人しかわからない苦しい思いがあったのだろう。涙こそ流さなかったが、表彰式でのほっとしたような表情が印象的だった。

コンバインドの優勝は、イヴィッツァ・コスタリッチ(クロアチア)。2位のシルヴァン・ツルブリッゲン(スイス)とは2秒22もの差があり、圧勝といってよいだろう。前日のダウンヒルで7位と自身の最高順位を記録し、この日のスラロームも確実に滑って7位。文句のつけようのない成績でコンバインドの優勝を飾った。彼にとっては、通算11勝目だが、キッツビューエルでは初めての優勝。それもコンバインドでの優勝ということに意味がある。なぜなら、彼はスキーの総合力を競うコンバインドに対して、大変な情熱を持っており、なかでもこのハーネンカム大会でのコンバインドに勝つことを子供時代から夢見てきたからである。一方で、5年前に新設されたスーパー・コンバインドに対しては批判的で、国際スキー連盟(FIS)やメディアに対して、何度もその意見を表明してきた。1日のうちに、ダウンヒル(もしくはスーパーG)とスラロームを滑って順位を決めるのがスーパー・コンバインドだが、距離を短縮したダウンヒルに1本だけのスラロームでは、そこに本来の力は反映されないというのが、彼の考えなのだ。世界でもっともむずかしいダウンヒルを滑った翌日に、世界でもっとも癖のあるスラロームコースを2本滑る。ハーネンカム大会のコンバインドこそが、この競技のあるべき姿だと彼は主張する。実にまともな、説得力のある意見だと思う。実際、シルヴァン・ツルブリッゲンもコスタリッチの意見に全く同意すると述べている。しかしFISは、来季からハーネンカムのコンバインドも従来のやり方を捨て、スーパー・コンバインドにする予定だ。つまり、70年も前から連綿と続いてきた伝統を捨て去ってしまうのだ。

「いろいろと考えはある。だが、選手にできることは限られている。とにかく、最後の列車に乗ることができて(クラシックなコンバインドとしては最後になるかもしれないレースで優勝できた、という意味)良かったと思う」としみじみと喜びを語った。

日本選手は4人がスラロームに出場した。ウェンゲンのラウバーホルンバーホルン大会が終わった後、バンスコ(ブルガリア)で行なわれたヨーロッパカップのスラローム2連戦に回っていた湯浅直樹と大越龍之介が戻ってフルメンバーでの参戦。しかし、2本目に残ったのは湯浅だけで、佐々木、皆川、大越はいずれも1本目で敗退した。

湯浅は、ヨーロッパカップ2連勝というすばらしい成果を持ってワールドカップに戻ってきた。五輪へのチケットをほんのわずかの差で逃した悔しさを、この日のレースにぶつけ見事15位に入賞。1本目は2秒23遅れの15位につけ、2本目でのさらなる上昇が期待されたが、中間付近でラインが詰まり、大きくタイムロス。順位を上げることができず15位に終わった。

「あのミスがなければ、間違いなくトップ10に入ったはず」とチーフコーチのゲオルグ・ヘルリゲルは悔しがったが、彼の滑りが本来の鋭さを取り戻しつつあることはたしかだ。明後日のシュラドミングでも爆発に期待したい。

そのシュラドミングだが、26日の夕方、ナイトレースで行なわれる。日本時間では27日午前2時のスタート。深夜から明け方にかけてのつらい時間帯だが、眠気と戦う価値はあるだろう。ここは、ワールドカップのスラロームでもっとも盛り上がるレースだからだ。平日の夕方、山奥の小さな町に5万人もの観客が集まるというのは、驚異的だ。観客動員数は年々増え続け5万人超。2013年には2度目のアルペンスキー世界選手権(前回は1982年)の開催が決まっており、ますます盛り上がって行くことだろう。

コースは、ほとんどが急斜面。スタートからしばらくは中・緩斜面だが、ゆるやかにひだりにカーブするとあとはゴールまで急斜面が続く。終盤わずかにうねりはあるものの、ほぼ平滑な1枚バーン。ここ数年は比較的暖かいなかでのレースだったので、コースは荒れ気味だったが、今季は冷え込みが予想される。この急斜面が固く氷結すれば技術的な難度はさらに上がり、レースはさらにスリリングな展開となるだろう。

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【写真3】昨年の大会はオーストリアのワンツー・フィニッシュ。優勝はラインフリート・ヘルブスト
【写真4】昨年の大会で2位となったマンフレッド・プランガー。今季はやや不振だが復活のきっかけをつかみたいところ

今季のスラロームは上位選手の力が拮抗しており、混戦模様。これまで6レースが行なわれ、2戦以上で勝っているのはラインフリート・ヘルブスト(オーストリア)のみで、フェリックス・ノイロイターが今季5人目の優勝者である。この混戦状態はまだまだ続くと思われ、極論すれば、第1シードの全員が優勝候補。今回も新しい勝者が誕生する流れが続くとすれば、マティアス・ハルギン(スウェーデン)、ベンジャミン・ライヒ(オーストリア)、マンフレッド・メルク(イタリア)らに可能性があるかもしれない。

日本選手にとっては、シュラドミングはワールドカップのなかでもっとも相性の良いコースといってよいだろう。05/06シーズンには、佐々木が2位、皆川が6位とダブル入賞という快挙を達成している。昨年は湯浅の14位が唯一の入賞だったが、凍結した急斜面で日本のスラロームの技術の高さを示してほしいものだ。

田草川嘉雄

田草川 嘉雄

白いサーカスと呼ばれるアルペンスキー・ワールドカップを25年以上に渡って取材するライター&カメラマン。夢は日本選手が優勝するシーンをこの目で見届けること。
[email protected] ≫ReplaySkiRacing

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