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スキー コラム 2010年1月4日

【アルペンスキーW杯転戦記】男子スラローム第3戦 ザグレブ/スリエーメ

アルペンスキー・ワールドカップ(白いサーカス)転戦記 by 田草川 嘉雄
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2010年も男子ワールドカップはザグレブのスラロームから始まる。正確に言えばザグレブ市内からほど近い、Sljeme(スリエーメ)が会場。競技開始時刻が1本目は午後3時15分、2本目が午後6時半というナイトレースである。

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【写真1】第1戦、第2戦と連勝中のラインフリート・ヘルブスト。誰が彼の勢いを止めるのか
【写真2】昨シーズンは23位。皆川賢太郎にとって唯一の2本目進出を果たしたのがザグレブ/スリエーメのレースだった。

ザグレブは、クロアチア共和国の首都であり、人口100万弱を抱える同国最大の都市である。クロアチアは、旧ユーゴスラヴィア(ユーゴスラビア社会主義連邦共和国)との武力紛争を経て1991年6月に独立。戦闘は1995年まで続いたが、現在では独立国家としての平和と秩序を保ち、ザグレブでも人々は比較的豊かにそして平穏に暮らしている。そんなザグレブっ子にとって、イヴィッツァとヤニッツァのコスタリッチ兄妹は大きな誇りである。アルペンスキーの土壌のほとんどなかったこの国から突如現れた兄妹は、アルペン強国のエリートたちに果敢に挑み、瞬く間にトップに上り詰めた。とくに妹のヤニッツァは、00/01シーズンを皮切りに通算3度もワールドカップ総合優勝をはたし、オリンピックや世界選手権でも大活躍。3度目のワールドカップ・チャンピオンに輝いた05/06シーズンを最後に現役を退いたが、クロアチアが生んだ最高の女子アスリートとして、現在でも多くの人気と尊敬を集める存在だ。2歳年上のイヴィッツァは、当初は妹の派手な活躍の影にかくれていたが、やがて着実に頭角を表し、現在ではワールドカップを代表するトップレーサーに成長。ワールドカップでの通算勝利数は9回を数え。昨年12月には、クロアチアの最優秀スポーツ選手賞を受賞している。

このコスタリッチ兄妹が子供の頃に毎日のように練習に通ったのが、スリエーメである。「いつか、ここでワールドカップが行なわれるようになればいいな」と、当時のイヴィッツァはいつも夢見ていたという。そして夢は現実となった。リフトがたった4基(そのうちの3基は、旧式なTバーリフト)しかないちっぽけな山で、ワールドカップが開催されるようになったのだ。初の開催は04/05シーズン。最初の3シーズンは女子スラロームのみだったが、07/08シーズンからは男女のスラロームが行なわれるようになった。大会名は「VIP Snow Queen Trophy」。VIPはスポンサー名で、それに続くSnow Queenとは、もちろんヤニッツァのことだろう。今季は、1月3日に女子のレースが、1月6日に男子のレースがそれぞれ行なわれる。3日は2010年最初の日曜日、6日はクロアチアの祝日に当たるため、会場には数万人が集まることだろう。

ザグレブのレースは、非常によくオーガナイズされたレースとして評価が高い。選手や関係者、観客への対応やプログラムの進行が非常にしっかりしており、ワールドカップのスラロームとしても運営面では一二を争うレース。とくにコース作りは、例年完璧に近く、すばらしいレーシング・トラックが用意される。したがって、レースが進んでもほとんど荒れることがなく、遅いスタート順からも好タイムが期待できる。12月の強烈な寒気が一段落したヨーロッパは、このところやや気温が上がり気味。1月6日のザグレブは雪という予報が出ているが、ナイトレースということもあり、コース状況は例年通り仕上げられるはず。その素晴らしいコースで、果たしてどんな展開となるのか興味深い。

地元の英雄、イヴィッツァ・コスタリッチは過去2度の大会でいずれも表彰台に立っている。しかし一昨年はマリオ・マット(オーストリア)に、昨年はジャン・パティスタ・グランジェ(フランス)に優勝をさらわれ、2年連続の2位。今季こそ、地元のファンの前で表彰台の中央に立ちたいと闘志を燃やしているだろう。しかし、順当ならば今季の大会でも有力な優勝候補となるはずの彼は、12月13日に右膝の内視鏡手術を受けており、万全の状態とは言い難い。彼が右膝にメスを入れるのは、これが6回目のこと。いわば彼にとっての時限爆弾ともいえるのだが、幸い、今回の手術は比較的簡単なものだったようで、年末には早くも雪上に復帰。年明けには彼がトレーニングの拠点としているオーストリア、インナークレムでポールトレーニングを行っており、6日のレース当日までには、かなり調子を上げてくるだろう。とはいえ、故障明けのレースで果たして100パーセントの力を出せるかは、やはり疑問符がつく。何度も怪我に倒れ、そのたびに不屈の闘志で復活してきたイヴィッツァ・コスタリッチだが、今回はどんな復活劇を見せてくれるのだろうか。

レースの中心となるのは、やはりラインフリート・ヘルブスト(オーストリア)だろう。今季絶好調、レヴィの第1戦、アルタ・バディアの第2戦をともに危なげなく勝ち、現在2連勝中の彼は、昨シーズンのザグレブ/スリエーメでも3位に入っている。昨シーズンのスラローム種目別チャンピオン、ジャン・パティスタ・グランジェが怪我で戦線を離脱している現在、彼の勢いを止められそうな選手は、そう多くない。マンフレッド・プランガー(オーストリア)、ジュリアン・リゼロー(フランス)らの奮起が期待されるが、はたしてヘルブストの連勝に待ったをかけることができるのか、注目したい。

1月は、男子スラロームのレースが目白押しだ。6日行なわれるこのザグレブ/スリエーメを皮切りに、10日アデルボーデン(スイス)、17日ウェンゲン(スイス)、24日キッツビューエル(オーストリア)、27日シュラドミング(オーストリア)、31日クラニスカ・ゴラ(スロヴェニア)と5レースが立て続けに行なわれるのだ。ここ数年、同じ流れのスケジュールなのだが、スラローマーにとっては、この1月に調子を上げられなければ、シーズンがほとんど終了してしまうというほど、重要な時期でもある。とくに、今季はオリンピックイヤー。ワールドカップの戦いと同時に、一方では各チーム内での代表争いにも勝ち抜かなければならないわけで、多くの選手がこの時期に照準を合わせてくる。必然的に、各レースは例年にも増して白熱することだろう。

日本チームの3人にとっても、それは同じ。現状では2枠しかないバンクーバー五輪出場の権利を誰が手にするのか。1レースもおろそかにできない厳しい戦いが続くのだ。しかし、アルタ・バディアの第2戦で、全員30位以内に残り、全日本スキー連盟(SAJ)が定めた出場基準はクリア。なかなかエンジンがかからなかったシーズン初頭と比べれば、かなり道は開けてきたといってようだろう。

佐々木明(チームエムシ)は、第2戦アルタ・バディアで16位に入ったことで、上昇へのきっかけをつかみつつある。「調子は確実に上がってきている。あとはレースでの試合勘を、どれだけ取り戻すこと出来るか」とその手応えを語っている。ただしザグレブ/スリエーメのレースは、1本目が薄暮の中のレースとなることが不安材料。乱視のため、コントラストの弱い視界のときは、本来の攻撃的な滑りがむずかしいという事情があるのだ。しかし、2本目はすでにとっぷりと日が暮れるため、明かりはナイター照明のみとなり、コントラストは逆にくっきりとする。そうなればアタックモード全開が可能で、一気に期待がふくらむ。まず1本目でしっかりと30位以内に残り、視界が良好となる2本目で勝負!というのが彼の戦略となるだろう。

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【写真3】佐々木明はアルタ・バディアで16位に入り、ようやく浮上のきかっけをつかんだ
【写真4】深い霧の中でのレースとなった昨シーズン、湯浅直樹は1本目の前半で転倒

皆川賢太郎(竹村総合設備スキークラブ)にとってのポイントは、一にもニにもコンディションだろう。古傷の膝の調子はまずまずだというが、マドンナ・ディ・カンピリオで行なわれたヨーロッパカップで腰を強打。アルタ・バディアではその影響が残り、本人としてももどかしいレースだったようだ。年末の帰国で心身ともにリフレッシュし、年明けからは一気に流れに乗りたいところ。好きなコースのひとつだというザグレブ/スリエーメで、そのきっかけをつかんでほしい。

リフレッシュが必要だったのは、湯浅直樹(スポーツアルペン・スキークラブ)も同様だ。久々に身体のどこにも故障なくシーズンを迎えながら、焦りからからかほとんどゴールできないレースが続いていた。だが、アルタ・バディアでの滑りでようやく迷いを吹っ切れたようだ。本来の力をもってすれば、2本目に残るのは当たり前。1月のレースでは、もう一段高いレベルでの戦いを見てみたい。

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【写真5】地元の英雄イヴィッツァ・コスタリッチは、2年連続の2位
【写真6】昨シーズンの優勝はジャン・パティスタ・グランジェ(中央)。しかし今季は怪我ために欠場する

田草川嘉雄

田草川 嘉雄

白いサーカスと呼ばれるアルペンスキー・ワールドカップを25年以上に渡って取材するライター&カメラマン。夢は日本選手が優勝するシーンをこの目で見届けること。
[email protected] ≫ReplaySkiRacing

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