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スキー コラム 2009年12月18日

【アルペンスキーW杯転戦記】アルタ・バディア(イタリア)

アルペンスキー・ワールドカップ(白いサーカス)転戦記 by 田草川 嘉雄
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【写真1】今季の序盤戦で絶好調だったカルロ・ヤンカ。ヴァル・ディゼールでは全レース途中棄権と勢いはやや衰えたものの、注目度はナンバー1。
【写真2】20歳の新鋭、マルセル・ヒルシャー。これまでは技術系スペシャリストのイメージが強かったが、高速系種目にも非凡な才能のあることを示している

先週から、ヨーロッパアルプス一帯は急激に冷え込んできた。現在は、ワールドカップの男子ダウンヒル第4戦の会場ヴァル・ガルディナ(イタリア)に滞在しているのだが、早朝の冷え込みはとても厳しく、連日マイナス20度近くまで下がっている。昨日、ヨーロッパカップのスラロームに行くため車に乗り込んだところ、車内に置きっ放しにしておいたバナナが硬ーく凍り付いていた。さすがに釘を打てるほどではなかったものの、朝食がわりにしうよとかぶりついたが、まったく歯が立たなかった。もっとも11月下旬から行なわれた北米シリーズは、さらに寒かったようで、レイクルイーズではマイナス30度にもなったと、フランス人カメラマンが嘆いていた。撮影のために試合が終わるまで、ほぼ1箇所でジットしていなければならないカメラマンにとって、寒さをどうやりすごすかは、非常に切実な問題なのだ。

とはいえ、スキーは寒くなければ成り立たないスポーツである。身体の芯から凍りつくこの寒さに対して、口では悪態をついているが、やはり感謝しなければならないと思う。先シーズンのこの時期は、積雪量こそ多かったものの、気温はかなり高く、したがってコース状況はあまり良くなかった。その点、今年は、最高のコースコンディションが期待できる。とくに、次のレース会場、アルタ・バディアは、ドロミテ地区のスキー場としては、比較的標高が低いところにあるので、この冷え込みは願ってもない天の恵みだ。あの狭くて急で曲がりくねったGSコースが、全面凍結したとしたら、トップレーサーたちはどう攻略するのか?考えただけでもわくわくする。撮影のためにその凍結急斜面を降りなければならない我が身の不安を感じつつ、レースへの期待は高まる一方である。

アルタ・バディアは、アデルボーデン(スイス)と並ぶジャイアント・スラローム(GS)の聖地として知られる。実際のところ、ワールドカップにはやさしいコースなどひとつもないのだが、とりわけこの2会場のGSコースは難度が高い。したがって、GSの腕自慢たちにとっては、モチベーションを強くかきたてられるようで、このコースで勝つことを目標とする選手は数多い。

最大の特徴は、全コースの約3分の2を占める急斜面だ。スタートからいきなり急傾斜のコースが始まり、すぐに右に急カーブ。この後は3枚の長い急斜面が連続している。しかもただ急なだけでなく、それらが急激に方向を変えながら現れるという点に、本当の難しさがある。直角よりさらに深く切れ込む鋭角なカーブなので、ラインとエッジングの調整がとてもむずかしいのだ。

3枚目の急斜面が終わると、ゴールからも見通せる長い中・緩斜面へと続く。途中に小さなうねりがあり、ポールセット次第では、ここが最後の難所となり、やがてゴール。標高差は448m、所要タイムは例年1分15秒から20秒前後。GSのあらゆる技術が試されるこのコースは、体力的にもタフなコースといえるだろう。

昨シーズンは、ダニエル・アルブレヒト(スイス)が優勝した。しかし、彼は今回スタートしない。昨シーズンのキッツビューエル・ダウンヒル・トレーニングで大クラッシュし、しばらくの間意識不明となる重傷を負ったからだ。すでにトレーニングを開始しており、一説にはビーバークリークのGS第2戦からレースに復帰を目論んでいたようだが、結局は見送りとなった。無理して復帰を急ぐより、万全のコンディションを整えてからワールドカップに戻ってくることにしたという。また、昨年2位のイヴィッツァ・コスタリッチ(クロアチア)も今回は欠場が決まっている。古傷でもある右膝半月板を痛め、手術を受けたのだ。彼が右膝にメスを入れるのは、何とこれで6回目。ただし、比較的軽い手術であり、1月6日、彼の地元であるザグレブで行なわれるスラローム第3戦での復帰をめざすという。

昨年度の1、2位を欠くのはいささか寂しいが、しかし今季のアルタ・バディアGSはふたりの若者が盛り上げてくれるはずだ。カルロ・ヤンカ(スイス)とマルセル・ヒルシャー(オーストリア)である。ヤンカは、今季GS第1戦が2位、第2戦1位と立て続けの表彰台。またヒルシャーはヴァル・ディゼールの第3戦で優勝し、ワールドカップ初勝利を記録。さらにスーパーコンバインドでも2位となって、現在絶好調の波に乗る。

23歳と20歳。スイスとオーストリアというライバル国の若手ナンバー1同士の激突は、このレース最大の見所となるはずである。

スラロームは、GSコースの後半を使って行なわれる。スタート直後は急斜面だが、その距離は短く、後はゴール前まで長い中・緩斜面が続く。同じコースを使いながら、その印象はGSとはがらっと異なり、地形としての難度は比較的低い。その分、どんなポールセットが立てられるかがポイントとなるわけだが、いずれにしてもフラットな部分でいかにスキーを走らせるかが、勝負を左右。その点では、マティアス・ハルギン(スウェーデン)や、ジュリアン・リゼルー(フランス)といった選手に有利と言えるするだろう。

昨シーズンの勝者は、イヴィッツァ・コスタリッチ。前述の通り、今回は欠場するが、さらに、昨シーズンの種目別チャンピオン、ジャン・パティスタ・グランジェ(フランス)も怪我のために戦列を離れている。第1戦のレヴィではふたりとも表彰台に立っているだけに、その欠場の影響は大きい。

残念ながら日本選手は、こういう斜面構成を苦手とする。急斜面でのターン技術でタイムを稼ぐ日本選手にとって、ある意味でパワー勝負となるフラットなスラロームでの上位進出は、かなり厳しいだろう。とはいえ、佐々木明は、過去に2度10位以内の成績を記録しており、もちろん可能性はゼロではない。おそらくコースコンディションは、完璧に近い状態となるだろう。だとすれば遅いスタート順からでもチャンスはあるはずなので、何とかそれをつかみとりたいところ。年内最後のスラロームとなるこのレースで、日本選手に意地を見せて欲しいものである。

写真キャプション
【写真3】前半の急斜面をうなくこなしても、最後の緩斜面でスキーが走らなければ、タイムは出ない。アルタ・バディアのGSは技術的に難しいだけでなく、体力的にもタフなコースである
【写真4】ポールをぶん殴るように突進するマティアス・ハルギン。凍結した緩斜面では抜群の速さを誇る選手だ。

田草川嘉雄

田草川 嘉雄

白いサーカスと呼ばれるアルペンスキー・ワールドカップを25年以上に渡って取材するライター&カメラマン。夢は日本選手が優勝するシーンをこの目で見届けること。
[email protected] ≫ReplaySkiRacing

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