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スキー コラム 2009年1月14日

【アルペンスキーW杯転戦記】ウェンゲン(スイス)

アルペンスキー・ワールドカップ(白いサーカス)転戦記 by 田草川 嘉雄
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過去最高の観客を集めたアデルボーデンの2レース(GS&SL)が終了。ワールドカップはウェンゲンへと舞台を移す。今週末(1月16~18日)は、いよいよラウバーホルン大会だ。しばしば“伝統の”という枕詞が冠せられるこの大会は、今年で79回という古い歴史を持つ。つまり、ワールドカップの創設(1967年12月)のはるか前から行なわれてきたわけで、ラウバーホルン大会がキッツビューエルのハーネンカム大会と並び、二大クラシックレースと称される所以である。

ウェンゲンは、氷河によって削り取られたU字谷の断崖斜面に、辛うじてしがみついているような小さな村だ。谷底にあるラウターブルンネンからウェンゲンを経てクライネシャイデックヘと至るウェンゲンアルプ鉄道が、この村に至る唯一の交通機関。一般の道路は通じておらず、たとえ住民であろうと、ガソリン車(もちろんディーゼル車も)の使用は禁じられている。したがって村内の移動手段は歩くか自転車、あるいは馬車か電気自動車に限られる。そして、雪が積もればこれにスキーとそりが加わるわけだ。

村の規模は小さいが、ウェンゲンは世界に名だたる山岳リゾートだ。瀟洒なホテルやシャレーが数多く軒を連ね、周囲は360度、アルプスの絶景。ワールドカップで、もっとも美しい会場といって間違いないだろう。

ラウバーホルン大会は、長いことダウンヒルとスラローム、それに両種目の合計タイムで競うコンバインドが行なわれてきた。土曜日にダウンヒル、日曜日スラロームが行なわれ、コンバインドはそれぞれのタイムを合計したもので順位が決められた。2005年からはスーパー・コンバインドが加わり、金曜日に行なわれるようになった。これは午前中にダウンヒル、午後にスラローム(1本)を滑る競技形態。これによって従来のコンバインドは廃止となった。これについては賛否両論あるが、レース開催が3日間に増えたことで、ファンの楽しみもまた増したと言えるかもしれない。

ダウンヒルコースは、標高2315mの地点からスタートする。大会の名前ともなっているラウバーホルン(2472m)の頂上の下。スタート台に立つと、正面にアイガー(3970m)の北壁がドーンとそそり立ち、そこから視線を上げると、メンヒ(4099m)、ユングフラウ(4158m)とアルプスを代表する名峰が望める。

スタートしてしばらくは、こうした大パノラマのなかを大きな高速ターンが続く。やがて長いトラバースの後の超深まわりのロングターンを経て、このコース最大の見所と言えるフントショフの大ジャンプ。その後、コースは前述のウェンゲンアルプ鉄道のトンネルをくぐり、樹林帯のなかへと続く。もっともスピードが出る区間はこのあたりで、最高速は140㎞オーバーだ。意地の悪いことにこの後カーブは次第にきつくなり、ゴール前にはスーパーG的な小さなターンが待ちかまえる。このコースは、技術だけでなく選手の体力や根性までも試すのだ。そしてネットぎりぎりに飛び出す最終ジャンプを経てゴール。標高差1028m、全長4480m。ともにワールドカップのダウンヒルで最大のスケールである。

一方のスラロームは、クラシックコース特有のくせのある斜面が選手を悩ませる。ちいさな波やうねりがいたるところにあり、中間には目もくらむような急斜面。ゴール間近には、なんでこんなにねじれているのか理解に苦しむような不規則な起伏がある。ダウンヒルが世界でもっとも長いダウンヒルなら、ウェンゲンのスラロームは間違いなく世界でもっともむずかしいスラロームである。

そして、この超絶技巧が要求される難コースを、日本選手は得意としている。2003年には佐々木明が65番スタートから2位に飛び込む快挙を達成。2006年には皆川賢太郎が表彰台まであと100分の1秒に迫る4位に入賞している。日本のスラロームが、技術的にいかに高いレベルに達しているかを示す記録と言ってよいだろう。

週末は少し天気が崩れるという予報が出ているのが気にかかるが、アデルボーデン同様、ウェンゲンも今年は例年以上の観客が集まることが予想される。村は、週の初めはまだ静けさを保っていたが、日を追うごとに大会ムードが高まっている。水曜日からはダウンヒルのトレーニングランが開始され、選手たちも次第にレースモードへと切り替わって行く。

今年はどの種目も混戦模様なので、レース展開を予想することはむずかしい。だがアデルボーデンで惨敗に終わった地元スイス勢も、このまま黙っているわけにはいかないだろう。スーパー・コンバインドのダニエル・アルブレヒト、ダウンヒルのディディエ・クーシュには、国民の期待がさらに集中するはず。そのなかで彼らがどのように巻き返してくるか興味深い。

もちろんスラロームでは日本選手にも注目だ。調整のためにアデルボーデンをスキップした皆川賢太郎は、ウェンゲンからはワールドカップに戻ってくる。肋骨を傷めていた佐々木明の調子も少しずつ上向いており、さらに、滑りは絶好調なのになかなか結果につながらなかった湯浅直樹も、アデルボーデンで今季初ポイントを獲得し気をよくしている(ただし、ここ数日風邪気味なのが不安材料だが)。世界一の難コースで、久々に日本チームの爆発を見てみたい。

【写真1】ウェンゲンアルプ鉄道は、これぞ登山鉄道という絶景のなか、急勾配を一気に登る。

【写真2】伝統的で重厚な建物が特徴のホテル・レジーナは、ウェンゲンを代表する高級ホテルのひとつ。今年は日本チームもここに宿泊する

【写真3】日曜日までの1週間を過ごすシャレーのテラスからの夕景。かすかにダウンヒルコースも見える

【写真4】アイガー北壁が背景となるこのターンはラウバーホルン・ダウンヒルを象徴するシーンでもある

【写真5】名物ジャンプ“フントショフ”を飛び出すボーディ・ミラー。彼はこのコースに滅法強く、ラウバーホルンダウンヒル2連勝中。はたして3連勝はなるか?

田草川嘉雄

田草川 嘉雄

白いサーカスと呼ばれるアルペンスキー・ワールドカップを25年以上に渡って取材するライター&カメラマン。夢は日本選手が優勝するシーンをこの目で見届けること。
[email protected] ≫ReplaySkiRacing

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