田村岳斗 -華麗なる舞-

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このブログについて

【田村岳斗】
1979年5月28日生まれ。
プロスケーター&コーチとして活躍する男子フィギュアスケーターの第一人者。
高校3年時(1998年)に長野五輪出場。全日本選手権優勝2度の実績を持つ。現在は、関西を拠点に、未来のメダリスト育成に務める。

フィギュアスケート 15/16シーズン 2016年02月29日

四大陸男子 結果

田村岳斗 -華麗なる舞- by 田村 岳斗
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四大陸選手権男子は、パトリック・チャン選手が素晴らしいフリーで大逆転優勝しました。
また、2位のボーヤン・ジン選手は、SPで2発、フリーで4発、計6発の4回転を決めるという
衝撃的なものを見せてくれました。どちらもあまりにすごかったと思います。

まずチャン選手ですが、彼の全盛期は、
前回の五輪の前までだったのかなと勝手に思っていたのですが、
むしろこれからがチャン選手の全盛期と思わせてくれるのに十分な内容でした。
演技の内容もトリプルアクセルが1本増えていますし、
表現面だけでなく、技術的・体力的にもまだまだ伸びていく可能性を感じました。
しかもボーヤン・ジン選手があの衝撃の演技をした直後ですから、
さらにチャン選手のすごさを見る思いでした。

ボーヤン・ジン選手は、史上初のフリー4回転4発です。
SP、フリーで11本のジャンプの内、6本が4回転ですから、
もっと大きな話題になってもいいはずですが、
ノルウェーから帰国して、あまり騒がれていないようでちょっと不思議に感じました。

ちなみに僕も選手時代に練習で1度だけ4回転ルッツに挑戦したことがあります。
決められないどころか、肘を激しく打って、腫れ上がった経験があります。
それ以来、4回転ルッツに挑戦するような無謀なことは二度としませんでした(笑)。
それだけにボーヤン・ジン選手がいかにとんでもないことをやってのけたのか、
身に沁みて感じます。

ボーヤン・ジン選手に対して、ジャンプだけのイメージがあるかもしれませんが、
経験豊富なチャン選手の表現力と比較したら、まだ発展途上に見えるのは仕方ありません。
3度も世界チャンピオンになっている選手の比較対象になるだけでもすごいことです。
4回転以外のジャンプも素晴らしいですし、スピンもとてもいいものを持っています。

そんなボーヤン・ジン選手の演技を見ても動じないチャン選手でしたが、
SPでは前半2つのジャンプでバランスを崩していました。
普通なら取り戻そうと後半無理してでも3回転+3回転で行きたくなるところを
状況を冷静に判断して3回転+2回転にしています。
終わってみれば、あの冷静な判断が、フリーでの大逆転につながったのではと考えています。
チャン選手の頭の中では、2日間で1試合という考えがしっかりあるのかもしれません。
例えSP、フリーと曲調はちがっても、
トータルでトップに立つということを考えて、どこを抑えて、どこで攻めるか。
ミスが出た時、SPのミスはどうしてもSPの中で、
少しでも取り返したいという思いが強くなりがちです。
それを抑えて滑ることができるチャン選手の経験と実績は、
次の世界選手権でどう発揮されるか楽しみです。

3位のハン・ヤン選手もとてもいい演技でした。
ただ、上位2人と比較すると、勝つためには突き抜けた何かが必要になってくるでしょう。

4位の宇野選手。メダルには手が届きませんでしたが、
世界選手権、オリンピックでメダルを狙うために、
試合の中でいろいろ試しているところではないでしょうか。
データを取る事ができますし、対処法や改善すべきところもわかります。
宇野選手にはそれをやれるだけの実力が十分備わっていると思います。


今回出場しなかった羽生選手は、この四大陸を見て、とても喜んでいるのではないでしょうか。
彼は相手が強ければ強いほどモチベーションが上がってくる選手だと思います。
ソチオリンピック以降、チームメートのフェルナンデス選手との2強時代が続いていただけに、
さらなる強いライバルの出現は大歓迎だと思います。

今回の四大陸のレベルの高さを見ると、
世界選手権はいったい何が起こるのか、今からとても楽しみです。

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