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「ライバルの存在」| 町田樹のスポーツアカデミア 【特別編】 ~アーティストとアスリートの身体・精神論~ 音楽家 反田恭平
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部M:個人としてはお客さんが1人であろうが、1万人であろうが同じだけ緊張するんですよね。僕は緊張をマネジメントする一つの方法として、目の前の競技会を最終目標にしないことが大事だと思っています。つまり、そこで勝ちたいという目標でその舞台に立つと、勝てなかったら終わり。だけど、この競技会でこの順位を取ることはその先の人生において意味があるから自分はここでメダルを取らなければいけない。でも、そのメダルはあの目標を達成するために必要なんだと、長期的なビジョンの中に目の前の緊張するものを置くとだいぶ力強く進めると自己分析をしています。今回、反田さんはまさにそれだなと感じました。指揮者になるという長期的な目標、あるいはジャパン・ナショナル オーケストラをしっかりと経営して世界に発信したいというビジョンがあって、そこにショパンコンクールやそれまでの活動が明確に計画されている。もちろん使命感もあったと思います。
S:結局は誰のために弾くかです。僕は好きな人のためであったり、友達だったり、家族かもしれないし、総じて自分にとって愛しい人たちに弾くのが一番良い演奏ができる。そのことを考えて弾くとやっぱり緊張しなくなってくる。帰る場所があったりする、それが自分の会社だったりするかもしれないし、オーケストラなのかもしれないですけど、友達がいるからこそ緊張しないと強く思うようになりましたね。
M:もちろん1位を狙っているけど、弾くときには誰のためにとか、なぜ弾くのか、どういう演奏をしたいのかという本質に重きを置くということですね。
S:前回の優勝者のファイナルの演奏がYoutubeで1500万回再生くらいしています。良い演奏さえすれば色々な人に見てもらえる。僕はショパンコンクールまでは、サウジアラビアとかイランやイラクなどで弾いたことはないし、僕のことを知っている人もいなかったはずですが、ヘブライ語でのメッセージが来たりします。あのとき純粋に音楽を楽しめたから、今こうして知ってくれる人が増えたと思います。あのとき確かに一番強く思ったことは、この曲がいかに素敵な作品なのか、どれだけ僕がこの作品のことが大好きなのかを伝えたくて弾こうと思いました。それがやっぱり良かったんだと思いますね。
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