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「ピアニストの身体運動」| 町田樹のスポーツアカデミア 【特別編】 ~アーティストとアスリートの身体・精神論~ 音楽家 反田恭平
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部町田(以下M):そもそも人体の構造を把握して、反田さん自身の個性や癖も分析されて演奏をされているということですよね。
S:1人で弾く分にはある程度の最大値で充分なんですけど、コンチェルトを弾く時はその最大値を上げて弾いています。筋肉に与える負荷を上げるというか、ギアを上げています。例えばチャイコフスキーとか、ロシアの音楽は壮大なものが多くて、打鍵する瞬間に手で力強く掴むように弾くことで瞬間的な音圧や音色が作れます。身体だけではなく、指先のコントロールもかなり重要になってきます。
M:1時間を超えるような演奏の場合は持久力も大切になりますよね。
S:そうですね。あとは冷静さも必要です。それはスポーツも同じだと思いますが、第三者から俯瞰して見る能力は非常に大事ですね。心臓の鼓動が速くなる分、例えば家で練習しているときの心拍数のテンポが60くらいだとしても、本番は80〜90くらいになっているかもしれません。その時にカウントする四分音符1個分と、家にいるときとでは絶対に違うわけです。そのときに僕は本番前に脈を測って、自分がどれだけ心拍数が上がっているのかを確認したりします。それで、ちょっと速めだから落ち着いて弾いてみようと決めて弾いたりしています。
ピアノは反響して返ってきた音を聞きます。そういう耳の使い方も大事で、サッカーだったら掛け声とかにあたるのかもしれないですけど、耳で弾くということがピアノにおいては大事になります。家でやることは技術的なトレーニングかもしれないけど、本番でやることは頭や耳で弾くことが多いです。直感とか。
M:客観的に自分を見て、身体的にも精神的にもコントロールしていくと。
S:一番伝えたいところですが説明するのが難しいのは「耳を会場に置いておく」ということです。お客さんの立場になって弾けということですね。練習のときから音を遠くに飛ばすイメージで引きなさいと先生には言われます。
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