人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

フィギュア スケート コラム 2020年5月11日

【髙橋大輔選手スペシャルセレクション】モロゾフの胸で泣き、長光歌子コーチと抱き合いまた泣いた。「日本男子初の銀メダルを届けられたことが、本当に嬉しい」

フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部
  • Line

迎えた翌日のフリー。最終グループは今でもため息がでるほどに豪華なメンバーが揃った。世界選2連覇中のステファン・ランビエール、後の五輪覇者エヴァン・ライサチェク、羽生結弦のインスピレーションの源ジョニー・ウィアー、トリノ銅メダリストのジェフリー・バトル、さらに同シーズンここまで無敵のブライアン・ジュベール。

中でも前日ジャンプのミスがたたり6位と出遅れたランビエールが、さすが、としか言いようのない好演技を実現させる。

「自己の証明を終えてしまった」といわゆる燃え尽き症候群に陥り、年頭の欧州選手権をキャンセルしたはずではなかったのか。しかしランビ、つまり宇野昌磨の現コーチは、長い葛藤と瞑想の果てに「未知の世界へ旅に出よう。自分自身のために、自分の喜びのために滑ろう」との考えに到達していた。しかも稀代のアーチストは、まったく新しい2つのプログラムと共に来日した。「スケーターとは、常に、なにか新しいものをもたらさねばならないのだよ」と。

こうして競技会で初披露されたフリーの『ポエタ』は、まさに芸術作品だった。フラメンコとフィギュアスケートの完全なる融合。濃密なトランジション。永遠に色褪せないであろうレジェンドプログラム。

続く22番滑走はジュベール。すでに世界の頂点に2度君臨したランビエールとは正反対に、フランスの「4回転王」は、絶望的なまでに初の世界タイトルを渇望していた。同シーズンはGPシリーズ2戦、GPファイナル、国内選、欧州選とすべてを勝ち取ってきた。欧州選直後に怪我もしたが、ジュベールの勢いは止まらない。

ショートでは、これまた名ナンバー中の名ナンバー『007 ダイ・アナザー・デイ』を、スピード感満載で滑りきった。フリーは「ものすごく冷静に計算を働かせた」。前夜まったく眠れず(ホテルの隣室がペア優勝の中国組で、夜通しお祝いしていたからだそう)、朝の公式練習は壊滅的。だから「常に攻める、という僕の姿勢には反するけど」……3本予定していた4回転ジャンプを、1本に減らした。結果は吉とでた。クリーンにプログラムを滑り切り、演技終了前からガッツポーズが何度も飛び出したほど。「まるでホームのような気分だった。だから、お客さんたちに、喜びの気持ちを体で伝えたかったんだ」と振り返る。

2つの神演技が続いた。会場は興奮に沸いた。しかしこの日、最高の演技を成功させ、最高に観客を熱狂させるのは、高橋大輔なのだ。

プログラムはご存知、『オペラ座の怪人』。師事して2年目のニコライ・モロゾフが振り付けた、ストーリー性の高い4分半。時にロマンチックに、時に切なく。ファントムの苦悩や悲しみが、高橋の肢体を通して鮮やかに表現される。演技後半に立て続けに組み込まれた5つのジャンプ要素が、緊迫感を否が応でも高めていく。そして前述のストレートラインステップへ。会場内のボルテージは最高潮に達し、スタンディングオベーションはいつまでも鳴り止まなかった。

ラストでマスクを剥ぎ取り、素顔に戻った高橋の瞳には、涙があふれていた。リンクを出た直後に、モロゾフの胸で声を上げて泣き、得点と順位が出た時点で、長光歌子コーチと抱き合いまた泣いた。

ジュベールが逃げ切りで念願の初タイトルを獲得し、フランス男子として42年ぶりの世界王者となった。ランビエールはSP6位から一気に3位へとジャンプアップ。一方ショートを2位で終えながら、最終滑走バトルは6位へ後退。ただし同じフリーのプログラムを、1年後のヨーテボリでほぼ完璧に演じ切り、世界チャンピオンに輝いている。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

人気ランキング(オンデマンド番組)

J SPORTSで
フィギュア スケートを応援しよう!

フィギュア スケートの放送・配信ページへ