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Text by セルゲイ・ヴォルコフスキー
シングル種目が技術至上主義になり、選手がエレメンツをこなすのに汲々として、芸術性の希薄化が否めない現在、ペアとアイスダンスはかつてのフィギュアスケートの懐かしい面影を残している。
今年の欧州選手権の注目のペアは5組。
今季のグランプリファイナルを制したヴァネッサ・ジェームズ&モルガン・シプレ、イタリアのニコーレ・デラ・モニカ&マッテオ・グアリーゼ、そしてロシアの3カップル、昨年本選手権優勝のエフゲーニャ・タラソワ&ウラジーミル・モロゾフ、アレクサンドラ・ボイコワ&ドミトリー・コズロフスキー、ダリア・パブリュチェンコ&デニス・ホディキン。
アレクサンドラ・ボイコワは、ジェームズ&シプレのユニークで現代的な振り付けとトランジションやリフト、そのスタイル自体が大好きだと言う。それはモルガンの豹のような柔軟性と、シプレのキン肉マンと言って良いほどの筋力、そしてパートナーシップ力により成り立っている。
イタリアの大人の美麗なペア、デラ・モニカ&グアリーゼ。グアリーゼはローラースケートからフィギュアへ転向という異色の経歴の持ち主。技術修正のトレーニングも大変だったと思うが、現在のテクニックの安定感は抜群だ。
タラソワ&モロゾフは今季は国内選手権をノーミスで優勝し、また一段階段を登ったようだ。数々の試練を乗り越えたことで強靭さが増し、貫禄もついてきた。
ジュニアからシニアへ移行したばかりのアレクサンドラ・ボイコワ&ドミトリー・コズロフスキーも、ロシア選手権で最高の演技を披露し、大きな飛躍を見せた。コーチのタマラ・モスクヴィナ譲りで哲学者肌のコズロフスキーと、天真爛漫なボイコワは微笑ましいほど好対照だが、それが逆に非常に良く作用している。
パブリュチェンコ&ホディキンは、国内大会は4位だったが、2位のナタリア・ザビヤコ&アレクサンドル・エンベルトの棄権により出場が決定した。運も実力の内、高い技術力を持つ若く野心的な二人には、シニアのペアに必要な成長を遂げる絶好のチャンスを、是非ものにしてほしい。
ペアの出場組は全12組で昨年より2組減っている。ペアの競技人口が多く層の厚いロシアにとっては複雑な思いだ。特に現在のロシアは優秀なジュニアのペアが非常に増え、日々切磋琢磨している。ボイコワが憧れるジェームズ&シプレも30歳と27歳(失礼!)。これからのペアの未来は、ペア大国でもあるロシアが、近年のフィギュアスケート国内人気も相まって、大きな原動力となってリードして行くだろう。
セルゲイ・ヴォルコフスキー
1967年ロシア生まれ。モスクワ大学日本語学科を卒業。
日本人と結婚し、ソ連崩壊を機に日本に移住。フリーランスの通訳・ジャーナリストとして活動。日本文化への関心が高じ、ロシア語で俳句を紹介するブログも執筆。ソチ五輪を始めとするフィギュアスケートの国際大会で、記者・通訳としても活躍している。
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