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フィギュアスケートのファンは幸せだ。
そう思うことは、これまでも何度かあった。
選手が、ノーミスで滑り終えた時、ベストスコアを更新した時、課題としていた技が決まった時。そのガッツポーズに、その涙に、ともに歓喜し、ファン同士喜びを分かち合う。
それが応援している選手ならば、感動も尚更だ。
他のアスリート同様、フィギュアスケーターの多くも、怪我やスランプなど様々な障害にぶつかり、それらを克服しようともがいている。
ファンはそれを知っているからこそ、試合という大舞台で花を咲かせた選手に、惜しみない拍手を送り、また自分たちも大きな感動をもらうのだ。
だから、演技を終えた選手に対して「ありがとう」という言葉が飛ぶ。素晴らしい演技をありがとう。頑張ってくれてありがとう。そして、スケートを続けてくれてありがとう。
同時にtwitterやインスタグラムなどのSNSにも書き込まれ、ファンの間を一気に駆け巡る。選手に直接言えなくてもこの気持ちを表さずにはいられない。そんな思いの共有が、しばしの高揚感と一体感を与えてくれる。
3月29日から4月2日の5日間、フィンランドのヘルシンキでフィギュアスケート世界選手権が開催された。毎年、シーズン最後に行われるこの大会は五輪に次いで権威のあるもので、優勝者は世界王者と称される。今回は平昌五輪の出場枠を決定する重要な大会でもあり、注目度は例年以上。さらに、2014年の金メダリスト、羽生結弦選手の王者奪還への期待と相まって、日本から多くのフィギュアスケートファンが現地応援に駆けつけた。
SP(ショートプログラム)が終わった時点で、5位と出遅れた羽生選手。ファンの落胆ぶりはいかばかりかと思いきや、会場で出会った人たちの多くは表情も明るかった。ネガティブな言葉はどの口からも聞かれず、SPでの10点以上のリードをハビエル・フェルナンデスに覆され、2位に沈んだ昨年の例を挙げ、だからこれは逆転優勝への布石なのだ、という声も多かった。そして、ネット上のファンの反応も、見事なまでに同様だった。
しかし、そこには拭きれない不安が見え隠れしていた。言霊を信じ、もし心配を口にしたらその通りになってしまうのではないかという恐れと、ファンの皆が闘っているように感じた。
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