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女子では安藤美姫が4年ぶりの世界タイトルを手にして日本に明るいニュースをもたらした。2位から挑んだフリーでは、安藤は着実にジャンプを成功させていき、合計3回転を5回成功させた。2アクセルに続けて予定していた3トウループが2回転になるなどの小さなミスはあったものの、全体をうまくまとめてキム・ヨナを逆転。2007年に続いて2度目の世界タイトルを手にした。「今回は日本の人たちへの思いを抱えて、最初からメダルが欲しいと思って滑った。4年前のメダルよりも重たいメダルだと思う」とコメントした。
SP1位だったキムは、フリーでは3トウループと3フリップがそれぞれ1回転になるというミスが出た。初披露した「アリラン」は美しいプログラムだが、まだ滑り込みが足りない印象だったためなのか、全体的にそれほど得点が伸びなかった。大きく崩れることはなかったものの、安藤に逆転を許して2位に甘んじた。表彰式で涙ぐんだ理由を会見で聞かれると、「どうして泣いたのか自分でもよくわからないけれど、気がついたら涙が流れていた。久しぶりに試合に出てきて感情が高ぶったのかも」と答えた。
3位は、久しぶりに全体をまとめて彼女本来の美しいスケーティングで魅せてくれた、イタリアのカロリナ・コストナーだった。
浅田真央は3アクセルに挑戦したが、回転不足となり、後半の3トウループもダウングレードされるなど、本来の演技を見せられずに総合6位だった。「四大陸選手権の後、3アクセルが不調になって練習でも回転が足りたのは1回だけ。でも試合で挑戦しなければ、自分が納得できなかったので」とコメント。長いシーズンを終えてやや疲れた様子だったが、今季からコンビを組んだ佐藤信夫コーチには、試合後に「またスケーティングやジャンプの基礎からしっかりやり直していこうと言われています」と早くも来季への意欲を見せた。
初出場の村上佳菜子は、SP、フリーともいくつかミスはあったが大きく崩れることもなく総合8位と健闘した。「すべての面において勉強になった。どの選手も、とっても上手くて自分ももっともっと上手くなりたいなと思いました」とこの大会の感想を述べた。
アイスダンスでは、昨年度2位だったメリル・デイビス&チャーリー・ホワイトが初タイトルを手にし、米国に史上初のアイスダンス世界タイトルをもたらした。
2位は、10月に女性が脚の手術をしてずっと競技を休んでいたバンクーバー五輪王者のテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア。
ヨーロッパ勢の失敗が目立った中で、ショートダンス、フリーともに伸び伸びとした端正な滑りを見せた日系米国人兄妹のマイア・シブタニ&アレックス・シブタニが銅メダルを獲得した。今季がシニアデビューだった彼らが予想外の3位入賞を果たし、北米勢がアイスダンスの表彰台を独占するという初の記録を作った。
3チームとも、イゴーリ・シェピルバンドとマリナ・ズエヴァの元でトレーニングをしているスケーターたちで、同じコーチのチームがアイスダンスの表彰台を独占したのは、1992年以来19年ぶりのこと。このときはクリモワ&ポノマレンコ、ウソワ&ズーリン、グリシューク&プラトフという、ナタリア・デュボワの生徒3チームが独占した。
田村 明子
盛岡市出身、ノンフィクションライター。1977年留学のため単身渡米し、現在ニューヨーク在住。長い滞米生活と語学力を生かして多様な方面で執筆活動を行う。フィギュアスケートは1993年からはじめ、これまで15回の世界選手権、3度の冬季五輪を取材。選手のみならず、コーチ、ジャッジ、ISU関係者など幅広い人脈を駆使して多面的な視点から執筆。著書に「氷上の光と影」(新潮社)他。
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