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4月28日に行われた男子の決勝は、パトリック・チャンが圧倒的な強さを見せてトップを独走し、新チャンピオンとなった。
昨年と同じ「オペラ座の怪人」のプログラムで、かねてから宣言していた通り、4回転トウループを2回成功させて、187.96を獲得。ボードのギリギリまで迫ってくるスケーティングの滑らかさ、スピードを保ちながら難しいトランジションを組み込み、コンポーネントもほとんど9点台をマーク。総合280.98というISUの最高スコアを更新した。
「点差はついていたけれど、フリーで4回転を2回やるというのは自分で決めて練習してきたことだから、本番でも変えるつもりはなかった」と会見で語った。
SP6位だった小塚崇彦は4トウループをきれいにきめるなど完璧な演技で、180.79という高得点を手にした。技術点ではチャンを2点上回る98.53を獲得。フリー、総合ともに2位となり、銀メダルを手にした。「緊張はしたけれど、(佐藤)信夫先生に、これまで練習を積み重ねてきた自分を信じて滑りなさいと言われて、気持ちを落ち着けることができた」と会見で語った。
3位は地元の盛大な応援のプレッシャーにこたえて4+3トウループなどを成功させて健闘した、ロシアの若手アルトゥール・ガチンスキーが入った。
高橋大輔は、出だしの4トウループに挑んだが1回転になり着氷したときにブレードのビスが緩むというアクシデントに見舞われて、演技を中断。修理の後、中断したところから演技を再開したが3サルコウで転倒するなど、力を発揮しきれずにフリー6位、総合5位にとどまった。
織田信成は出だしに予定していた4トウループを3+3のトウループにしたために、その後の3アクセル+3トウループがトウループジャンプの3回重複でゼロ点に。これまで何度か苦い思いをしてきたはずのジャンプルール違反を再び犯して総合6位にとどまった。いずれも避けられることが可能だったケアレスミスが原因でメダルを逃したのは、残念な結果だった。
ペアでは、SP2位だったサフチェンコ&ゾルコーヴィがノーミスの「ピンクパンサー」でほぼ完ぺきな演技をきめて、逆転優勝を果たし3度目の世界タイトルを手に入れた。2位はプロコフィエフの「ロミオとジュリエット」でロマンチックな演技を見せた新チーム、ヴォルサザール&トランコフ。いずれもトップペア選手だった二人がわずか1年前に結成した新しい組だが、二つのペアの強い選手が結成しただけあり、驚くほどの完成度の高さを見せた。
SP1位だったパン&トンは、トンのジャンプミスが出て3位に終わった。川口&スミルノフはSPではスミルノフの転倒があり5位スタートだったが、フリーでは川口が珍しくスロウ3ループで転倒。フリー4位、総合4位で惜しくも表彰台を逃した。
田村 明子
盛岡市出身、ノンフィクションライター。1977年留学のため単身渡米し、現在ニューヨーク在住。長い滞米生活と語学力を生かして多様な方面で執筆活動を行う。フィギュアスケートは1993年からはじめ、これまで15回の世界選手権、3度の冬季五輪を取材。選手のみならず、コーチ、ジャッジ、ISU関係者など幅広い人脈を駆使して多面的な視点から執筆。著書に「氷上の光と影」(新潮社)他。
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