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NHK杯の混戦
フィギュアスケートでは何が起きるかわからない。そのことを、思い知らされた大会だった。予想外の展開がいくつか起きた今季のGPシリーズだが、NHK杯の男子も混戦となった。
過去の世界メダリスト、GPファイナルメダリスト、世界ジュニアメダリストたちが12人中8人という今回の男子は、全GPシリーズ中最大の激戦区と言われていた。その中で踏みとどまってタイトルをもぎ取ったのは、元世界王者のブライアン・ジュベールだった。SP、フリーともにトップを保ち、232.70でNHK杯初優勝。フランス杯4位という不調なスタートの雪辱を晴らした。2位は風邪で高熱と戦いながらも大きなミスなく全体をまとめて217.70を得たジョニー・ウイア。彼もまたロシア杯4位と不本意なGPシリーズのスタートをきったが、ここで表彰台に返り咲いてGPファイナル進出の可能性も出てきた。強豪たちを押しのけて3位に入ったのは、2009年世界ジュニア2位だったミシェル・ブレジナ。端正な滑りでノーミスのフリーを滑りきり、SP6位から逆転入賞を果たした。
期待されていた高橋大輔は、SP、フリーともに転倒して総合4位だった。1年のブランクを乗り越えてのGP復帰戦だったが、本格的に試合勘を取り戻すのはまだこれから。2戦目のスケートカナダまでには、もっと調整をしてくることだろう。昨年度GPファイナル2位だった小塚崇彦は、緊張したのか不調な演技で総合7位に終わり、今季GPファイナル進出は絶望的となった。
女子もトップ選手たちのミスが続いて乱戦のSPだったが、最後に踏みとどまって安定した実力を示したのは安藤美姫だった。ロシア杯に続いてNHK杯も初優勝し、女子でGPファイナル出場権をいちやく早く手にした。2位はロシアのアリョーナ・レオノワ、3位がアメリカのアシュリー・ワグナーと若手たちが追い上げてきたのが目立った。中野友加里はジャンプミスがいくつか重なって総合4位に終わり、4度目のGPファイナル進出のチャンスを逃した。
田村 明子
盛岡市出身、ノンフィクションライター。1977年留学のため単身渡米し、現在ニューヨーク在住。長い滞米生活と語学力を生かして多様な方面で執筆活動を行う。フィギュアスケートは1993年からはじめ、これまで15回の世界選手権、3度の冬季五輪を取材。選手のみならず、コーチ、ジャッジ、ISU関係者など幅広い人脈を駆使して多面的な視点から執筆。著書に「氷上の光と影」(新潮社)他。
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