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卒業後、地元のやんばるクラブに所属、市管工事組合に籍を得て、水道料金滞納の家の栓を施錠して回った。やがて、やんばるの仲間の声が高まる。
「周作がここにいるのはうれしい。しかし、ここにいるべきではない。さあトップリーグへ」
サニックスのトライアルに臨んだ。外国人選手を倒しに倒して、セッションが終わると言った。「さ、帰りましょうね」。入団は決まった。2007年から2020年まで在籍、トップリーグに77試合出場した。
いま頭に浮かび、直接取材した両雄を挙げた。こんな経歴の者はあまたいる。たとえば現役のプロップ、加藤一希は、愛知の春日丘高校では、かの姫野和樹と同期、ただし、こちらは「3軍」だった。それがサニックス、宗像サニックスブルースである。
このほど「2022年5月末日」をもって「活動休止」が発表された。「現下の経営環境を総合的に判断した結果」である。あらためて記録ならぬ記憶のクラブに敬意を捧げよう。いっぺんも王様でなかったが、いちども負け犬ではなかった。関東や関西の強豪大学からの逸材はたいがい素通りする。名も無き選手たちは、しかし、独自の方法で「富める者」を困らせた。
2008年。神戸製鋼コベルコスティーラーズを破る。京都の西京極における快挙だった。25対21。31歳の古賀龍二、22歳の濱里周作はともに先発に名を連ねていた。
サニックスの培った根の力の証明はむしろ翌09年度の同カードに示された。敵地に近い雨中の大阪で9対12の惜敗。前年の黒星に油断を断った才能集団に堂々と伍した。
神戸製鋼のSH後藤翔太は試合後にこう話した。
「トップリーグで戦っていて相手に哲学を感じるのは上の三つ(東芝、三洋電機、サントリー)とサニックスです」
フィットネスがあった。パス主体のスタイルがあった。元名古屋の青果市場勤務、こちらも叩き上げの藤井雄一郎監督(現・日本代表強化担当)は、戦法や練習法を自分の頭で創造できた。どのみち国内の大物は入団しない。だから「走りつなぐ」に割り切れた。新人が春の練習で8kgもやせた。サニックスはこの09年度に7位。これが最高の成績となった。
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