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懸命に食らいつく筑波大学に最大のチャンスが訪れたのは70分だった。自陣10メートル線付近のマイボールスクラムから左オープンに展開し、FB松永がディフェンス裏のぽっかりと空いたスペースへキック。途中出場のWTB一口直貴がスピードに乗って追いかけ、トライライン目前で弾むボールを手にする。しかし帝京大学もWTB白國亮大が必死のカバーリングで追いつき、味方が戻ってくる時間を稼ぐと、ディフェンスラインが分厚い壁となって最後の一線を死守。相手が孤立したところでボールに絡み、ノットリリースザボールの反則を勝ち取った。
帝京大のアタックに対して、粘り強いディフェンスを見せた筑波大
最大の危機を切り抜けた帝京大学はその後、たたみかけるような連続攻撃でプレッシャーをかけ、敵陣で時計を進める。そしてインジャリータイムに入った84分、約30メートルのPGをSO高本が落ち着いて成功。ワンチャンスでは追いつけない10点差までリードを広げて、勝利を決定づけた。
緊張で硬くなって当然のシーズン初戦、それも強敵とのいきなりの激突だけに細かい部分でのエラーは目立ったが、今季の両チームの持ち味も随所に表れた一戦だった。帝京大学は攻め込んだ位置でのマイボールラインアウトとラインブレイク後のつなぎに課題を残したものの、猛烈なスクラムの押しと個々のボールキャリーの破壊力はどのチームに対しても脅威になることを感じさせた。反則が重なり強みのバックスリーを走らせる場面が少なかった筑波大学も、コンタクトエリアで奮闘し、終盤にあわやという状況に持ち込めたことは、確かな自信になるはずだ。
ラグビー 関東大学対抗戦2021
【ハイライト】 帝京大学 vs. 筑波大学
試合後の記者会見で帝京大学のPR細木主将は、「筑波大学がコンタクトのシーンでガツガツ前に出てくることを意識して臨みましたが、受けてしまう部分がたくさんあってタフなゲームになりました。僕たちにとってすごく勉強になる、いい試合でした」とコメント。筑波大学の嶋崎達也監督も、「選手はかなり意識していたが、絶対にしてはいけないペナルティがあって、ダメージが体にのしかかって最後に動けなかった。アタックの精度もワンチャンスで取れるところがあったので、そうした部分を磨き上げていきたい」と次戦以降の戦いに向け意気込みを口にした。
多くの手応えをつかむ初戦を経て、ここからどのようにチームとして成熟していくのか。両者の今後の戦いぶりが楽しみだ。
文:直江 光信
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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