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ラグビー コラム 2021年9月8日

この瞬間がヒストリー ~大学ラグビーの開幕を前に~

be rugby ~ラグビーであれ~ by 藤島 大
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上位校でないクラブの長い練習を見つめる。そこに気鋭の監督の情熱はほとばしった。そう。学生ラグビーとは、それぞれのクラブのそれぞれの指導者やひとりひとりの部員が「いかに生きるか」を競うチャンピオンシップでもある。

伝統とは瞬間の堆積だ。古いクラブも、仮に昨日創設されたクラブも、いまそのときだけが長大なヒストリーを築く。

2020年11月30日。秩父宮ラグビー場。慶應義塾大学が帝京大学を29-24で破った。そこまで2勝4敗の黒黄ジャージィは大学選手権出場の可能性をすでに断たれていた。しかし「ひとつの決闘」に全力で挑んだ。4年のフランカー、川合秀和の攻守は際立っていた。どう形容するのか人間の計量不能の力を示して、おかしなくらいゲインとタックルを繰り返した。

最終学年の最後の公式戦が青年の使命感や生命力を奥底からつかみ出した。スプリングボクスともイングランドともジャパンとも別の次元における一幕だ。それどころか全国選手権とも結びつかない。なのに瞬間を生き切って、そのことは100年後の慶應ラグビーとつながっている。

1985年11月17日。滋賀・希望ヶ丘競技場。大阪体育大学が同志社大学の関西Aリーグ連勝を「71」で止めた。34ー8。フランカーの永田克也は開始前、ジャージィ姿の写真を後輩に撮らせた。坂田好弘監督は「チャラチャラしたことするな、と叱った」(『心で見る』)。違った。「親に遺す形見の写真」(同)の覚悟なのだった。

青春の思い込み。振り返る微笑ではあろう。ただし、からかって笑うような出来事ではない。あの瞬間が歴史なのである。おかしなほどの熱はガリバーのごとき同志社の独走をとうとう阻んだ。

日本選手権2017準決勝 サントリーvs帝京大学(松田力也)

2017年1月21日。花園ラグビー場。帝京大学は日本選手権準決勝でサントリーに敗れた。29ー54。4トライを刻む健闘だった。真紅の背番号5は姫野和樹、10番が松田力也である。

このゲームを当時のパナソニックに在籍、ワラビーズの誇ったワールドクラスのフランカー、デビッド・ポーコックが目撃している。同会場での第1試合を制して現場にいた。ターンオーバーのおそるべき名手はのちに述べた。

「日本の大学のレベルの高さが印象に残る。帝京があそこまで戦えるとは」

2年後のワールドカップで姫野と松田はベスト8へ進んだ。トップリーグでも各大学を経由した若手が続々と実力を発揮した。「狭い世界にたぎる熱」には人材を育む働きが確かにある。 

大学ラグビーが始まる。昨年同様、新型ウイルスの憎き出現により、次のシーズンはもうそこにいない学生とチームの切実がいっそう迫る。クラスター発生、社会状況の変化、なにが起きるかわからない。だから目の前の攻防を大切に感じる。どこかへ向かうのではなくいまここに完結する。それもラグビーだ。

文:藤島 大

藤島大

藤島 大

1961年生まれ。J SPORTSラグビー解説者。都立秋川高校、早稲田大学でラグビー部に所属。都立国立高校、早稲田大学でコーチも務めた。 スポーツニッポン新聞社を経て、92年に独立。第1回からラグビーのW杯をすべて取材。 著書に『熱狂のアルカディア』(文藝春秋)、『人類のためだ。』(鉄筆)、『知と熱』『序列を超えて。』『ラグビーって、いいもんだね。』(鉄筆文庫)など。 ラグビーマガジン、週刊現代などに連載。ラジオNIKKEIで毎月第一月曜に『藤島大の楕円球に見る夢』放送中。

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