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一方で、チームを運営する立場として気を配っているのが、様々な部分で制限を強いられる選手たちの精神面のサポートだ。ラグビーをできなくなる苦しみを味わったことで、選手、スタッフの感染対策への意識はより一層高まった。ただし、それによって今まで以上に負荷がかかっていることも忘れてはならないと肝に銘じる。
「たったひとりの感染がチームやリーグに影響を及ぼすという状況は、選手はもちろんその家族に対しても相当なストレスがかかることになります。選手の中には小さい子どもがいるケースも多い。そのあたりをどうケアしていくかは、今後の課題だと思います」
開幕2日前に延期が決まったのはもちろん残念だったが、ここでいったん立ち止まったのは「ラグビーの価値を守る上で大切な決断だったと思います」と石井GMは言う。世の中の状況を無視して強行したところで、人々の支持は得られない。チーム活動が地域における感染拡大につながったり、医療資源や医療従事者に負担をかけたりすることがないよう、リーグ全体でもう一度認識を共有し、結束して同じ方向へ進むことが、ラグビーの未来につながっていくと信じている。
三菱重工相模原ダイナボアーズ
「ラグビーはただでさえ1チームの人数が多い競技です。外国人選手もたくさんいて、文化も習慣も違う人間が集まっている。その中でこうした感染対策を徹底するのは本当に大変です。だからこそ、ラグビー界全体でひとつのチームになることが大事になる。今回トップリーグがこうした判断をしたことは、今後の方向性としてラグビー独自の価値を持つリーグを目指していくという部分にもつながると思います」
トップリーグの新たな開幕日は2月20日に決まった。今度こそ全チームで一斉にスタートを切り、最後まで走り抜くために、クラブ、運営側を合わせてすべての関係者がいま、懸命に準備に奔走している。
「コロナのことがどんどんわかってきて、ガイドラインやルールもかなり確立されてきました。大切なのはいかに個人の意識を高め、それをチーム、リーグ全体で共有できるか。リスクをゼロにはできない中で感染者を出さないためには、それしかありません。去年の中止からもうすぐ1年ですし、なんとかみんなで前進できるようにしたい。まさにラグビーの精神が求められていると思います」
文:直江 光信
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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