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「山中湖の夏合宿ができず、ときに(気温が)35度にもなった日吉のグラウンドできつい練習を積み重ねてきました。毎日、吐くくらいの。その厳しい条件で練習してきた自信はあります」
成果は開幕と同時には現れない。だからこそ、ここからも伸びる。
他校もまた短期の進歩は可能だ。11月1日の帝京は1カ月前の早慶とどこか似ていた。体格やパワーのもたらす縦の推進力があり、ともに伏見工業高校出身の4年、11番の尾崎泰雅と14番の木村朋也が好調で展開力にも富んでいる。均衡を保つ分、徹する迫力にやや欠けた。それは偏りのないチームをつくるに際して通る道でもある。早稲田陣の深くに侵入すれば悪くない確率でトライを奪えた。ここは実力だ。
明治の立て直しは難しくない。前へ出る慶應の防御につきあったみたいな攻撃の角度と距離の調整で多くは解決しそうだ。10番と15番をこなす4年、山沢京平はその不在により存在の大きさをあらためて対戦校とファンに教えた。切り札の負傷療養からの復帰は大切なカードとなる。
リーグ戦では東海大学と流通経済大学と日本大学が第4節までは全勝である。「公式戦を続けながらの修正力」を問われそうなのが法政大学だ。序盤で前出の3校に敗れるも、攻守は悲観するほどではない。「私たちはこれで勝負」のイメージを深くチームで共有できれば、昨年度は6位に沈んだ足踏みからの跳躍もありうる。
法政の背番号15、共同主将の根塚洸雅はいつでも、勝とうが負けようが、光を放つ。強く、うまく、リーダーらしく体を張る。芝に粘りつくようなランは執拗な突破と軽快なつなぎを両立させる。新鋭、中堅、主軸の才能は各校にひしめくが、ひとり、ここに名を挙げたくなった。凝縮のシーズンに凝視しなくては損だ。
関西大学Aリーグも11月7日にいよいよ始まる。昨年度の順位をもとに4校×2組に分かれてぶつかり、のちに順位決定戦へ進む。こちらのシーズンはさらに圧縮された。雌伏の鍛錬を信じる力や課題を強みへ導く学習能力はいっそう問われる。天理大学の単独行を阻むのはどこか。黒のジャージィに挑む者を決める戦いでもある。
藤島 大
1961年生まれ。J SPORTSラグビー解説者。都立秋川高校、早稲田大学でラグビー部に所属。都立国立高校、早稲田大学でコーチも務めた。 スポーツニッポン新聞社を経て、92年に独立。第1回からラグビーのW杯をすべて取材。 著書に『熱狂のアルカディア』(文藝春秋)、『人類のためだ。』(鉄筆)、『知と熱』『序列を超えて。』『ラグビーって、いいもんだね。』(鉄筆文庫)近著は『事実を集めて「嘘」を書く』(エクスナレッジ)など。 ラグビーマガジン、週刊現代などに連載。ラジオNIKKEIで毎月第一月曜に『藤島大の楕円球にみる夢』放送中。
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