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ラグビー コラム 2020年6月5日

【楕円球のある光景】「サクラ、咲いた」2004年日韓戦 大野均

楕円球のある光景 by 井田 新輔
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2004年5月16日、秩父宮ラグビー場での日韓戦。後半20分、大野均はルアタンギ・バツベイに代わって小雨の降るピッチに飛び出していった。
彼にとって初めてのテストマッチ、共に戦うのは元木由記雄、伊藤剛臣、そして大畑大介ら歴戦のキャップホルダーたち。
同点で迎えた終了直前にゴール前で得たラストチャンス、ボールは彼に委ねられた。
192センチの長身を折りたたむような低い姿勢で激しくゴールラインに突進する。だが韓国の必死のディフェンスに阻まれて惜しくもインゴールには届かなかった。
やがてフルタイム、引き分けに終わったこの試合はほろ苦い代表初キャップとなった。
だが彼はこの日、日本代表のメンバーとして確かな一歩を踏み出した。

30人が入り乱れて戦うラグビーでは時として狙ったプレーヤーをピッチで見つけるのが難しいことがある。 しかし中国古代の英雄伝から飛び出してきたような巨躯と風貌、ボールハンターとしていつも攻守の中心にいる彼の姿はひときわ目を引き、そして絵になった。
ラインアウトや密集で、FWの核として接点での強さと激しさを求められるポジション。そこで常に体を張って痛いプレーも厭わず黙々とチームに貢献する彼の姿は、共に戦う仲間からの信頼を一身に集めていた。
卓越したロックに与えられる称号「リアル ロック」、彼はまさにこの言葉にふさわしいラグビーマンだった。

2020年5月18日。チームメイトからもファンからも愛された「キンちゃん」は、はじめて桜のジャージに袖を通してから16年後のこの日、24年にわたる現役生活に別れを告げた。
幾度もの優勝の立役者となった東芝ブレイブルーパスで、不利な試合展開でも全力を振りしぼって戦ったサンウルブズで、そして3回のワールドカップに出場し南アフリカを倒して前人未到の98キャップを獲得した日本代表で、その長い髪をなびかせて疾走し、フィールドで躍動する彼の姿はラグビーを愛する人々の記憶の中で色褪せることはない。
お疲れ様でした。忘れ得ぬ「リアル ロック」大野均。

文/写真・井田新輔

井田 新輔

フォトグラファー。1961年東京生まれ。明治大学政経学部卒。 4年間の会社員生活を経て1989年よりスポーツフォトグラファーとして活動を開始し、現在はラグビー、プロ・アマ野球を中心に撮影を行っている。 ラグビーワールドカップは1999年ウエールズ大会より6大会連続でフルカバー。日本スポーツプレス協会(AJPS)、国際スポーツプレス協会(AIPS)会員。

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