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後半4分はふたたびHOラムのジャッカルに遭い、3点を失った日本。ついにリードは4点(16-12)に縮まったが、ここで劣勢ムードを撥ねのけたのは地元愛知(名古屋)出身のNO8姫野だった。
後半10分にNO8姫野がお返しのジャッカルを決め、キック絶好調のSO田村がPG加点に成功したのだ。19-12
「ジャッカルは自分の強み。ピンチをチャンスに変えるようなプレーなので、いいやつが決まって良かったです」(NO8姫野)
さらに後半13分にはSO田村の絶妙なキック、味方のチェイスにより敵陣ゴール前ラインアウトの絶好機。
ここで強いラインアウトモールで一気呵成にトライを決めたのはNO8姫野。「気持ち良かった」と振り返るW杯トライ(ゴール成功)を地元で決める千両役者ぶりで、26-12とリードを広げた。
しかし「キャンプでフィットネスに注力してきた」(サモア・CTBタエフ)というサモアは、終盤に粘りを見せる。日本の反則を足掛かりに、後半32分にキッカーのCTBタエフがチーム初トライ(ゴール)。26-19
ところが日本は後半突き放すというゲームプラン通り、自慢のフィットネスで猛攻を仕掛ける。
後半35分に敵陣ゴール前へ侵入すると、ここで途中出場のSH田中史朗が、ゴールを目前にしてバックスへ展開した。
「僕はフォワードでゆっくり攻めようと思っていたのですが、田村から良い声がありました」(SH田中)
SO田村の声に反応してパスアウト。ボールは右大外へ展開され、アイルランド戦に続いて途中出場したスピードスター、福岡堅樹がインゴールに走り込んだ。ゴールは失敗で31-19。
3トライの日本はあと1トライで、4トライ以上のボーナス点1を獲得できる。
プール最終戦のスコットランド戦で大きなアドバンテージになる貴重な1点を追いかけ、後半終了間際、日本は左ラインアウトモールの絶好機。ここでフォワードに続いてバックスも次々とモールに参加し、怒濤の集団攻撃でトライラインへ。
しかしここはパイルアップとなってしまい、サモアボール。
再開のスクラムで80分の終了を知らせる銅鑼が鳴った。日本は反則を犯したが、ここでサモアはタッチへ蹴り出さずにトライを狙った。
「バックスに良いプレーをするチャンスを与えたいと思いました」(サモア・NO8ラム主将)
1トライを返せばボーナス点1を獲得し、この場での予選敗退決定は避けられる。サモアは自陣からの攻撃を決めたが、再開のスクラムで途中出場のSHペレ・コウリーが、スクラムのノットストレートの反則。
攻撃権を得た日本はスクラムで猛プッシュをかけ、ペナルティ奪取。結果的にトライはならなかったが、NO8姫野のサイド攻撃から田中史朗が左へ配給。
ボールを受けたWTB松島がトライラインの先へ、劇的なチーム4トライ目!
SO田村のコンバージョンはポールに当たって内側へ落ちるおまけ付き。7点を追加して38-19となりフルタイム。
MOM(マン・オブ・ザ・マッチ)には、5回のDF突破などで91メートルを走った日本のWTBレメキロマノラヴァが輝いた。
中4日の日程で勇敢に戦ったサモアは、奮闘かなわずプール戦の敗退が決定した。
「4万人の観客のうち、3万9500人は日本のサポーターだと思うが、本当に素晴らしい観客だった。日本は勝利に値するチームだ。日本にプレッシャーを与える機会はあったが、勝利につなげられなかったのは残念だ」(サモア・ジャクソンHC)
開幕3連勝を遂げた日本のジョセフHCも、まずは対戦相手を褒め称えた。
「とても誇りに思うし、ほっとしてもいる。中4日でフィジカルなパフォーマンスをずっと最後まで示していたサモアも、誇りだと思う」
日本ラグビー史上初の開幕3連勝を果たした日本だが、悲願の8強進出はまだ決まっていない。
スコットランドが10月9日(水)のロシア戦で勝利を逃すか、12日(土)にアイルランドがサモアに敗れると決勝T進出が決定。
アイルランド戦で主力を多く温存していたロシアはスコットランドを苦しめるかもしれないが、大金星の可能性は高くはないだろう。
やはり日本の未来は、13日(日)のスコットランド戦までもつれるだろう。日本がスコットランドから勝利するか、引き分ければ悲願達成となる。
日本の指揮官はスコットランド戦へ向けて、こう意気込んだ。
「素晴らしいチャンスがあるとみている。これまで誰も成し遂げてないのでわくわくしている」
「お互いを信じ、詳細な部分を理解し、細かいところを実行していく。強いスコットランド相手にその気持ちで戦う」
文:多羅 正崇
【ハイライト】日本 vs. サモア ラグビーワールドカップ2019 プールA
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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