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準々決勝の流経大柏と常翔学園も紙一重の僅差勝負となった。前半は常翔学園が14-0でリード。しかし、流経大柏は「45分我慢して最後の15分で勝負」(相亮太監督)という言葉通り、後半17分、相手のパスをインターセプトして反撃を開始すると、この大会で大活躍だったCTB土居大吾がトライして2点差に迫り、最後はHO作田駿介が決勝トライを決め、19-14の逆転勝利をあげた。天理対桐蔭学園も、最終スコアこそ、44-29と開いたが、トライ数は5-5。パスに対して常に3人、4人と走り込んでディフェンスをかく乱する天理のフラットラインは強烈なインパクトだった。しかし、桐蔭学園には正確無比のプレースキッカー津田貫汰がいた。津田はトライ後のコンバージョンゴールをすべて決めたほか、3PGを成功させてチームを勝利に導いた。今大会のNO1キッカーだ。
振り返れば、FW、BKに偏らないバランスのとれたチームが多かった。ボール争奪戦や、パス、キックといった基礎的なスキルも向上し、コーチングのレベルアップが感じられた。基礎スキルを徹底して鍛え上げ、精度高くフィールドで表現したチームがファイナリストになったということだろう。桐蔭学園は数年前より「ライフスキル」を学んでいるという。スポーツ心理の専門家を招き、選手が主体的に考え判断し、問題を解決していく能力を伸ばすのだ。ピンチにあわてず、次に何をすべきかを考える。天理、東福岡という強力なライバルを下した試合の中でそれは生きていたはずだ。
パス、キック、ラン、タックルなど多様なテクニックを身に着け、ベースになる肉体を鍛え、状況判断能力を磨く。強いチームを作ることの難しさを痛感する。ほとんどの監督が教員であり、授業、生活指導、進路指導などと並行してラグビー部の強化にあたっている。その向上心、選手を勝たせてやりたいという熱い思いに、今大会も感心させられた。
開会式の選手宣誓は、大津緑洋(山口)の末次遥人キャプテンが立派に務めた。「ラグビーを愛し、ラグビーにおいて育てられた私たちはこの新たな聖地、花園ラグビー場において世界中の方々に感動を届けます。品位、情熱、結束、規律、尊重、ラグビー憲章に掲げられている5つの言葉を胸に刻み、この地で培われた数多くのドラマと栄光を継承しながら愛と勇気を持ってプレーします」。その言葉通りの50試合だった。来年の大会は、ラグビーワールドカップ日本大会が終わった後になる。いったいどんな景色が広がるのだろう。楽しみに待ちたい。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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