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ラグビー コラム 2018年4月9日

前傾下からつなぎ ~ラグビー用語について~

be rugby ~ラグビーであれ~ by 藤島 大
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ジャパンの元主将にしてCTB、横井章その人である。高校時代は大阪府立大手前高校のバスケットボール部、早稲田入学後、初心者として、同ラグビー部に伝わる「接近」を身につけた。浅く立ち、自分へのパスが放たれるまでは走り出さず、ボールが宙に飛ぶや、その軌道をいかしたり、さえぎったりしながらコースを変えて、マーク役を惑わせ、タックルに接近、裏をとる。高校での経験がない分、理屈をそのまま理屈として体現、バスケット出身ゆえか、防御の相手にさわられるかさわられないかスレスレのところで、もうひとつ判断できた。頭を下げるのではなく膝を折り、鍛え上げた肩を前面に身を前に倒し、両手の自由を確保、思わぬタイミングからパスを繰り出す。

あの「横井式」をオフロードとくくると、やはり印象が違う。仮称を許してもらえるなら「前傾下からつなぎ」といったところ。たくましい体格と俊敏なステップでタックルの衝撃を吸収する現在の方法とは異なり、パスを受ける前のコース取りで先手を奪い、タックルの構えより早く懐に飛び込み、ぶつかる、いや触れると同時にボールを操る。こうした正真正銘のオリジナルな技術は一般の定義、用語には収まらない。

このところよく耳にするのが「ポッド(pod)」。試合のフィールドを縦にいくつかに仮想分割して、セットプレーがほどかれると、それぞれのゾーンにあらかじめ決められた人員が散って、計画的に攻める。アスリートのナンバー8をタッチライン際に置き、働き者の前5人は中央部に残って、これも近年の用語である「コリジョン(衝突)」にせっせと励むような戦い方である。上からとらえると、一例で「1―3―3―1」というように8人のFWが並ぶ。

ポッド襲来の当初、辞書を引き、「豆などのサヤ」とあったので、なるほど狭いところに人が並んで、そんな感じだと、つい解説でそう話した。これまたありがたいことにニュージーランドのコーチングに造詣の深い知人から、やんわりと間違いだと教えられた。「あれはイルカなどの海水生物の小さな群れのことです。本場のコーチが直接話したので間違いありません」。そうか。確かに何番目かにその意味もあった。

日本国内でもポッドは広まった。トップリーグのヤマハは、このシステムを独自のものとして、FW前5人の運動量を制御、体力を浪費させず、身上であるスクラムの猛威へと結びつけた。ただし、高校や大学の戦力の限られたチームまでが採用している例を目にすると、これは強豪をやっつけるには至らないかなあ、とも、しばしば感じる。SHの体力や技術、SOの判断力が求められ、FWに数名のアスレティックな人材を得ないと貫徹は難しそうだ。

才能のリクルートのままならぬ国内の多くのチームは、きっと、イルカよりも小さな魚の研究をしたほうがよい。これまた外来のラグビー用語である「トラフィック(渋滞=防御に人のひしめく状況)」をすり抜けるのは小型車のはずである。「前傾下からつなぎ」も有効かもしれない。

藤島大

藤島 大

1961年生まれ。J SPORTSラグビー解説者。都立秋川高校、早稲田大学でラグビー部に所属。都立国立高校、早稲田大学でコーチも務めた。 スポーツニッポン新聞社を経て、92年に独立。第1回からラグビーのW杯をすべて取材。 著書に『熱狂のアルカディア』(文藝春秋)、『人類のためだ。』(鉄筆)、『知と熱』『序列を超えて。』『ラグビーって、いいもんだね。』(鉄筆文庫)など。 ラグビーマガジン、週刊現代などに連載。ラジオNIKKEIで毎月第一月曜に『藤島大の楕円球に見る夢』放送中。

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