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ウルフアロン選手
ウルフは実に、2019年12月のワールドマスターズ青島以来の実戦。この大会の直後に右膝半月板の手術を受けており、まずは五輪に向けてこの「新しい体」のフィット感を確かめるのが今回の課題。手術からは既に1年以上が経過、入念なリハビリとトレーニングを積んで準備は万全とのことだが、「五輪に向けて仕上りは85パーセント」と自信を見せる一方で、「練習と試合は違うはず」と本人の分析はドライ。ウルフ持ち前の頭脳的な柔道と豪快な一発が復活しているかどうかはもちろん、膝の手術を経て、課題の1つであった「受け」がしっかり機能するか、ここにひときわ注目して見守りたい大会だ。おそらく準決勝で戦うことになるであろう怪力選手、アルマン・アダミアン(ロシア)戦が最大の山場。膝手術後のフィット感、受け、ウルフが「増やした」と語る技の幅、全てが確認出来るであろう大一番である。
原沢は1月のワールドマスターズで久々実戦の場を踏んだが、フィットし切れず初戦で思わぬ敗退。今大会、そして続くアジア・オセアニア選手権と組んだ連戦で出直しを図る。今大会には2019年東京世界選手権で決勝を戦った世界王者ルカシュ・クルパレク(チェコ)が出場の見込み。原沢がこのシリーズのテーマに掲げる「海外選手と組み合う経験、自分の現在地の確認」にはまさにうってつけの選手。ぜひ再戦に期待したい。
向は1月のワールドマスターズでは絶不調、「気乗りしない」という風情のままあっさり早期敗退を喫している。この選手に関しては前後の文脈がない、そして見えない「まっさら」状態。昨今珍しい「勢い」や「流れ」に極端にパラメーターを振ったタイプの選手であり、五輪に向けてここでぜひ上昇機運を掴んでおきたい。
濱田は試合をこなすこと自体で調子を上げていくタイプ。本人も出来得る限り試合に出たいとの意向を強化サイドに伝えており、他選手と違って以後まだまだ大会に姿を見せる可能性も高い。ということは向とは逆に、単なる勝ち負けではない文脈、課題の消化率にフォーカスして観察するのが面白い。1月のワールドマスターズ・ドーハ決勝では宿敵マドレーヌ・マロンガを抑え込みながら逃がして苦杯。「ワンチャンス」を「たくさんの機会」に変える立ち勝負から得意の寝勝負に持ち込む移行技術の幅の広がり、そして取り切る精度の向上。ここに注目である。
文:古田 英毅(柔道サイト eJudo)
※3月30日時点のエントリー情報に基づいて作成しています
古田 英毅
「eJudo」編集長。国内の主要大会はほぼ全てを直接取材、レポートを執筆する。自身も柔道六段でインターハイ出場歴あり。2019年東京世界選手権から、全日本柔道連盟の場内解説者も務める。J SPORTSワールドツアー中継ではデータマンを担当。
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