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ピックアップ コラム 2020年2月7日

五輪代表争い佳境、日本代表は「勝たねば脱落」の背水の陣/グランドスラム・パリ2020

柔×コラム by 古田 英毅
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2020年IJFワールドツアー最初の「グランドスラム」大会、グランドスラム・パリがいよいよ8日に開幕。この様子はJSPORTSで生中継される。聖地・ベルシー体育館が立錐の余地なく大観衆で埋まり、選手の国籍に関係なく良い技、そして魅力的な攻防には大拍手を以て応える。たとえ競技に携わらずとも、圧倒的な数の人間が幼少時柔道に「関わった」経験のあるフランスという国ならではの観戦文化の厚さ。日本とはちょっと違うノリのその素晴らしい盛り上がりをぜひTV画面でご堪能頂きたい。

さて、ワールドツアー欧州シリーズきってのお祭りであるパリ大会、2020年の注目ポイントは2つのアスペクトで括られる。1つは言わずもがな、「パリの王者」という勲章を求めて大挙参戦するビッグネームたちの戦いぶり。もう1つは今年度だけの特殊事情、最終章を迎えつつある東京五輪代表争いの渦中にある、日本代表の動向である。

例年4月の全日本選抜体重別まで引っ張られる世界大会の日本代表決定であるが、今年はこの欧州シリーズの2大会、具体的には21日から行われるグランドスラム・デュッセルドルフが終わった段階で、強化委員の3分の2以上の賛成が得られた場合にはその時点で代表選手が内定する特別措置が採られている。漏れ聞こえる「選手のコンディションを考えて、少しでも早く内定を出したい」という強化側の意向を踏まえると、ここでほとんどの階級の代表が決まる可能性が極めて高い。第2候補(あるいは第2グループ)がこのパリ大会に、そして第1候補がデュッセルドルフに派遣される今年度の陣形を勘案すると、「第1候補がデュッセルフドルフ大会に優勝すればその時点で代表内定」「第2候補がパリで優勝し、続くデュッセルドルフにおける第1候補の出来が芳しくないときのみ、4月の選抜体重別まで選考延長」と考えてほぼ間違いないだろう。つまり今回のパリ代表はそもそも「自力」での代表獲得の可能性が既にかなり低く、しかも優勝できなければその時点で五輪代表の可能性が潰えるというまさに背水の陣で臨む立場にあるわけである。阿部一二三と丸山城志郎がおそらくデュッセルドルフに同時派遣される男子66kg級や、既に素根輝が代表に内定している女子78kg超級などの特殊な事情がある階級を除けば、全階級がこの状況にあると言っていい。それでも逆転を期すためには優勝するしか道のない今回のメンバーの重圧は、想像に余りある。

ワールドマスターズで絶対王者アグベニューを破り、一気に評価を上げた63kg級 の鍋倉那美


代表争いの観点から今回注目すべきは、第1候補と実績・実力が競っている選手、そして現在第1候補が調子を崩している階級の選手だ。前者には男子60kg級の永山竜樹、後者には女子57kg級の玉置桃が挙げられるが、わけても注目しておきたいのは女子63kg級の鍋倉那美だ。

理由は、12月のワールドマスターズにおいてこの階級の絶対王者クラリス・アグベニュー(フランス)を倒したこと、そして第1候補の田代未来が過去1勝10敗とアグベニューを極端に苦手にしていること、そしてこのパリ大会に、まさにそのアグベニューが参戦することだ。現状国際大会の実績は田代が圧倒的。東京五輪に出れば少なくとも銀メダルまでは確実という情勢にあるが、日本の強化があくまで金メダルを狙うというのであれば、アグベニューに続けて勝つ選手が現れた場合選考に与える影響は決して小さくはないだろう。鍋倉がアグベニューを倒したのは担ぎ技、まぐれ当たりではなく十分再現性のある方法論に則った一撃であった。鍋倉にとっても、日本代表にとっても運命の分かれ道になる大会だ。

男子は前述の永山に、いまだ混戦が続く90kg級の長澤憲大と村尾三四郎の出来が選考を揺らす要素としては最大。代表争いという観点では厳しい立場にあるが、昨秋以降の素晴らしいパフォーマンスから100kg級羽賀龍之介の試合ぶりにも大いに期待したい。
2013年大会以来の地元・パリお目見えとなる絶対王者テディ・リネール


海外勢は前述の通りまことに充実。ここでは字数の都合もあり、男子100kg超級の絶対王者テディ・リネールや女子48kg級の世界選手権2連覇者ダリア・ビロディド(ウクライナ)の現代柔道のアイコンが揃って参戦、出口クリスタ(カナダ)やジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)ら昨年の世界王者が実に8人エントリーしていると述べるにとどめる。2018年シーズンを完全休養、昨夏から復帰したリネールは五輪に向けた4年スパンの調整のいよいよ仕上げ。2013年大会以来の地元・パリお目見得である。

※2月7日時点のエントリー情報で作成しています

文責:古田英毅(eJudo編集長)

古田 英毅

「eJudo」編集長。国内の主要大会はほぼ全てを直接取材、レポートを執筆する。自身も柔道六段でインターハイ出場歴あり。2019年東京世界選手権から、全日本柔道連盟の場内解説者も務める。J SPORTSワールドツアー中継ではデータマンを担当。

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