弥栄を祈るよ、親分

日本レースプロモーション、Honda、TOYOTA を中心に発足した、『SUPER FORMULA NEXT 50』

おお、F興行の親分さん。

これは、これは、御隠居。お元気で？

まあ、息災だけが取り柄と、家のヤマノカミに言われているワシじゃからの。ところで親分さん、新しい出し物をするそうじゃないか。

これは、さすが御隠居。お耳が早い。つい先程、瓦版屋を集めてお知らせしたばかりで。
私どもの人力車大会もこのところお若い層の客のお集まりが以前のように多くなくなってしまっていましてね。頭が痛てーんです。御隠居、ご存知ですか？今の世は、下足札くらいの大きさのエレキテルで遠くの御人と話したり、遊び事ができたり、買い物だってできる。そして瓦版屋より早くいろいろなことが伝えられるです。

親分さん、そんなの存じておる。スマホという道具じゃ。ワシは朝起きると、今日の天気はどうか、隠居仲間から文が入って来てないか札に指を突いておるよ。ピピピじゃ。
そうそう、それ。さすが、御隠居。それを使って、俥夫の素性や大会中の位置や速さや各人力車屋の旦那たちとどんなツナギ（連絡）をしているかをわかるようにしようとういう算段なんです。題して「俥夫一番」、どうです？

親分、それは面白そうじゃの。隠居連中の噂では、親分さんをシイキ（贔屓）にしてくれている大店の三河屋さんが後押しして、青山屋さんと手を組んだそうじゃな。互いに同じ商い、人力車造りで凌ぎを削っていたが、これからの世は手を携えてゆこうということのようじゃな。

難しいことは、とんとわからないんですがね、人力車造りの商いだって、このままだと夏がすごく暑くなってしまったりするらしいです。江戸前の魚だって取れなくなったり、大風がいっぱい吹いたりするらしいんです。そこで手前共の大会で＜試し＞をしたりしながら、客人にもっと楽しんでもらうという塩梅です。

大店だと賢い番頭さん、手代も多くいることだろうに。知恵をたくさん貸してくれたじゃろう。

ヘイ、そうです。

そしてだ、お知らせの会に知恵袋ともいうべき知恵者の社中の名があったそうじゃないか。

おろおろ、御隠居には何も隠し事はできねえ。ヘイ、D社中にも入ってもらいやして、これからの人力車の大会をもっと繁盛させたいと存じます。細けーことは、大晦日が明けてからお知らせしやす。

親分、俥夫の人気が出て大会も繁盛すれば結構、結構。じゃがな、親分もっと重要なのは人力車屋さん自体が儲かるようなこととならなくては、人力車大会もお先は見えないな。ああ、親分さん足を止めてしまってもうし訳なかった。弥栄を祈るよ。

文：高橋 二朗