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シチュエーションは違えど、まるで2019年の最終戦もてぎで関口雄飛を攻略した時のような“アグレッシブさ”があった。あの時と共通して山下の中にあったのが「絶対に負けないんだ!」という強い気持ちだ。
「絶対に抜かれて帰ってくるわけにはいかないなと思っていました。(バトルで)少し飛び込みすぎたり、締めてしまう部分があるなど、強引なところがあったのは申し訳なかったなと思いますが……勝てて良かったです」
坪井とのバトルに競り勝ち、国内トップカテゴリーでは2019年のスーパーフォーミュラ第6戦岡山以来の勝利を飾った山下。パルクフェルメでマシンを降りると満面の笑みでガッツポーズを見せていたのが、何より印象的だった。
山下健太(No.14 ENEOS X PRIME GR Supra)
2019年にSUPER GTで王座を獲得した山下は、昨年は世界耐久選手権(WEC)のLMP2クラスからエントリーするなど、世界の舞台に挑戦した。しかし、コロナ禍でスケジュールが大幅に崩れてしまい、“絶対にチャンピオンを獲る”と意気込んで臨んだスーパーフォーミュラでも、欠場を余儀なくされるなど、影響が出てしまった。昨年途中から苦戦を強いられ、このSUPER GT開幕戦の前週に行われたスーパーフォーミュラの開幕戦富士では、予選最後尾。パドックであっても、いつもの笑顔が見られないどころか、今までのような速さを見せられないことに対する苛立ちから、少し自暴自棄になっている姿も見られた。
“スーパーフォーミュラでうまくいっていない分、SUPER GTでは絶対に勝つ!”
その強い思いが、坪井とのバトルで競り勝てた大きな要因なのかもしれない。
「スーパーフォーミュラで結果が出ていなくて、この前の開幕戦富士でも大嶋先輩と2人で最後列からのスタートでテールエンダーになっていました(苦笑)正直ずっとイライラしていたので……(SUPER GTでの勝利で)鬱憤を晴らせたというか、スッキリしました」
2019年の関口とのバトルの時もそうだったが、普段は穏やかな雰囲気でパドックを歩いていることが多い山下だが、いざレーシングカーに乗ると、誰よりも速く走らないと気が済まない“超負けず嫌い”のキャラクターであるということを、この岡山大会で改めて感じた。
自身2度目となるSUPER GTチャンピオンに向けて幸先の良いスタートを切った山下。第2戦富士ではサクセスウェイト40kgを背負うことになるが「(サクセスウェイトの影響で)厳しくなると思いますが、その中でもしぶとく戦って、できる限りポイントを獲っていくのがチャンピオンに向けて必要なことだと思っています。もう1度優勝するくらいの勢いで行きたいです」と、早くも次の勝利に飢えている様子だった。
文:吉田 知弘
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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