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モーター スポーツ コラム 2020年11月20日

2020SUPER GT第7戦レビュー|不安に襲われ続けた40周……ARTA NSX-GT独走劇の裏にあった福住仁嶺の“孤独との戦い”

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
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しかし、不安に押し潰されそうになりながらも、福住は目の前のコーナーひとつひとつを確実に攻略し、GT300との混走にも慎重に対応していくことを徹底。途切れそうになる集中力と保とうとコックピットの中でひとり格闘した。

「とにかく目の前のことに集中しました。例えばGT300の車両をしっかり、確実に、安全に抜くということ徹底しましたし、なるべく縁石に乗り過ぎないとか、無難にレースをすれば優勝できる状況だったので、ちゃんとそういうのも考えて走りました」

1周、また1周……。襲いくる不安と闘いながら周回を重ねていき、ついにトップチェッカーを受けた福住。それまで張り詰めていた緊張感から解放された瞬間、彼の目から大粒の涙がこぼれ始めた。

待望の今シーズン初優勝を飾ったARTA NSX-GT。

「チェッカーを受けた時は……とにかく“嬉しい”という気持ちと“安心した”という気持ちが重なりましたね」

「今シーズンはタイミングの面も含めて色々と報われない部分があったんですけど、それがやっと全部うまくいって勝てたと思った時に、あんまりレースで滅多に泣いたことはないんですけど……。素直に嬉しかったですね」

「長いと言われると(周回数や時間でみれば)あまり長くないかもしれないですけど、1周1周の中で色々なことを考える時間が多くて、僕にとっては今までの中で一番長く感じたレースだったかもしれません」

普段、取材の時は丁寧に言葉を選んでコメントしてくれる福住だが、ここ最近は取材でのコメントを言い終わると「あぁ悔しいー!」と本音を吐露することも少なくなかった。それだけ、今シーズンは勝てない悔しさが大きく積み重なり、それがシーズン中盤以降はプレッシャーとなって彼の肩に伸し掛かっていたことは間違いないだろう。それでも福住は目の前のことから逃げることなく毎回果敢に挑み続け、ついにトップカテゴリー初優勝を手にした。口で言うのは簡単だが……まさに苦労が報われた瞬間だった。

今までのレースキャリアで滅多に涙を見せることがなかった福住だが、今回は珍しく涙が止まらないといった様子が何より印象的だった。おそらく、今まで彼が背負ってきたプレッシャーや、辛かった思い出を、洗い流してくれる涙だったのかもしれない。

ホンダにとってホームコース、しかも八郷社長(右)の御前試合。圧勝に八郷社長も終始笑顔だった。

今回も有観客での開催となり、スタート前には航空自衛隊のF-2戦闘機の歓迎フライトもあるなど、徐々にではあるが普段のSUPER GTの雰囲気を取り戻しつつあるレースウィークとなったのだが、レース後には福住の涙に、サーキット全体が大きな感動に包まれた。

文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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