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スーパーフォーミュラ第3戦で優勝を果たしたニック・キャシディ(右)と舘信秀監督(左)
10月17日~18日にスポーツランドSUGOで開催された2020全日本スーパーフォーミュラ選手権の第3戦。今回も新型コロナウイルス感染防止対策の一環として、予選・決勝とも同日に開催された。土曜日はあいにくの雨模様となったが日曜日は晴天に恵まれ、スタンドには今季のレースを楽しみにしていたファンが多数集まった。
そんな中、予選で大きな注目を集めたのが、セルジオ・セッテ・カマラ(Buzz Racing with B-Max)のデビュー戦ポールポジションだ。
本来なら開幕戦から参戦予定だったが、新型コロナウイルスに伴う外国人の入国規制の影響で開幕戦もてぎ、第2戦岡山とも欠場を余儀なくされていた。10月1日に政府の規制が緩和されたことで、ついに来日が叶った。しかし、セッテ・カマラ自身は3月の富士公式テスト以来、スーパーフォーミュラのマシンに乗っていない。さらに、舞台も初体験となるスポーツランドSUGOということで、苦戦を強いられるかと思われていた。
ところが、いざ予選が始まると、アタックするごとにタイムを伸ばしていき、最終のQ3では1分04秒235をマーク。平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)の開幕3連続ポールポジションを阻止した。決勝は残念ながらクラッシュでリタイアとなってしまったが、次戦以降の彼の活躍からは目が離せない。
予選で驚愕の走りをみせたセルジオ・セッテ・カマラ。
その決勝レースで強さをみせたのが、昨年のシリーズチャンピオンであるニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)だ。レース序盤は4番手につけ虎視眈々と前の集団についていく走りをみせていたが、セッテ・カマラのアクシデントでセーフティカーが入ったところで、トップの平川、2番手の山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)と同じタイミングでピットストップを完了したキャシディ。27周目にレースが再開されると、一気に“攻め”に転じた。
まずは山本に照準を定め、28周目の1コーナーでオーバーテイクを決めると、すぐさま平川の背後につけて、30周目の1コーナーで逆転を果たした。そこからは平川をはじめ後続を全く寄せ付けない走りを披露し、約4秒のリードを築いて今季初優勝を飾った。
レース後半、OTS(オーバーテイクシステム)の使いどころが見事だったキャシディ。
レース後の記者会見で、後半の速さについて質問されると「前半スティントより速く走ることを心がけただけだよ」と笑顔で答えたキャシディ。だが、シリーズ屈指のトップドライバー2人を攻略するということもあり、ここぞとばかりに集中力を高めて、攻め続けたという。
「今週末はタイヤのウォームアップに時間がかかっていたんだけど、なぜか2セット目に履いたタイヤの方が調子良くて、攻めることができたんだ。特にSPコーナーではライバルに近づいて、最終コーナーも背後につけたまま駆け上がっていった。リスクもあったけど、それをやり切ったことが報われて、こういう結果になった。本当に最高に嬉しいし、力強いレースができた」
振り返ってみると、ここSUGOでは“強さ”をみせたドライバーが優勝しているケースが多い。2016年の関口雄飛がセーフティカー導入のタイミングが悪く、ピットストップのタイミングを逸した時も、1周あたり1秒以上のペースで後続を引き離して、差がつきにくいSUGOで、自身のピットストップタイムを稼いでみせた。昨年の山本尚貴もポールポジションから、とにかく逃げを打って勝利につなげるという走りもそうだ。今回のキャシディは4番グリッドから追い上げるレースとなったのだが、過去ふたつと同じように、やはり“強い者がSUGOを制する”ということを、改めて感じさせられる1戦だった。
これで、ポイントランキング2位に浮上したキャシディ。首位の平川とは15ポイントの差があるが、ここから2年連続チャンピオン獲得に向けて、反撃が始まりそうだ。
文:吉田 知弘
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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