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モーター スポーツ コラム 2020年7月8日

コロナ、セパン、SUPER GT

今日も今日とてプッシュ&ルーズ by 高橋 二朗
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セパンインターナショナルサーキットのメディアセンターは、キンキンに冷えていた。放送スタッフの控え室は、エアコンの温度を上げていたけれど、メディアセンターのホームストレッチに面した厚い窓ガラスの外側が結露するほど冷えていたので、そこに入る時には薄いダウンジャケットかセーターを羽織った。広い部屋にデスクが整然と並び、縦に通路がある。まだメディアセンターは混んでいなかった。その時、背が高く、柔和な表情の品の良さそうな老人とすれ違った。老人だが背筋がピンと伸びていて、軽装だったけれどダンディー。老人は、部屋を抜けて、コントロールタワーのある建物へ歩いて行った。

デスク机に着き、仕事を始めると、さっきすれ違った老人はどこかで会ったような気がしてならない。しかし、マレー系の人に知り合いは居ないし、ましてや高齢のマレー人となると・・・。その日、ホテルに帰って部屋にあった現地の雑誌をめくっていると昼間に会った老人が満面の笑みで誌面に載っていたではないか。なんと、その人はマレーシアの建国に父、マハティール・ビン・モハマド前首相ではないか!1981年から2003年まで首相を務め、イギリスの統治以後、マレーシアの近代化に務め、そして、2018年から2020年の3月まで再び首相だった。現在95歳という高齢だ。すれ違った時は氏が首相を退任していた2010年頃だろうか。2000年からSUPER GTは、マレーシアのセパンサーキットでシリーズの一戦が開催されていた。そして、このサーキットの開設にはマハティール氏が近代化へのアイデアとしてF1GPを招致するために建設したサーキット。首相の任を解かれても、経営に関わっていた、だからメディアセンターを闊歩していても不思議はない。

今朝、新聞で氏のインタビュー記事が掲載されていた。医師でもある氏が新型コロナウイルスに対して、世界的な感染拡大防止についてグローバルにとらえた意見を述べていた。 思い出せば、2013年まで連続して開催されていたセパンラウンドは、アジアで感染が拡大していたSARSによって2003年の開催が一度見送られている。今年久しぶりにセパンラウンドが行われる予定だったけれど、新型コロナのパンデミックによって再び開催が見送られてしまった。欧米に比較してアジアでウイルスの感染が抑えられているのは、外出の自粛を守り、家に留まって我慢したことが大きいと。ウイルスは、武器では収束させることはできないとも。

2013年以来の開催で楽しみにしていた方も多かったセパンラウンド。2013年大会の優勝はカルソニックIMPUL GT-Rの松田 次生、J.P・デ・オリベイラ組だった。

自国の近代化の一部手本としたのが日本。親日家の氏が現在の日本はアメリカのコピーのようになって行きそうだと苦言を呈していた。再びセパンで日本のレースシリーズの一戦が開催されるために、今はウイルスの感染拡大を予防するには、何が必要なのかを再度考えるべきだとマハティール氏に教えられた。そして、来週末にはSUPER GTがいよいよ開幕する。

文:高橋 二朗

高橋 二朗

高橋 二朗

日本モータースポーツ記者会。 Autosport誌(英)日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1983年からルマン24時間レースを取材。1989年にはインディー500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。J SPORTSで放送のSUPER GTのピットレポーターおよび、GTトークバラエティ「GTV」のメインMCをつとめる。

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