PF先生&としまえん

ショック！
としまえんが閉園するのですね。
遊園地、思い出があります。彼女と遊びに行ったなどという甘っちょろい思い出ではありません。
ひとつは、苦しい修行のような思い出。浪人時代に同園の【おとぎの森】というアトラクションを作るアルバイトをしていました。素人でも作業の進みが遅くて、期限までに間に合わないとわかる状況で、終盤の3日間くらい徹夜の連続でした。仮眠をとったのは、赤ずきんちゃんの部屋の狼が寝ていたベッドを拝借したな・・・。そして最終日に床のペンキを塗りながら夢の中に滑り込んで塗らなくて良いところを塗ってしまい、怒られた。

ふたつ目の思い出は、モータースポーツに関わるものです。自動車総合誌のCAR GRAPHIC（CG）がイベントを同園で行った＜CG Day＞だったと思います。

ご存知のとおり、としまえんのオーナーさんは西武グループです。堤家の中に自動車好きの方がいらして、場所を貸してくれたとのこと。波のプールの横のアイスリンク？体育館？でイベントを行った、と記憶しています。そのイベントになんと故ポール・フレールさんが参加してくれたのです。ボクは、PF先生の通訳。CGの創始者故小林彰太郎さんとPF先生のトークショーへ一緒に登壇してお仕事したわけです。PF先生については、ネットで検索して見てくださいね。すごい方なのですよ。

PF先生は、とても紳士です。男からもカッコ良いと思わせる方です。とても穏やかで、おくゆかしい。若き頃にレーシングカーをぶっ飛ばしていたのは本当かなと感じさせます。

その日は、雪がチラつく寒い日でした。
家人が一緒に行くというので二人してとしまえんへ。そして、ちょうどいただき物のG社のチョコレートがあったのでそれを持参。トークショーの前に控え室で簡単な打ち合わせ。その際にチョコレートを机の上に出した。気がつくとPF先生の視線はチョコレートから1ミリも動かない。小林さんが「タカハシ君、PF氏はね、この人はねチョコレートがあれば生きていられるという人なのだよ」と言われ、お勧めしていなかったことを謝り、PF先生の前に・・・。表情が緩んだとたんパクパク。あっという間に残り一つ。「最後のひとつもどうぞ」と差し出すとニコリと笑顔。

イベントを無事に終えての帰途。家人が「あのおじいさんは、走っていたの？お洒落で可愛かったね。チョコレートを食べている時は子供みたいだった」と。知らぬは仏というか、知らないということは、怖い。PF先生ご本人の前でこのコメントが出なかったのは幸いだった。

としまえんの閉園。また一つ思い出の場所が無くなる。

文：高橋 二朗