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モーター スポーツ コラム 2019年11月29日

中嶋大祐が現役引退、苦労人がラストランで手にした“最後のご褒美

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
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普段は確実な走りに徹することが多い大祐が、ここまでアグレッシブになることは滅多にない。まるでコックピットの中から“大祐の心の叫び”が聞こえてくるような、鬼気迫る走りだった。しかし、その最終ラップでのバトルでポジションを落とす結果となり、最後のレースは6位でフィニッシュした。

「終盤に向けてタイヤをセーブしていたんですが、セーフティカーが多く入ってしまって、せっかく温存しておいたタイヤのおいしいところを使わないまま終わってしまいました。自分らしい終わり方でしたが、今はスッキリした気持ちです。悔いはありません」と、レース後にコメントする大祐をみると、何か肩の上に乗っていたプレッシャーみたいなものから解放されたような穏やかな表情をしていた。

こうして彼のラストランは幕を閉じたのだが、改めて全体を振り返ると“ある偶然”があることに気がついた。

彼の性格を考えると、シーズンが完全に終了する前に自ら引退するとはなかなか言わないだろう。そういう意味では、レース2予選での予選トップタイム後のインタビューというのは絶好の機会だった。しかしその予選も金曜日のクラッシュの影響で、一歩間違えば出走すら叶わなかった。さらに言うと今年初めて開催された特別交流戦という舞台そのものがなければ、彼が引退を発表する“最初の機会”すら生まれなかったかもしれない。

全て結果論ではあるのだが、ここまで揃うのは単なる“奇跡”なのか、それとも何かの“運命”なのかーー。

この週末での出来事を振り返った時、大祐はこんなことをつぶやいた。

「一生懸命やっていれば……いいこともあるんだなと思いました」

レースキャリア全体を振り返ると、父や兄と比べて脚光を浴びる機会が少なかった大祐。しかし今回のレース2決勝は間違いなく大きな注目を集め、主役のひとりとなっていた。まるでどこかの誰かが、人知れず努力と鍛錬を積み重ねてきた彼に『最後のご褒美』を与えたような……そんな週末、特にレース2決勝だったように感じた。

よく“努力や苦労は必ず報われる”という言葉があるが、大祐にとってはラストランがまさにそうだったのかもしれない。


これからはモータースポーツから離れ、新しい分野でチャレンジをしていくという大祐。彼にとって、次のステージが幸多きものでありますように……



“ありがとう、中嶋大祐”



文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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