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モーター スポーツ コラム 2019年11月1日

2019スーパーフォーミュラ最終戦レビュー:頂点をかけて勝負した者にしか解らない“想い”

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
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「ゴールした後のウイニングランはずっとコックピットの中で泣いていた。こんなことは自分は今までなくて……だけど今日はずっと涙が止まらず、無線でも訳のわからないことを喋っていた気がする。正直、今の気持ちをどう言葉に表して良いか分からない。それだけ、特別な瞬間だ」(キャシディ)

一方、敗れた山本もまた、別の涙を流していた。

「今回は本当に完敗でした。クルマを降りて、すぐにニックのところに行こうと思ったんですけど、エンジニアの杉崎さんがピットウォールのところにいて……涙を流して『速いクルマを作れなくて申し訳なかった』と逆に謝られてしまいました」

「本当は自分の力が足りなかったし、及ばなかったので、僕がみんなに対して『申し訳ない』と謝ろうと思っていました。だけど、村岡さんもそうだし、メカニックのみんなにゴメン』という言葉を先に言われてしまったのが辛かった。負けたことよりも、(チームのみんなを)そういう思いにさせてしまったことが、ドライバーとして申し訳なかったです……」(山本)

それぞれの想いが交錯した鈴鹿のパルクフェルメ。だが、最後は昨年と全く同じく“ライバルの健闘を讃え合う姿”がみられた。

山本は悔し涙を堪えキャシディのもとへ握手を求めに行った。するとキャシディも公式映像のインタビュー中にもかかわらず、それを中断し山本とがっちり握手をした。

奇しくも昨年はお互い“勝つ立場”と“負ける立場”の逆を経験した。だからこそ、それぞれ今どんな想いでいるのか……。その時ふたりが交わした言葉は僅かだったが、逆に何も言わなくても想いは理解しているようだった。

「僕たちは今年チームを移籍して、これまでとは違うシチュエーションでシーズンをスタートしたけど、こうして昨年同様に最終戦でもふたりで全力を出し尽くす戦いを見せられたことは、本当に良かったと思う。来年のプランはまだ決まっていないけど、もしまたチャンスがあれば、また彼とチャンピオンシップをかけた争いができれば嬉しい。尚貴は僕にとって最高のライバルだ」(キャシディ)

「昨年のニックは間違いなく悔しかったし嫌な想いしかなかったと思います。それでも、しっかり僕に握手を求めて健闘を讃えあってくれた姿は尊敬すべきものでした。それを今度は逆に僕がしないといけない番だと思いました」

「ニックがいてくれたからこそ、僕も限界を攻めることができたし、自分のパフォーマンスをさらに高められるし、最後はこうしてタイトルをかけて争う緊迫感を味わっている者にしか分からない……心境というものがありましたね」(山本)

“因縁の憎くき相手”ではなく、“心から尊敬できるライバル”

今シーズンもスーパーフォーミュラを盛り上げてくれたライバルが最後までフェアに戦い、勝敗に関わらず健闘を讃え合った姿に、グランドスタンドはこの週末一番の拍手に包まれた。きっと昨年の最終戦とセットになって、今回の1戦も多くの人によって語り継がれていくことになるだろう。

現在のスーパーフォーミュラは世界から注目されるレベルの高いシリーズと言われているが、それ以上に“お互いを尊敬し、最後までフェアに戦う姿”という感動的なシーンが見られるのも、このシリーズのもうひとつの魅力なのかもしれないーー。

文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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