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実際、コース上でLMP1ノンハイブリッドの車両と一緒に走る機会があった中嶋一貴や小林可夢偉は「コーナーもストレートも、ノンハイブリッドの方が速い。僕らにアドバンテージがあるのは、加速だけです」とコメント。加速に優位性があるトヨタではあるが、ストレートエンドではフューエルカットが入ってスピードが大きく落ちるため、そこもノンハイブリッド勢が有利になるのだと言う。あとは燃費の部分のアドバンテージ。LMP1ノンハイブリッドの1スティントは10周、トヨタは1周多い11周になると見られており、24時間何事もなく走った場合、トヨタの方がピットストップは4~5回ほど少ない計算になる。 しかし、ル・マンで“何事もなく”などということは絶対にない。思わぬアクシデントやセーフティーカーピリオド、天候の急変など、瞬時の判断を迫られる場面が多々現れる。それがル・マンだ。予想外のハプニングに、いかに正しく対応できるか。それが勝敗を分ける鍵となるだろう。LMP1ノンハイブリッド勢には、耐久レースを知り尽くしているオレカがオペレーションするレベリオン、耐久経験はそれほど豊富ではないもののプロのレース集団であるARTがオペレーションするSMPレーシングと、強敵が居並んでいる。下馬評では“トヨタ楽勝”というムードだったが、どうやら楽勝という状況ではない。
テストデー午後のセッションでは、トヨタ7号車に乗るホセ・マリア・ロペスがフロントのボディワークにダメージを負ってスローダウンしながらピットに戻るという場面も見られた。これはロペスが縁石を跨いだ結果起こったことだと思われるが、例えばそういう小さなミスの積み重ねが致命傷となる。悲願の初優勝を果たそうと思ったら、トヨタはドライバーたちがミスしないだけでなく、トラブルを起こさず、他車のミスやアクシデントに巻き込まれることもなく、判断ミスもなく、24時間を走り切らなければならない。つまりかなり“綱渡り”のレースを強いられることになる。“唯一のワークスだし勝って当然”と思われているトヨタには、今まで以上の重圧があるはずだ。その重圧に耐えられるかどうか、そこが今年のレースではひとつの焦点となるだろう。
(著者:貝島 由美子)
J SPORTS 編集部
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