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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
【Pre-match Words 松本山雅FC・反町康治監督編】
(2015年4月24日掲載)
Q、今は海外サッカーをどのくらいの頻度でご覧になっていますか?
A、気付いた時にパッと見るのが多いけど、この試合を見ようというのは今はあまりないかな。見ていて凄く参考になるとか、どこのチームが気になるというのはあまりないよ。シーズンが始まる前に凄く色々な試合を見て資料集めをするので、例えば3バックにしたバレンシアの試合とかは見たりしますけどね。まあ、レヴァークーゼンは監督がロジャー・シュミットになったので、どんな感じかなと思ったけど、思ったほどじゃなかったなというのが正直な感想だけども。
Q、UCLは見ていますか?
A、ノックアウトラウンドになると一応はほとんど見ていますね。この間は相手が山形だったので、移動のバスの中で見たりとかしているし。
Q、ポルト×バイエルンは山雅にも何かヒントを与えるような試合じゃなかったかなと思いますが、ご覧になりましたか?
A、前半だけ見た。ただ、バイエルンがちょっと"殿様サッカー"になっちゃった感じはあったね。だから、あのゲームだけでポルトが凄く良いという風には言えないかなと。本当に真価を問われるのはアリアンツ・アレナでやる試合でしょう。それは楽しみだね。前の選手がプレスを掛けられるというのは彼らの能力だけじゃなくて、プッシュアップできるボランチとか後ろの選手との連動性が必要な訳であって、そういう後押しがあるから2度追い、3度追いで行ける訳だ。だから、前線の選手だけが良い訳じゃなくて、パスを出す所がないから判断の時間が遅くなって、GKが1つ余計に持ってしまうとか、DFが切り返して持ってしまうとかなる訳だから。あとは戦術的な部分で、例えばダンチがこっちの足は蹴れないとか、こっちに持っていく所を狙えとか、相手のビルドアップを遮断するという意味では当然ながらそういうのをやっていると思うんだよね。そういうのがうまくハマッたというのはあると思うよ。
Q、海外サッカーのエッセンスをチームに落とし込むということは、昔に比べてあまりしていないですか?
A、例えば昨シーズンのバイエルンのように、サイドバックを真ん中に入れてやろうなんて思ったってできないからね。自分たちの持っている選手の質とか、それを見て参考にすることはあるかもしれないけど、「これをやろう」と思ってやるのが、一番蟻地獄に入る指導者のパターンだと思うんだよね。だから、J2で初めて監督をやる人もみんな理想を持ってくるんだけども、みんなその理想に入り込んでしまって、1年や2年で現場を去っていく人が多いんだよ。これは難しい所であって、戦力を見て「こういう風なやり方がベストウェイだな」と思って、それに見合うような参考資料に「海外サッカーを使おう」というのが一番良い訳だ。そのためにはそういう試合をたくさん見ていなければいけないんだけど(笑) 合致させるためにはね。その準備の段階でこういう試合をしたいからってDVDをたくさん持ってきて、選手に見せた所で彼らは何とも思わないかもしれないし。そこが一番難しい所だ。参考にできるシーンがあれば、どのチームの試合でもそれを使えばいいんだよ。ある意味選手は"魔術"のように捉えるかもしれないけど、あるチームがいつも同じようなことをやっていても「それはダメだな」じゃなくて、良い所のエッセンスを全て抜き出せばいい訳だから。そっちの方がもしかしたら良いかもしれないよね。例えばザルツブルクも、昨シーズンのELで当たったアヤックスとの2戦目だってボールが一山越した所のディフェンスは緩いよ。1戦目ではうまくやったかもしれないけど、2戦目でやられているということはアヤックスだって考えている訳だ。その時にどういう対処ができるかというのをちゃんと持っているかどうかが大事だからね。映像の編集上はそれだけやっていても全然問題ないと思うけど。
Q、ここからは監督についてのお話を伺わせて下さい。反町監督が新潟の監督に就任したのは35歳の時だと思います。それを考えると、最近のJリーグの監督は初めて指揮を執る人でも総じて年齢が高い気がするのですが、それについてはどうお考えですか?
A、我々の時とバックグラウンドが違うのはJ2にも降格があるということだ。そうするとやっぱり採用する側としては経験値というのを非常に大事にするからね。それだけだと思うよ。だから、今のJ3に若い監督がそこそこいるというのは、"J4"やJFLに落ちるということがないからじゃないかな。だから、J2のチームで初めて監督をやるというのは群馬の服部(浩紀)監督なんかはそうだけど、あまり多くないよね。
Q、私が初めて反町監督を見た時は、画面からも明らかに"ギラギラ感"が漂ってきていましたが(笑)、そういうものを最近の指導者からは感じないなあと思うような部分はありますか?
A、どうだろうな。俺がその時にギラギラ感があったかどうかはわからないけどもさ。でも、そう言われてみると「コイツ何だよ」っていう指導者は少ないよね。もうちょっと出てきて欲しいけどね。例えばスペインでもイタリアでも、雑誌を読めば監督のインタビューがいっぱい出ているけど、そこでも「信念を持ってやっている」みたいな監督はなかなか出てこないよね。ラージョのパコなんかは、たくさん失点はするけどしっかりと勝つ試合では勝ち星を挙げて、大量得点で勝ったりしている訳で、昨年はリーガでも一番評価されていて、今年で辞めるって言っているから他のチームに行く訳でしょ。イタリアでは4,5人ぐらい中堅のチームでそんなに選手としては有名ではない監督がやって、有名な(ジャンフランコ・)ゾラはすぐクビになっちゃったりとかね。(土屋:ゼーマンが戻ってきましたけどね)。ゼーマンの練習はフォッジャをやっている時に本当は見に行きたいと思っていたんだけどな。3ヶ月くらい見に行かないとダメだけどね。でも、ゼーマンが「みんな俺を攻撃的な監督だって言っているかもしれないけど、守備のことも凄くやっている」と話しているインタビューを読んで、「それは当たり前だな」と思ったよ。でも、「じゃああの守備は何なの」って(笑) 「全部ラインで逃げるディフェンスだけはやめてくれ」って思うんだけど(笑)、キックオフでセンターラインに8人並んだのとか今でもちゃんとビデオでストックしてあるよ。「これは!」って。
Q、変わったことをやろうという気概はありましたよね。
A、メッセージはあるね。でも、そういうことをやろうとする日本人の監督はなかなかいないよ。
Q、例えば記者会見でも反町監督はあえてメディアに話題を提供するようなことをおっしゃって下さいますが(笑)、そういうパフォーマンスの部分も含めて、日本人の監督に「こうなっていって欲しいな」というようなものはありますか?
A、難しい質問だけど基本的に監督は目立っちゃいけないんだよ。縁の下の力持ちなんだから。そういう縁の下の力持ちのような部分で目立つのなら良い訳で。やっぱり選手の方が目立つような配慮をしなくてはいけない訳だ。例えばモウリーニョなんかはどちらかと言うと、それをうまく利用しながらやっているよね。でも、やることはしっかりやっている監督だと思う。だから、パフォーマーとしてはやっぱりファン・ハールが一番良いのかもしれないけど。自分が自分がというのが強いよ。俺がバルセロナに住んでいた時に監督をやっていたから良く知っているけど。俺がああいう風になるのはちょっと厳しいだろうなあ。そんなに我が強い訳ではないから。
Q、そうですか?
A、そう。端から見ると我が強いように見えるかもしれないけど、凄くシャイだし、あまり前に出て云々というようなことはするタイプじゃないよ。と、自分では思っているけどね。だから、メディア向けのコメントではそういうことを言っているのかもしれないし。でも、確かに面白い監督は少ないかもな。「練習を見に行きたいな」と感じるような監督は。例えば監督というのは、気持ちはわかるけど理想郷に足を踏み入れ過ぎてしまって、結局本質を捉えないで、人のマネジメントとかができなくなることが多いんだよ。理想を追い求めてやるんだったら、それなりのマネジメントが必要だから。そこまでできる人はそんなに多くないよね。理想を追ってそこそこできるのは知っているけど、それだけじゃ監督は務まらないんだよ。
【プロフィール】
現役時代は全日空、横浜F、平塚(現・湘南)でプレー。指導者しては北京五輪日本代表監督も経験し、新潟、湘南、松本と3つの異なるクラブをJ1昇格へ導いている。
※所属チームを含めた情報は、当時のものをそのまま掲載しています。
ご了承ください。
取材、文:土屋雅史
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