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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
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東京都クラブユースU-17サッカー選手権大会決勝ラウンド 三菱養和SCユース×Raiz Chofu FC U-18@養和巣鴨G(2020)
mas o menosおなじみ"クラブユースU-17選手権"も決勝ラウンドは2戦目。三菱養和SCユースにRaiz Chofu FC U-18が挑む構図の一戦は、お馴染み三菱養和会巣鴨スポーツセンターグラウンドです。
昨年は清水エスパルスへと入団した栗原イブラヒムジュニアを筆頭に、高い個の能力を結集したスタイルを打ち出しつつ、プリンス関東では4位に入った三菱養和SCユース。迎えた今シーズンは「オレらは圧倒的な個を持っている人はいないので、チームでどれだけいろいろなことを乗り越えられるかという部分だと思っています」と畑橋拓輝(2年・三菱養和調布JY)が話したように、チームとしての総合力を高めていくことに比重を置くような立ち上げ期を過ごしている様子。「去年みたいに突出したヤツらがいないし、『みんなで頑張らなきゃダメだよね』というのは彼らがみんな凄くわかっていることなので、逆にそれプラス僕は『じゃあ、今の時期から個をもっともっと大きくしようよ』ってやってるからね」とは生方修司監督。各々の個を少しずつ伸ばしていくことで、その総和をより大きくしていくようなチームビルディングを進めていく上で、この大会は彼らの自信を高めるためにも非常に重要な位置づけになりそうです。
1次リーグを怒涛の3連勝で勝ち上がると、決勝リーグ進出決定戦では杉並ソシオU18を2-0で下し、堂々の決勝ラウンド初進出を勝ち獲ったRaiz Chofu FC U-18。「ユースは今年で3年目です。去年やっと人数が揃って、この"U-17大会"に初めて出たんですけど、その時は2年生が2人で、1年生が11人か。それで新1年生が入ってきて、去年はフルにやってという感じなので、創立3年目とは言っても、実質活動期間は1年間ぐらいですね」と説明するのはクラブの代表でもある植松真徳監督。先週の初戦ではFC町田ゼルビアユースに0-9と大敗を喫したものの、「凄くいいと思います。励みになると思うし、そう選手が思ってくれればいいんですよ。このレベルで戦わないと、やっぱりサッカーは次の世界が広がってこないということを知って欲しいと思っているので」と指揮官はポジティブな感想を。"次の世界"の扉に手を掛けるためにも、相手にとって不足はありません。折からの雨も止み、巣鴨のグラウンドはボールも動かしやすそうな絶好のコンディション。楽しみな90分間は養和のキックオフでスタートしました。
まずはセットプレーで相手ゴール前を窺うホームチーム。6分に小野寺晴輝(2年・三菱養和巣鴨JY)が蹴った左CKは、DFがきっちりクリア。直後に再び小野寺が入れた左CKは、Raiz Chofuのセンターバックに入った松原脩(2年・調布第七中)がクリア。逆に8分にはRaiz Chofuにチャンス。左サイドバックの鈴木龍ノ介(2年・調布FC JY)と左サイドハーフの岡元蓮(2年・調布FC JY)が関わり、山根隆誠(2年・調布FC JY)が上げたクロスに、人見天(2年・調布FC JY)が突っ込むもシュートには至らず。お互いに得点への意欲を打ち出します。
そんな立ち上がりを経て、先に歓喜を享受したのは養和。10分に左で手にしたこの日3本目のCK。「試合前から、自分たちも流れに乗れるから、早い時間で1点目を取るというのは自分の中で思っていた」という小野寺の正確なキックがファーに届くと、待っていた西久保駿介(1年・三菱養和巣鴨JY)のヘディングはゴールネットを力強く揺らします。「あのヘディングは自分でも良かったと思います」と笑った右ウイングバックの先制弾。養和が1点をリードしました。
15分には今年のチームのストロングを生かした追加点が。ボランチの仲野隼斗(1年・三菱養和巣鴨JY)が左サイドへ展開したボールから、「ジュニアユースの頃からクロスを上げさせたら、もう本当に良いボールが入ってくるのよ」と生方監督も高評価を口にする武田童男(2年・三菱養和巣鴨JY)が鋭いクロスをファーへ。ここに飛び込んだ西久保が折り返すと、仲野は難なく頭で押し込みます。「アレは生方監督にも言われてチームでも結構狙っていて、ピンポイントな武田くんのクロスにはファーから入ることを意識したので、そこはうまく行ったかなと思います」と西久保も話す狙い通りの一撃。スコアは2-0に変わります。
17分にも小野寺からのパスを、レフティの白井敬(2年・三菱養和巣鴨JY)が枠へ飛ばしたシュートは、Raiz ChofuのGK有島隆悟(1年・プログレッソTCF)がファインセーブで回避したものの、19分には細かい連携でボールが動き、西久保のダイレクトパスから抜け出した町田悠(2年・三菱養和巣鴨JY)がGKとの1対1も冷静にグサリ。このゴールには生方監督も「3人目、4人目という所が良いポジションを取りながら、パス、パスでインしていって、ワンタッチで取ったゴールとか、ああいうのは狙いにしてるよね」とご満悦。点差は3点に開きます。
一方、「やれる瞬間や時間帯もあるんですけど、そこに至るまでの継続した準備が足りなかったり、エンジンが掛かる瞬間を90分間フルに出せないというのが問題なんです」と植松監督も語ったRaiz Chofuは、右から近藤縁司(2年・調布FC JY)、別府優樹(1年・調布FC JY)、松原、鈴木で組んだ4バックから丁寧にボールを繋ぎ、ボランチの溝淵平(2年・調布FC JY)と森松旭(1年・調布FC JY)から前方へ配球したい意図は時折見える中で、なかなか連続性が出てこず、チャンスの芽を創り切れません。
26分は養和。武田のパスを白井はクロスに変え、中央から西久保が狙ったシュートは有島がファインキャッチ。28分も養和。「今まで『球際が弱い』とか、『もっと行け』みたいな感じだったんですけど、今日は行けた気がします」と口にした小野寺が高い位置でボールを刈り取り、そのまま運んで打ったシュートは別府がブロック。33分も養和。西久保がフィードを送ると、粘って打った町田のシュートは有島がファインセーブで掻き出し、こぼれを拾った白井のボレーはクロスバー。さらに町田のシュートも有島がビッグセーブ。Raiz Chofuの守護神が意地を見せ付けます。
しかし、次の得点も養和。35分。エリア内でのディフレクションをきっちり拾った町田は、確実にボールをゴールネットへ流し込み、これでドッピエッタ。37分にも飯田泰成(2年・三菱養和巣鴨JY)が付けたボールを、右に流れた白井の右足シュートは松原がカット。40分にも相手のミスを突いた飯田のシュートはゴール右へ。44分には飯田が左へ流し、白井が枠へ収めるも有島がこの日6本目のファインセーブで仁王立ち。45分には西久保の右スローインから、エリア内で町田が打ったシュートは枠の右へ。45分にも白井のパスを引き出した町田のシュートは鈴木がブロック。「前半は凄く淡々とやっているだけで、そつのない、スキのないというか、相手にとって困るようなプレーがあまり見受けられなかったよね」と生方監督もここは不満顔。4-0で最初の45分間は終了しました。
ハーフタイムに養和は5人の交替を敢行。3バックの左で攻撃参加も見せていた高村真汐(2年・三菱養和巣鴨JY)と高橋昂(2年・三菱養和巣鴨JY)を、ボランチの仲野と田中雄大(2年・三菱養和調布JY)を入れ替え、さらに町田を頂点に白井と飯田が並んだ1トップ2シャドーも、矢野結泰(2年・三菱養和巣鴨JY)、洪怜鎭(1年・三菱養和巣鴨JY)、嵯峨康太(1年・三菱養和巣鴨JY)にスイッチして、「次の試合に引き分け以上で1位突破するためには、やっぱり点差が必要だったという中で、『前から行く』という話がミーティングであったのに、前半はちょっと前に行くという意識が薄かったと思います」と畑橋も気になっていた部分の改善に着手します。
すると、後半開始早々の48分に5点目。「キックはそれなりには自信があります」と謙遜する小野寺の左CKから、中央の混戦に飛び込んだ西久保が泥臭く押し込んで、こちらもドッピエッタ。50分にはRaiz Chofuも近藤縁司を起点に、別府が好フィードを蹴り込むと、走った人見のダイレクトシュートは枠を襲うも、養和のGK清水理(2年・三菱養和巣鴨JY)が丁寧にキャッチ。53分は養和に6点目。上がってきた高橋が巧みに左へ振り分け、レフティの嵯峨がえぐって入れたクロスは、DFがクリアし切れずにオウンゴール。スコアは6-0に。
56分も養和。右から嵯峨が蹴ったCKに、ニアへ突っ込んだ畑橋のヘディングはゴール右へ。58分も養和。小野寺の左CKから、ルーズボールに反応した洪怜鎭のシュートはゴール左へ。58分にはRaiz Chofuに1人目の交替。右サイドバックで奮闘した近藤縁司に替えて、渡辺駿太(1年・調布FC JY)がピッチへ。60分は養和に7点目。嵯峨の右CKから、田中がヘディングで豪快な一撃をゴールネットへ。62分は養和に8点目。嵯峨が右へラストパスを送り届け、矢野がニアに打ち込んだシュートも綺麗にゴールネットへ。66分は養和に9点目。嵯峨の右CKに強烈な高さで競り勝った西久保は豪快なヘディングをゴールへ叩き込み、「公式戦でハットトリックは初めてなので、気持ち良かったです」と自ら言及するハットトリック達成。いよいよ養和の勢いが止まりません。
66分にRaiz Chofuは2人目の交替として鈴木海光(1年・調布FC JY)を投入すると、西久保の右クロスを洪怜鎭と矢野がシュートまで持ち込み、どちらも有島のファインセーブに阻まれたシーンを経て、69分には左サイドから嵯峨が右足でアーリークロスを送り、ファーから飛び込んだ西久保がボレーをゴールネットへ突き刺し、これで養和は10点目。「自分のプレーの特徴は粘り強い守備とか、クロスに突っ込んでの得点とかです」と笑顔を見せた西久保は、ウイングバックながら自身4点目と得点力を見せ付けます。
Raiz Chofuも70分には初めてのコーナーキック。左から山根が蹴り込んだものの、ここはDFが確実にクリア。さらに72分には溝淵がフィードを送るも、走った近藤帝司(1年・調布FC JY)には届かず。「どうしても早くゴールにと、縦、縦に行って潰されるというのがあるので、そのへんは練習中から言っているんですけど、どうしてもうまく行かない、というのはありますね」と植松監督。森山純平(1年・三菱養和巣鴨JY)、畑橋、高橋で組んだ養和3バックの鉄壁感。遠い1点。
73分は養和。カウンターから畑橋のパスを田中が右へ展開すると、運んだ矢野のシュートは枠の右へ。74分も養和。西久保のパスから矢野が放ったシュートは、有島がこの日9本目のファインセーブ。76分も養和。左サイドを運んだ武田のアーリークロスに、突っ込んだ矢野のヘディングはゴール左へ。77分は養和にセットプレー。小野寺がニアを狙った左CKは跳ね返されるも、「畑橋に『ニアに蹴れ』って言われて、跳ね返されちゃったんですけど、そこで落ち着いていたのであとは技術で」正確なクロスをまたも小野寺が上げ切ると、田中のヘディングは右スミのゴールネットへ吸い込まれます。これでスコアは11-0に。
78分はRaiz Chofuが3人目の交替として、寺本雄哉(1年・調布FC JY)を投入。79分には養和が8人目の交替として、仙北颯音(2年・三菱養和調布JY)を投入。82分は養和。嵯峨が繋いだボールを、小野寺が打ったミドルは有島がキャッチ。82分も養和。高い位置で相手ボールを取り切った仙北のシュートはゴール左へ。直後には養和が最後のカードとして篠原將浩(1年・三菱養和巣鴨JY)をピッチへ。83分は養和。仙北の左クロスを矢野が収め、放ったシュートはクロスバーにヒット。84分はRaiz Chofuに4人目の交替。岡元と中沢倫也(2年・ボンフィンFC豊島)をスイッチして、ゲームは残り5分間とアディショナルタイムへ。
88分は養和。嵯峨の丁寧な右FKから、走り込んだ畑橋のヘディングは左スミのゴールネットへ飛び込み、チームの12点目を記録。このゴールに畑橋は「ずっと『点を取れ』って言われていたので、ちょっとホッとしましたね。最後の最後に良かったです」と満面の笑みを。90+2分はRaiz Chofu。溝淵が右サイドへフィードを蹴り込み、中沢が入れたクロスは中央と合わず、これがこのゲームのラストチャンス。「前半はちょっと前に行くという意識が薄かった中で、後半は点を取ってボールもすぐハーフウェーラインに戻したりして、そういう意識が1人1人強くなったというのは良かったんじゃないかなと思っています」と畑橋も話した養和が、3ポイントと得失点差の面で大きなプラス要素を勝ち獲る結果となりました。
「長いリーグ戦を考えた時に、やっぱり同じメンバーでは戦えないし、それはジュニアユースからそうだけども、むしろ預かった子供たち全員を出して、全員で勝ちたい、みたいな。多少のデコボコはあるにしても、やっぱりそうじゃないとあまり意味がないし、そういう壮大な理想論をジュニアユースからまたユースにも持ち込んでいるというね。そのためにはみんなが力を付けて行かないとダメなので、そのあたりを今は切磋琢磨させている所かな」と生方監督が"壮大な理想論"と表現したフレーズは、それでもある意味で養和が、"ウブさん"が掲げてきたクラブの在り方にも通じる大事な部分。「養和は上下関係もほぼないので、やりやすいですね(笑) だからこそ、このクラブに恩返ししたいなという想いはあります」という西久保の言葉を、おそらくはチーム全員が共有している部分も、彼らの大きな強みであることは間違いありません。
「オレらの代は正直1個上の代とか松川さんの代より、おとなしい感じの子が多い印象があって、1個下はうるさいんですけど、逆にウチらはみんな頭の良い人とかが多いので、そういう所は去年にはないかなというイメージはありますね」という畑橋の言葉には思わず吹き出してしまいましたが、「今の2年生たちは比較的マジメで、もう本当に献身的にやれる子が多いので、逆に1年生は本当にもうワイワイガヤガヤで、そういう意味でのバランスは取れるのかなという所では、なんか凄く面白いチームになるんじゃないのかなというのは見ていてあるね。今年は早い時期に、オレが思っていることに対して理解力や実行力が高いというか、『まずちょっとやってみようか』という部分が素直に出せる子たちが多いので、『派手さはないけど、しっかり守って何とか』というような、そういう構図にはなるのかなとは思うんだけどね。でも、そういうチームの方が最終的には上に行けるような気はするし、アベレージは上がるのかなとも思うので、みんなで頑張れるような、そういうチームにしたいなと思うよね。楽しみ楽しみ」と指揮官の期待も小さくない様子。養和の2020年も非常に楽しみです。
「ゼルビア、養和とやって、今度は横河でしょ。もう片方のグループはヴェルディにFC東京がいて、こことトリプレッタはやっているじゃないですか。だから、チームとして底上げできますし、トリプレッタも"看板"ができている訳で、だからこういう大会は大事にしたいなと思いますね。特にウチみたいな新生チームにとっては。試合をやれることがありがたいから、まあいいですよ、ボロカスでも(笑)」と植松監督も優しい笑顔を浮かべたRaiz Chofuは、大敗こそ喫したものの、チャレンジする意欲は最後まで完全に削がれなかった印象がありました。その姿勢自体が、きっと今の段階では何より大切なのではないでしょうか。
「彼らには長くサッカーを続けて欲しいので、そういう意味でも目標を持つ中で、クラブチームという選択肢を持って欲しいという所でこのチームを作っていますし、ジュニアユース、ユースという6年間で一貫指導していくことができれば、もう少し違うバイパスを通した所で、また次の夢というのが出てくると思うんです。プロになれる選手は本当に一握りなので、逆に言うと『ここで頑張れば、オレらもこういうステージに上がって来れるんだ』というのがあれば、社会人になって仕事を始めても、『もうちょっと頑張ってみよう』『もう一歩踏み出してみよう』ということができるのかなと。全員がプロになる必要はないし、ある意味サッカーじゃなくても世界に通用する人たちがウチから育ってくれればいいかなという所で始めているので、いつか1人でも海外で頑張れるヤツ、1人でもJリーグで頑張れるヤツ、社会人でもどこでもいいんですけど、サッカーをベースにして頑張れるヤツが出てきたらいいなと思っています」という植松監督の想いが詰まっているRaiz Chofuにも、今後は大いに注目していきたいと思います。 土屋
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