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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2019年10月24日

高校選手権東京B2回戦 駒澤大学高×日体大荏原@駒沢第2

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駒澤×日体大荏原.JPG

第4試合は昨年度のチャンピオンに、インターハイ出場経験を有する私立校が挑む構図。駒澤大学高と日体大荏原の2回戦は、引き続き駒沢第2球技場です。

ここ4年で3度の全国出場権を獲得するなど、近年の東京高校サッカー界を間違いなく牽引してきている駒澤大学高。今シーズンは関東大会予選の準々決勝、インターハイ予選の東京代表を懸けた準決勝と、共に國學院久我山の前に黒星を突き付けられ、悔しい2つの経験を。「選手権は次に負けたら終わるという大会なので、自分たちも引退が懸かっている中で、自分たちは部員が多い分、その人たちの分まで気持ちをしっかり背負ってやらないといけないですね」と語るのは松本悠佑(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)。連覇を目指す戦いはここから始まります。

2年続けて準決勝まで進出したのは1996年度と1997年度。それから20年近い時を経て、再びその存在感を取り戻すべく奮戦している日体大荏原。今年のチームは新人戦こそ東海大高輪台に0-6で大敗を喫し、関東大会予選出場を逃したものの、インターハイ予選では1次トーナメントで東京朝鮮にPK戦の末に競り負けるなど、その一定以上の実力は証明済み。今大会も1次予選を圧倒的な攻撃力で勝ち上がると、先週の2次予選初戦では都立国立を1-0で退けて、都のベスト16まで。「"攻守一体"と言っているんですけど、別にディフェンダーが前に行ってもいいし、センターフォワードが下がってきてもいいし、好き放題動けという、フォーメーションも特に関係なくやっています」とは塙直也監督。相手にとって不足なし。ジャイアントキリングを真剣に狙います。駒沢の空は既に薄暗く、雨すら降ってきそうな雰囲気も。ベスト8を巡るこの日のラストマッチは、16時ジャストにキックオフされました。

「初戦ということもあったので、自分も特に入りの部分とかプレーが結構ガチガチでした」と松本が振り返ったように、駒澤は慎重に入った立ち上がりを経ても、流れの中からはチャンスを創り出せず、焦れるような展開を強いられます。

一方の日体大荏原は「もう国立戦に勝ってからはセットプレー対応の練習しかしていなかったです」と指揮官も明言。右から久保木颯弥(3年・KSCウェルネスFC)、小泉桂司(3年・FC緑)、渡辺夏生(3年・インテリオールFC)、黒羽琉聖(3年・ブリエッタFC)で組んだ4バックに加え、アンカーの藤田航輔(3年・アトラソンFC)も含めた5人は守備を強く意識したプレーを選択。時にはインサイドハーフの宮田勇輝(3年・FC杉野)と社頭広大(3年・インテリオールFC)も低い位置まで戻りながら、相手のアタックを1つ1つ凌いでいきます。

24分は駒澤。松本の右FKから、センターバックの原田大渡(3年・FC東京U-15深川)が打ち下ろしたヘディングは日体大荏原のGK見並玲温(3年・コンサドーレ札幌U-15)がしっかりキャッチ。28分も駒澤。GKの三浦健太(3年・S.T.FC)が長いFKを蹴り込み、内田哲平(3年・坂戸ディプロマッツ)が残したボールを佐藤海来(2年・杉並アヤックスU-15)が枠へ収めたシュートは見並がファインセーブで回避し、渡辺が大きくクリア。31分も駒澤。松本の左CKは久保木が跳ね返し、こぼれを叩いた松本のシュートは藤田がクリア。39分も駒澤。ここも松本が蹴った左CKは、日体大荏原の右ウイングを務める福井陽介(3年・江戸川二之江中)がきっちりクリア。「前、前で、点を取らなきゃいけないみたいな感じだったので、落ち着きはなくて、単調な攻撃が多かった」とは松本。前半はスコアレスで40分間が終了しました。

後半も大きな展開は変わらず。44分は駒澤。左からサイドバックの手島大雅(3年・FC VIENTAS)が入れたロングスローは、飛び出した見並がキャッチ。同じく44分は日体大荏原。見並のキックを粘り強く拾った10番の堀下勇輝(3年・湘南ベルマーレU-15藤沢)は、少し運んでシュートまで持ち込み、軌道はゴール右へ外れたものの、一気に勇気を携えた日体大荏原イレブン。

49分は駒澤。清水宏晃(3年・C.A.アレグレ)が右へ展開し、松本が上げたクロスは見並がキャッチ。52分も駒澤。松本の右FKも見並がキャッチ。59分は駒澤に1人目の交替。清水を下げて、林駿佑(3年・クラブ与野)を投入し、右サイドに施した変化。59分は日体大荏原。右FKを久保木が蹴り込むと、堀下が触ったヘディングに福井が走るも三浦がキャッチ。スコアに変化は訪れません。

64分は駒澤。右CKを松本が蹴り込むも、中央でオフェンスファウルに。66分は日体大荏原。堀下の仕掛けで奪った右CKを小泉が蹴り込むも、DFが大きくクリア。67分は駒澤に2人目の交替。前線でボールを引き出していた橋本雄也(3年・ルキナス印西)を下げて、高精度キックを備える時田悠人(3年・Y.S.C.C.横浜U-15)を送り込み、セットプレーに右足のキッカーも。68分は日体大荏原に1人目の交替。福井に替えて、星野凌我(3年・SK ONZE FC)をピッチへ。69分は駒澤。時田の左FKはDFが確実にクリア。70分も駒澤。時田の左CKは見並がキャッチ。「駒澤の方が身長が高い分、気持ちで負けないように、毎回セットプレーになると声を掛けて、手を叩いたりして締め直していました」とはそのキャプテンマークを巻く見並。0-0のままで、残り10分の最終盤へ。

71分は駒澤に3人目の交替。佐藤と大岡忠義(3年・フレンドリー)をスイッチして、増強した前線のパワー。72分は駒澤。松本の右FKに大岡が合わせたヘディングは枠の左へ外れるも、チームきってのムードメーカーが沸き立たせた応援席。74分は日体大荏原。右サイドから星野が入れたクロスは、駒澤の右サイドバックに入った森田陸翔(3年・クラブ与野)がクリア。78分は駒澤に決定機。時田の左CKは一旦跳ね返されるも、再び時田が入れた左クロスに、原田はバイシクルで枠内へシュートを打ち込むも、DFがライン上で驚異的なクリア。80分も駒澤。センターバックの小林泰晟(3年・FCクラッキス松戸)がフィードを送り、林が狙ったミドルは枠の左へ。80+4分は日体大荏原。宮田の右ロングスローから、エリア内で堀下がDFに蹴られて転倒するも、主審はノーホイッスルという判定。両者譲らず。試合は前後半10分ずつの延長戦へもつれ込みます。

駒澤のキックオフで開始されたエクストラタイム。83分は駒澤。手島の右ロングスローに大岡が競り勝つも、DFが丁寧にクリア。84分も駒澤。松本の左FKは久保木がクリア。87分も駒澤。手島の左ロングスローから、内田が残して林が打ち切ったシュートは見並がファインセーブで仁王立ち。89分は日体大荏原。ピッチ右寄り、ゴールまで約25mの位置から小泉が蹴ったFKは、エリア内に作られたカベの中の手に当たったように見えましたが、ここもノーホイッスル。ジリジリする10分間が終了。白熱の延長も残された半分の10分間へ。

92分は駒澤。右から手島が3本続けて投げ入れたロングスローは、日体大荏原ディフェンスが3本続けてクリア。94分は駒澤に4人目の交替。松本を下げて、青木優音(2年・クラブ与野)をピッチへ解き放ち、最後の勝負へ。95分は駒澤。時田の左FKはオフェンスファウルに。96分は日体大荏原。小泉の長いFKは三浦が何とかキャッチ。98分は駒澤。左サイドを単騎で運んだキャプテンの小林蒼太(3年・Forza'02)はシュートまで持ち込むも、見並がキャッチ。99分は日体大荏原。ここも小泉の右FKから、最後は吉池大晟(3年・川崎西中原中)がドリブルで進むも、フィニッシュには至らず。100分に大野監督が切った最後のカードは意外な手札。「復帰明けなので迷ったんですけど、もう勘でしかないなと思って」、三浦と礒部幸輝(3年・クラブ与野)をスイッチするGKの交替を。100分間を終えても決着付かず。次のラウンドへの進出権はPK戦へと委ねられます。

先攻の駒澤1人目は小林蒼太。右スミを狙ったキックは、見並もわずかに届かず。後攻の日体大荏原1人目は藤田。右スミを狙ったキックは、三浦もわずかに届かず。駒澤2人目の林は右に打ち込み、見並が触るもゴールネットへ。日体大荏原2人目のキックは枠を外れ、ここで初めて付いた点差。駒澤3人目の時田が左に蹴ると、見並は再び触ったものの弾き切れず。日体大荏原3人目の小泉は三浦の逆を突いて右スミへ。駒澤4人目の原田は、見並に読まれながらも右スミへグサリ。日体大荏原4人目の吉池も飛んだ三浦の逆へ冷静に。4-3。激闘もいよいよ運命の5人目へ。

駒澤5人目。決めれば勝利のキックは、しかしクロスバーに弾かれてしまいます。日体大荏原5人目はエースの堀下。外せば終わりのシチュエーションにも、あっさり左スミへ成功。サドンデス。終わらない好勝負。駒澤6人目の内田は「キーパーを見て蹴るって決めていたので、動いた逆を突いて蹴るという蹴り方で」パーフェクトに成功。日体大荏原6人目の渡辺も完璧なキックで成功。駒澤7人目の森田も見並の逆を取って成功。そして、日体大荏原7人目。助走から右足で放ったキックはクロスバーに跳ね返り、この瞬間、熱戦に終止符。「延長でもPKでも勝たなきゃいけないので、勝てて良かったです。今日初めて『こんなに選手権って難しいんだな』と思いました」と内田も口にした駒澤が、粘る日体大荏原をPK戦で振り切って、準々決勝へと勝ち上がる結果となりました。

奮闘及ばず。とにかく日体大荏原の戦いぶりが印象的でした。「いやあ、悔しいですね。シンプルに悔しいです」と真っ先に口にした塙監督は、「割り切って今までのサッカーとは変えましたね。駒大に勝つという練習をしてきていたので、多少なりとも対応できたのかなと思います」とも。キャプテンの見並も「0-0に持っていけたらいい方かなと思っていたんですけど、そこは思い通りに行ったのかなと思います」と振り返るなど、100分間はプランを完遂したと言って良いでしょう。

PK戦では1人目から4人目まで、すべて相手キッカーのコースを読んでいた見並。「いや、もう直感で。悪くなかったですね」と言及した後、「手首の筋トレ不足です(笑)」と付け加えるあたりに性格が滲みます。この言葉を聞いた塙監督は「生意気ですね(笑) アイツは担任で3年間見ていますけど、まだまだ甘いので卒業まで鍛えますよ」とこちらも笑顔。試合後にこういうやり取りを聞くことができて、個人的には救われた感じもありました。

100分間も自分たちを走らせた理由を、見並はこう語っています。「3年間で培ってきた"荏原魂"を見せつけたいという感じでした。最後まであきらめない気持ちだったり、ラスト一歩を出す所だったり、走り切る所が"荏原魂"です」。彼らが身に付けていた"荏原魂"は、確かにこの日のスタンドの感情を揺り動かしていたと思います。そのことを伝えると「そう思っていただけたんだったら嬉しいですね。『感動を与えるチームを創ろう』というのが目標なので、少しでもそう感じていただけたのだったらありがたい限りです」と語った塙監督。次のラウンドには進めなかったものの、その目標はきっと達成されたのではないでしょうか。

「3年生は本当に人間性のいいヤツらだったので、またこういうチームを創りたいですし、ここで勝てるようなチームを創りたいですね。もともと入ってきた頃はやさぐれていたというか、やんちゃ坊主ばかりなので、それでもやっぱり『人に感謝しろ』とか、『3年間、おかげさまだ』と。これはずっと言ってきたので、それで少しは人間らしくなったかなと思います」と笑った塙監督。大丈夫です。彼らはちゃんとわかっています。最後に見並の言葉をご紹介しておきます。「3年間保護者の方とか、いろいろな人に支えられてこの舞台に立てましたし、このピッチに立てたと思うので、最後までその感謝の気持ちというのは見せられたかなと、自分では思っています」。間違いなくこの想いはみんなの総意。駒沢の夜空をその熱量で明るく照らした、日体大荏原の3年生たちに大きな拍手を。        土屋

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