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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
夏の三重へと続く重要なステップはこの5月中旬から。東京朝鮮と駒場東邦が対峙するインターハイの一次トーナメント初戦は駒沢第2球技場です。
昨シーズンも好チームを創り、選手権予選では準決勝まで進出。その西が丘でも関東第一と大熱戦を演じ、最後は延長戦で3-4と力尽きたものの、素晴らしいゲームを繰り広げた東京朝鮮。迎えた今シーズンの関東大会予選は、ベスト16で駒澤大学高に0-1で敗れ、既に開幕しているT2リーグはここまで2勝2敗のイーブンですが、「関東大会で負けた後に、3年みんなでミーティングして、絶対全国に行こうという意思統一ができました」とはユン・チス(3年・東京朝鮮中)。ここから5連勝での全国出場という目標は揺るぎません。
新人戦は地区大会で日本学園に1-2、インターハイ予選は支部予選で日大鶴ケ丘に0-1、都大会に進出した選手権予選はブロック1回戦で東亜学園に延長で敗れるなど、悪くないゲームを繰り広げながら、接戦で敗退する大会の続いた昨シーズンの駒場東邦。昨年中に立ち上がった新チームは、新人戦こそまたも地区予選で姿を消しましたが、今大会の支部予選は都立練馬と筑波大駒場を続けてPK戦で撃破すると、都立井草にも3-2で競り勝って、この一次トーナメントへ。『接戦で勝てるチーム』へのさらなる脱皮を目指し、大事な80分間に挑みます。会場の駒沢は今週も初夏を思わせるような25度近いコンディション。注目の一戦は東京朝鮮のキックオフでスタートしました。
いきなりのチャンスは2分の東京朝鮮。右からサイドバックのアン・ジュノ(2年・東京朝鮮中)がアーリークロスを放り込み、リ・チャンギ(3年・東京朝鮮中)のヘディングは枠を越えるも、早くも最初のフィニッシュまで。3分は左から、こちらもサイドバックのパク・チュンボム(3年・東京朝鮮中)がクロスを上げ切り、ここもリ・チャンギのボレーは枠の右へ外れましたが、両サイドから好機を創出します。
すると、スコアが動いたのは8分。センターバックのキム・チャンミョン(3年・埼玉朝鮮中)が縦に付けると、左サイドで受けたキム・スソン(2年・東京朝鮮中)は「練習中からやっていたサイドから中へ切り込むという形」で、カットインしながら丁寧にシュート。ボールは右スミのゴールネットへ飛び込みます。「うまくかわせたので、ファーを狙って蹴ったら決まったみたいな感じで、気持ち良かったです」と笑う2年生アタッカーの一撃。東京朝鮮が1点のリードを奪いました。
さて、ビハインドを背負う格好となった駒場東邦。8分には左サイドハーフに入った溝口一真(1年)のパスから、渡部颯太(2年・駒場東邦中)が狙ったミドルはクロスバーを越えましたが、ファーストシュートを。10分に東京朝鮮もリ・チャンギ、ユン・チスと繋いだボールから、キム・スソンがシュートを枠へ収めるも、駒場東邦のGK大久保燎(2年・駒場東邦中)がファインセーブで凌ぐと、11分は再び駒場東邦。山縣俊太郎(1年)を起点に杉山弘樹(2年・駒場東邦中)が右へ流し、走った砂山雄哉(2年・駒場東邦中)にはわずかに届かなかったものの、少しずつ出てきた攻撃の形。
それでも以降のペースは東京朝鮮。15分にユン・チスの右CKから、こぼれを拾ったキム・スソンのシュートは大久保がキャッチ。17分にもユン・チス、キム・スソンとパスを回し、プ・リョンス(3年・東京朝鮮第五中)が狙ったシュートは大久保が確実にキャッチ。23分にユン・チスが、25分にプ・リョンスが放ったシュートは共にゴール右へ外れると、32分には中盤アンカーを務めるチェ・テソン(3年・埼玉朝鮮中)のスルーパスにキム・スソンが抜け出すも、GKと1対1で打ったシュートは右ポストを直撃。「ボールは握れたんですけど、最後に相手を崩すという所ではちょっと工夫やアイデアが足りなかったですね」とは姜宗鎭監督。右から岡井日々樹(2年・駒場東邦中)、地頭所明洋(2年・駒場東邦中)、安藤裕基(1年)、吉村寿太郎(1年)と並んだ4バックを中心に、粘り強く対応する駒場東邦ディフェンス陣。
少し漂い出した嫌な流れを切り裂いたのは、「自分がチームを勝たせられる選手になりたい」と語るナンバーエイト。38分にミドルレンジでボールを引き出したユン・チスは、「うまくターンができて、それは得意なプレーだったので、あとは思いきり振り抜くだけでした」と右足一閃。ボールはゴールネットへ豪快に突き刺さります。「去年の選手権予選も最後は出た選手で、アイツには期待してるんです」と指揮官も言及したユン・チスのゴラッソ。東京朝鮮が2点をリードして、最初の40分間は終了しました。
「ちょっと前半が思ったよりうまくいっていなかったなというのがありまして、ハーフタイムで今日は僕よりもコーチ陣が喝を入れていました」と苦笑した姜監督。そのハーフタイムで決断したのは2枚替え。ハ・ジュノン(3年・東京朝鮮第一中)とプ・リョンスに替えて、リャン・ユンデ(2年・東京朝鮮第一中)とキム・サンテ(3年・千葉朝鮮中)を送り込み、選手も「自分たちで『もっと自分たちのサッカーをしよう』と」(キム・スソン)後半のピッチへ飛び出します。
"喝"の効果はすぐさま結果に。後半開始早々の41分。センターバックを務めるキャプテンのムン・ヒョンジョン(3年・埼玉朝鮮中)が、右に開いてクロスを上げると、入ったばかりのリャン・ユンデが放ったシュートは大久保がファインセーブで凌いだものの、こぼれを拾ったリャン・ユンデの折り返しに反応したのはキム・スソン。「結構外していたので、もう思いきり蹴ろうと思って」右足で打ち込んだシュートはゴールネットへ到達します。「今日は監督からも『結果を残せ』とずっと言われていました」という11番はこれでドッピエッタ。東京朝鮮のリードは3点に広がりました。
踏み込んだアクセル。43分は東京朝鮮。相手のミスを突いたリャン・ユンデのミドルは枠の右へ外れるも、積極的なチャレンジ。44分も東京朝鮮。リャン・ユンデ、リ・チャンギとパスを回し、キム・スソンのシュートは大久保がキャッチ。46分も東京朝鮮。パク・チュンボムのパスからリャン・ユンデが左サイドをえぐり、リ・チャンギのシュートは良く戻った駒場東邦の10番を背負う中島理希(2年・駒場東邦中)が体でブロック。直後の左CKをユン・チスが蹴ると、こぼれを叩いたチェ・テソンのミドルは枠の上に消えるも、「後半は入りが良くて、みんな気持ちが入ってできたと思います」というユン・チスの言葉通り、より活性化した東京朝鮮の攻撃陣。
51分にもユン・チスが右足で上げた左クロスは、DFに当たってクロスバーにぶつかると、駒場東邦は1人目の交替を決断。岡井を下げて、笠井雄士(1年)をそのまま右サイドバックへ送り込みますが、次の得点も東京朝鮮に。53分、左サイドでボールを奪ったリャン・ユンデはマイナスに折り返し、キム・スソンのシュートは安藤が体で必死にブロックしましたが、リ・チャンギがきっちりとこのボールをゴールネットへ押し込みます。ようやく9番のセンターフォワードにも生まれた1点。スコアは4-0に変わりました。
55分には東京朝鮮に3人目の交替。ゴールを記録したリ・チャンギとコ・ジャンオ(3年・埼玉朝鮮中)を入れ替え、アタッカー陣の顔触れに変化を加えると、57分にはキム・スソンが右へ流し、コ・ジャンオが中へ戻したパスに、ユン・チスはループを選択。ボールはクロスバーを越えましたが、右のコ・ジャンオ、左のリャン・ユンデと後半から切ったカードが躍動する東京朝鮮の止まらない勢い。
相次いで切られたカード。66分の東京朝鮮はアン・ジュノとカン・ジュンソン(2年・千葉朝鮮中)を、67分の駒場東邦は溝口と山田真弘(2年・駒場東邦中)をそれぞれスイッチして、図るサイドの推進力アップ。68分は東京朝鮮。右に開いたキム・スソンのクロスに、ダイレクトで合わせたリャン・ユンデのシュートは大久保がキャッチ。70分も東京朝鮮。ユン・チスとリャン・ユンデのパスワークから、キム・スソンが枠へ飛ばしたシュートは大久保がビッグセーブで応酬すると、直後には駒場東邦が3人目の交替として、砂山と村田大介(1年)をスイッチ。残りは10分間。差し掛かる最終盤の攻防。
71分は東京朝鮮。左サイドを切り裂いたリャン・ユンデのフィニッシュは、大久保がこの日6本目のファインセーブで仁王立ち。直後の71分も東京朝鮮。キム・スソン、パク・チュンボム、キム・サンテとスムーズにボールが動き、チェ・テソンのミドルは枠の上へ。73分は東京朝鮮に5人目の交替。2ゴールをマークしたキム・スソンを下げて、リ・サンリョン(3年・埼玉朝鮮中)が登場。74分は駒場東邦に4人目の交替。足を痛めながらピッチに立ち続けていたキャプテンの地頭所が下がり、渡部龍翔(2年・駒場東邦中)が左サイドバックへ送り込まれ、吉村がセンターバックへスライドします。
79分は東京朝鮮。カン・ジュンソンの仕掛けで獲得した右CKをコ・ジャンオが蹴り込み、ムン・ヒョンジョンが合わせたヘディングはクロスバーの上へ。80分は駒場東邦。ミドルレンジで前を向いたボランチの杉山が、そのまま左足で打ち切ったシュートが枠の左へ外れると、これがこのゲームのラストシュート。「後半の方が全然良いゲームができたと思います」とキム・スソンも話したように、攻勢を続けた東京朝鮮がきっちり勝利を収め、一次トーナメント決勝へと勝ち上がる結果となりました。
「11番の子は2年生なんですけど、チーム立ち上げの時から育てるというか、スタメンで結構使ってきた中で、最近全然結果を残していなかったんです。なので『ちょっと替えようかな』とは思ったんですけど、ケガ人もいろいろあったので、昨日は『明日がラストチャンスだ』ということは言いました」と明かした姜監督。そのことを問われたキム・スソンは「そうなんです」と肯定しながら、「もうがむしゃらに、もう結果だけ、ってずっと考えて、『自分で行こう』という気持ちでゲームに入りました」とのこと。崖っぷちでの2ゴールに「一応結果は残せたので良かったです。先輩からも『どんどん自分でやりたいことをやっていいから』と言われていて、そういう所で吹っ切れた部分もあります」とも語った2年生の活躍は、チームにとっても小さくない成果と言えるでしょう。昨シーズンからの主力を数枚欠く中で、リ・サンリョンやカン・ジュンソンのように地区トップリーグでのプレーが認められ、Aチーム入りを果たした選手も公式戦デビューを果たすなど、メンバー争いも確実に活性化の一途を。「口だけだったら周りが付いてこないのは当たり前なので、先頭に立ってみんなを連れていくような姿を見せられる、そういうキャプテンを目指しています」と言い切るムン・ヒョンジョンを中心に、まとまりが出てきつつある今シーズンの東京朝鮮も非常に楽しみです。 土屋
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