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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2017年11月04日

高校選手権東京A準決勝 関東第一×東京朝鮮@西が丘

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1104nishigaoka1.JPGディフェンディングチャンピオンと初優勝を狙う赤虎軍団の対峙。関東第一と東京朝鮮のセミファイナルは、東京高校サッカー界の聖地・味の素フィールド西が丘です。
昨年度はとうとう選手権予選を勝ち抜き、悲願の全国出場を手繰り寄せた関東第一。今シーズンも関東大会予選制覇に続き、インターハイ予選も都内3連覇を達成すると、全国でも神村学園や広島観音を相次いで倒し、堂々のベスト8進出。迎えた今大会は初戦で東京実業を2-1で振り切ると、準々決勝では都立東大和南を2-0で退けて、このステージへ。連覇へ向けての大事な80分間へ向かいます。
ここ2年は続けて西が丘まで勝ち上がっているものの、共にセミファイナルで敗退し、宿願とも言うべき全国大会の切符にはあと一歩届いていない東京朝鮮。迎えた今大会は、インターハイ予選で突き付けられた一次トーナメント初戦敗退の悔しさをバネに、初戦の城北戦を2-1で乗り切ると、2回戦の早稲田実業戦も1点ビハインドの後半終了間際にシン・ジュンボム(3年・西東京朝鮮第一中)の公式戦初ゴールで追い付くと、そのままPK戦で勝利を奪取。勢いそのままに都立東久留米総合と激突した先週のクォーターファイナルもPK戦で制して、3年連続となる聖地まで。ここで敗れ去る気は毛頭ありません。会場の西が丘には2000人を超える観衆が。注目の好カードは東京朝鮮のキックオフで幕が上がりました。


まずは双方がセットプレーで窺う相手ゴール前。3分は東京朝鮮。10番を背負う司令塔のムン・インジュ(3年・埼玉朝鮮中)が蹴り込んだ右FKは、味方と合わずにゴール左へ。7分は関東第一。左からルーキーの田中大生(1年・横浜FC JY)がCKを蹴り入れると、こちらもそのままゴール右へ流れていきますが、お互いに1つずつセットプレーのチャンスを創り合います。
ただ、以降は「鼻息荒く来ると思っていたので、ちょっとゲームの色や温度をわざと落としたいなと思っていた」(関東第一・小野貴裕監督)「最初のプラン的にはしっかり守っていこうという形」(東京朝鮮・姜宗鎭監督)と両指揮官も話したように、少しリスキーなアタックは揃って自重気味。7分に関東第一は嶋林昂生(3年・町田JFC)を起点に、小関陽星(2年・町田JFC)がミドルを枠の右へ外し、11分にも小野凌弥(3年・Wings U-15)のクサビを村井柊斗(3年・FC多摩)がフリックするも、貝瀬敦(1年・田口F.A.)のドリブルが大きくなって、飛び出した東京朝鮮のGKチュウ・サンホン(3年・神奈川朝鮮中)がキャッチした2つのシーン以外は、なかなか攻撃の形は出し切れません。
そんな中、19分は東京朝鮮に流れの中からビッグチャンス。サイドバックのチョン・ユギョン(2年・東京朝鮮第一中)が鋭いクロスを上げると、ニアに走り込んだプ・チウ(3年・東京朝鮮第五中)はフリック気味にヘッド。枠を捉えたボールは、インターハイで全国優秀選手にも選ばれた関東第一のGK北村海チディ(2年・GRANDE FC)がファインセーブで掻き出したものの、場内のボルテージを一段階引き上げます。
ところが、先にスコアを動かしたのはディフェンディングチャンピオン。21分に貝瀬のパスを受けた篠原友哉(3年・府ロクJY)はエリア外から枠内へ強烈なシュート。チュウ・サンホンもファインセーブで応酬しましたが、こぼれにいち早く反応した貝瀬がボールをゴールネットへ流し込みます。スタメンに抜擢された1年生がこの舞台で大仕事。関東第一が1点のリードを奪いました。
「1点はやられる可能性があるので、『もしプラン通りに行かなくても、1点取られた後からが大事だ』と言っていた」と姜監督も話した東京朝鮮は、やはりセットプレーで反撃。28分と30分には左からホン・リジン(2年・東京朝鮮第一中)がロングスローを投げ込み、ともにシュートには至りませんでしたが、ゴール前に圧力を掛けると、30分に左からホン・リジンが蹴ったCKは小野が大きくクリア。32分にもムン・インジュが右CKを蹴り込むも、混戦から小関が何とかクリア。さらに34分にもムン・インジュがラインの裏へ優しく落とし、走ったハン・ヨンギ(3年・東京朝鮮第一中)のボレーはヒットしなかったものの、同点への意欲を前面に押し出します。
それでもワンチャンスを生かせるのが今年の関東第一の強み。36分に篠原がややアバウトに前方へ蹴ったボールを、左サイドできっちり収めた貝瀬は再び浮き球で中央へ。「シュートを打とうかなと思ったんですけど、相手がシュートブロックの態勢に入っていたので」トラップでマーカーを外した篠原は、すぐさま態勢を整えてフィニッシュ。ボールは左スミのゴールネットへ飛び込みます。「監督から『攻撃の時に相手を見ろ』というのを言われていた」という10番は、これで今大会に入って3戦連発。38分にホン・リジンの右ロングスローから、プ・チウが右スミへ飛ばした好シュートも、北村が横っ飛びで超ファインセーブ。関東第一が2点のアドバンテージを握って、最初の40分間は終了しました。


後半はいきなり関東第一に追加点のチャンス。42分に左サイドで獲得したCKを田中が入れると、小野が綺麗に叩いたヘディングは枠の左を襲うも、ポストに跳ね返り、詰めた宮林庸太(2年・FCトリプレッタJY)のシュートはDFが体でブロックしましたが、あわや3点目というシーンを生み出します。
さて、「前半が終わってロッカールームに入っても、自分たちのサッカーはできるし、勝てる試合だったと思ったから、『諦めずに前へ前へ行こう』という話になっていた」(ハン・ヨンギ)という東京朝鮮。47分にはホン・リジンの左ロングスローから、チョン・ユギョンのシュートはDFに弾かれ、拾ったキム・セリュン(3年・東京朝鮮中)の枠内シュートは北村がキャッチ。52分もプ・チウが中央で収め、ムン・インジュが放ったミドルは枠の左へ。そして53分には決定機。チョン・ユギョンの右クロスから、キム・セリュンのシュートは北村が弾き、詰めたムン・インジュが至近距離から狙ったシュートも北村が驚異的なリカバーでビッグセーブ。「あれは弾く位置がちょっと悪くて、正面に弾いちゃったので、本当は外とかに弾かないといけないですね」とはその北村。スタンドからも小さくないどよめきが。
ただ、東京朝鮮の諦めないメンタル。60分にキム・セリュンが左へ流したボールを、良いアングルで受けたハン・ヨンギは右足で絶妙のアーリークロス。ここに突っ込んだチョン・ユギョンのダイビングヘッドは、豪快に右スミのゴールネットを揺らします。2年生の右サイドバックがダイナミックなファインゴール。たちまち両者の点差は1点に縮まります。
63分の決断は小野監督。1人目の交替として、1ゴール1アシストの活躍を見せた貝瀬に替えて、ケガ明けの重田快(3年・バンデリージャ横浜)を投入すると、輝いたのは「3年が前でしっかり仕事ができれば今年は勝てるチーム」と言い切る最上級生のストライカー。65分に中央で前を向いた村井は、右に流れながらエリア外から右足一閃。「『ライナー性で行くかな』と思ったらブレてくれた」ボールは、凄まじい軌道を描いてゴール左スミへ突き刺さります。「結構切り込んで打つというのはやっていることなので、あのへんで持てば自分が打てるタイミングをしっかり意識しています」という村井も2戦連発。再び点差は2点に開きました。
残り15分で小さくないビハインドを背負った東京朝鮮。姜監督は68分に右サイドハーフで奮闘したチョン・リュンギョン(3年・東京朝鮮中)を下げて、カン・アスン(3年・東京朝鮮第五中)を右サイドバックへ送り込み、「プランとしてあった」チョン・ユギョンとハン・ヨンギの2トップにシフトしつつ、69分にチョン・ユギョンが、70分に田中がそれぞれ放った枠外ミドルを経て、71分には2枚替え。ホン・リジンとキム・セリュンを、パク・リョンイ(3年・東京朝鮮第一中)とユン・チス(2年・東京朝鮮中)にスイッチして、最後の勝負に打って出ます。
赤の歓喜はその3分後。74分にセンターバックのリュウ・ユウォン(3年・千葉朝鮮中)の配球を起点にして、右サイドで手にしたスローインの流れから、投入されたばかりのカン・アスンが丁寧なクロスを上げ切ると、ニア寄りにポジションを取っていたチョン・ユギョンのヘディングは絶妙なコースを辿り、左スミのゴールネットへ到達します。これでチョン・ユギョンはドッピエッタ。「普通だったらそのまま3-1で終わっている所」と指揮官も驚く執念の一撃。3-2。一変したスタジアムの空気。
赤の爆発はその3分後。リ・ヒョンジェ(3年・東京朝鮮第一中)とシン・ジュンボムという左サイドバックの交替を経て、77分に訪れた衝撃のシーン。左サイドからプ・チウが入れたアーリー気味のクロスは、GKとDFの間にうまく落ちると、走り込んだチョン・ユギョンは懸命に足を伸ばして爪先でシュート。フワリと浮かんだボールは、ゆっくりとゆっくりとゴールネットへ吸い込まれます。チョン・ユギョンはこれで圧巻のハットトリック達成。「追い付いたのは気持ちの部分だと思います」とキャプテンのハン・ヨンギ。3-3。あっという間のタイスコア。80+2分にハン・ヨンギが掴んだ勝ち越しのチャンスは北村に阻まれたものの、「3-2になった時のスタジアムの雰囲気が凄かったですね」と姜監督も言及した東京朝鮮の驚異的な同点劇。ファイナルを巡る激闘は前後半10分ずつの延長戦へ突入します。


「受け身になった訳じゃないですけど、隙を突かれたというか、1人1人が遅れた結果」(篠原)、土壇場で追い付かれてしまった関東第一。後半の最終盤に到来したピンチも凌ぎ、何とかもつれ込んだ延長戦は、82分に宮林と加藤陽介(2年・VIVAIO船橋)をスイッチすると、1分後の主役は「やっぱり最後に点を取るのは自分だと思ってきている」というナンバー9。83分に小野のフィードを篠原が柔らかいトラップで収め、中へ送ったボールに小関が絡んでこぼれたボールを、村井は「ダイレで打つことは意識してきたので、あそこは『打たなきゃな』と思って」ダイレクトシュート。巻かれたボールは右スミギリギリのゴールネットを確実に揺らします。「前までは結構切羽詰まってプレーしていた感じはあったんですけど、今は落ち着きながら自分の間合いでサッカーできています」と言い切るストライカーが沈めたゴラッソ。4-3。関東第一が勝ち越しゴールを強奪しました。
またも追い掛ける展開となった東京朝鮮。90分にカン・アスンのパスからパク・リョンイが右クロスを放り込み、プ・チウがうまく走り込むも、必死に戻った田中が間一髪でクリア。直後には絶好の同点機。今度は左からシン・ジュンボムがクロスを上げ切り、うまくトラップで持ち出したハン・ヨンギのシュートは、「前よりはピンチで反応できていると思うので、そんなに慌てることなくやれていると思います」という北村がこの日5本目のファインセーブで仁王立ち。延長前半終了。いよいよゲームは最後の10分間へ。
91分に関東第一は3人目の交替として古宇田旭(2年・横浜F・マリノスJY追浜)がピッチへ。92分に東京朝鮮も最後の交替。センターバックのムン・ヒョンジョン(2年・埼玉朝鮮中)に替えて、184センチのキム・チャンミョン(2年・埼玉朝鮮中)が最前線に送り込まれ、戦い方を一層明確に。94分は東京朝鮮。シン・ジュンボムの左ロングスローにキム・チャンミョンが競り勝ち、全力で走り込んだパク・リョンイのシュートは、完全にはヒットせず北村が丁寧に丁寧にキャッチ。95分も東京朝鮮。シン・ジュンボムの右ロングスローは、混戦から古宇田が大きくクリア。押し込まれる時間にも、とりわけ関口聖人(2年・フレンドリー)と山脇樺織(2年・東急SレイエスFC)の2年生センターラインは強度をまったく落とさず。
96分も東京朝鮮。右サイドで何とか残したムン・インジュのクロスに、ニアでキム・チャンミョンがフリックしたボールは、ファーのハン・ヨンギもわずかに届かず、ゴールラインを割ってしまうと、これがこのゲームのラストチャンス。激闘の末に勝利のホイッスルを聞いたのは前回王者。「そんなにウチもヤワじゃないし、だいぶ我慢できるようになっているので、この勝ちはウチにとって相当大きいと思います」と小野監督も話した関東第一が、2年続けてのファイナルへと駒を進める結果となりました。


とにかく壮絶な100分間でした。「もう目の前の試合だけで来たので、最初が城北、次が早稲田実業、久留総ということで目の前の一戦一戦ということで取り組んできて、いろいろ学ばせていただきましたし、今日は本当に幸せな時間を過ごさせてもらいました」とは姜監督。3試合中2試合でPK戦を経験するなど、苦しみながら勝ち上がってきた西が丘の舞台で披露したのは、まさに「僕たちの代のトレードマークというか、そういう部分の"団結力"と"気持ち"と"雰囲気"」(ハン・ヨンギ)。「父兄もそうですし、学校もそうですけど、凄くバックアップの体制を整えてくれて、一体感を持ってやっていただいた中で、そういう応援が彼らをもっと上へ突き動かしてくれたんじゃないかなと思います」と指揮官も言及した全校応援も、スタジアムの雰囲気づくりに大きな影響を与えていたのは間違いありません。「高1で入った時から僕たちは『弱い』と言われてきた学年だったので、言われるたびに『今までの結果を超えてやる』という想いがみんなあったと思うし、特別な選手がいないだけに、みんなで団結してやったら絶対に良いチームになれるんじゃないかという話もあったんですけど、本当に団結力で言ったら強い力を持っていたと思うので、最初に比べて本当にみんないろいろと成長したと思います」と言い切ったキャプテンのハン・ヨンギも、最後には「3年間楽しかったです」と晴れやかな笑顔。東京朝鮮の素晴らしい戦いぶりに大きな拍手を送りたいと思います。    土屋

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