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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2017年10月27日

高校選手権東京A2回戦 東京朝鮮×早稲田実業@東久留米総合G

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全国を窺う強豪チーム同士が早くも2回戦で激突。東京朝鮮と早稲田実業の対峙は引き続き都立東久留米総合グラウンドです。
ここ2年の選手権予選は西が丘まで勝ち上がっているものの、共に準決勝での敗退を強いられ、またしても全国出場には一歩届かなかった東京朝鮮。複数の主力が残った今シーズンは、関東大会予選こそ東京実業と帝京を相次いで撃破し、ベスト4まで進出しましたが、インターハイ予選は一次トーナメント初戦で早大学院にまさかのPK負け。T1リーグでもなかなか結果の出ない状況の中、迎えた今大会は初戦で当たった城北を2-1で退けて2回戦へ。悲願達成へ向けての第二関門となる一戦へ向かいます。
昨年度も好チームを創り上げたものの、選手権予選では結果的に頂点まで辿り着く関東第一に2点をリードしながら、ラスト5分で追い付かれ、延長で逆転負けを喫した早稲田実業。それでも、東京朝鮮同様に昨年から主力を務めるメンバーの多くが名を連ねる今シーズンは、関東大会予選でベスト8、インターハイ予選で二次トーナメントまで進出するなど、十分に上位進出を狙える実力を有しており、難敵相手のこのゲームにも臆するつもりは毛頭ありません。ピッチは1試合目と変わらず、至る所に水たまりのある難しいコンディション。注目の2回戦は東京朝鮮のキックオフでスタートしました。


ボールの止まりがちな状況下で、なかなか流れの中からはチャンスを創れない両者の頼みはセットプレー。11分は早実。右サイドからキャプテンの秋元浩希(3年・多摩大目黒中)がロングスローを投げ込み、ニアで宮脇有夢(3年・湘南ベルマーレU-15)がフリックしたボールは、鈴木俊也(2年・FC東京U-15深川)もシュートまで持ち込めませんでしたが、惜しいシーンを。17分は東京朝鮮。ホン・リジン(2年・東京朝鮮第一中)の左CKは宮脇がクリアし、こぼれもフィニッシュには至らず。18分は早実。ここも右から秋元がロングスローを入れるも、そのまま流れてゴールキックに。双方シュートは打ち切れません。
そんな中で先に決定機を創ったのは早実。19分にラインの裏へ抜け出した橋山航輔(2年・横浜F・マリノスJY)が左スミを狙ったシュートは、GKを破ってゴールへ向かったものの、ラインを越える直前に水たまりでストップし、橋山が詰めるも、戻ったDFが間一髪でクリア。21分には市橋宗一郎(3年・練馬大泉中)の突破から左サイドでボールがタッチを割ると、逆まで走ってきた秋元の連続ロングスローは、それぞれキム・セリュン(3年・東京朝鮮中)とムン・ヒョンジュン(2年)がきっちりクリア。攻撃のリズムはやや早実。
ところが、23分にはカウンターから東京朝鮮に好機到来。相手のCKを拾ったリュ・ユウォン(3年・千葉朝鮮中)が中央を運び、パスを受けたプ・チウ(3年・東京朝鮮第五中)のミドルは、早実のGK山崎泰斗(1年・浦和レッズJY)がファインセーブで何とか回避。24分にもミドルレンジからキャプテンのハン・ヨンギ(3年・東京朝鮮第一中)が放ったシュートは枠の左へ外れたものの、「徹底して前で競ってこぼれを、という感じ」(姜宗鎭監督)の東京朝鮮にも少しずつチャンスが。
28分は早実。鈴木のFKをGKがファンブルしてしまい、リ・ヒョンジェ(3年・東京朝鮮第一中)のクリアを拾った橋山がシュートに変えるも、ボールは枠の右へ。29分も早実。ルーキーの植村竜也(1年)を起点に、右ウイングバックの吉岡直輝(2年・浦和レッズJY)が上げたクロスはニアで止まり、突っ込んだ橋山のシュートはゴール右へ。40分も早実。左サイドをドリブルで突き進んだ橋山のシュートは、ムン・ヒョンジュンが体でブロックして、GKのチュウ・サンホン(3年・神奈川朝鮮中)が丁寧にキャッチ。早実がよりチャンスを多く生み出した前半は、スコアレスで40分間が終了しました。


ハーフタイムにベンチが動いたのは早実。インサイドハーフの木下悠人(2年・FC.GIUSTI世田谷)に替えて、大森悠平(3年・さいたま尾間木中)を送り込み、中盤の強度アップに着手すると、44分に左サイドでゴールまで約25mの位置から鈴木が枠内へ収めた素晴らしいFKがチュウ・サンホンに掻き出されたシーンを経て、47分に迎えた歓喜。ここも鈴木が2本連続で蹴った右CKの2本目は、懸命に競った東京朝鮮DFに当たり、そのままゴールへ飛び込みます。「こっちがケアしていたのは相手の4番」と姜監督も名指しで警戒していた鈴木が得意の左足で一仕事。早実が先にスコアを動かしました。
追い掛ける展開となった東京朝鮮ベンチはすぐさま決断。49分に1トップ下のユン・チス(2年・東京朝鮮中)を下げて、10番を背負ったエースのムン・インジュ(3年・埼玉朝鮮中)をスクランブル投入すると、直後にチョン・リュンギョン(3年・東京朝鮮中)の左ロングスローをムン・インジュが残し、ホン・リジンのシュートは山崎にキャッチされるも、交替直後にさっそくムン・インジュが絡んでワンチャンス。52分にもリ・ヒョンジェのパスからハン・ヨンギが狙ったドリブルシュートは、山崎が何とかキャッチしたものの、失点したことで「『点を決めなくちゃいけない』という意識がみんなあって、前に前に、まず点を取りに行こうみたいな感じだった」(ハン・ヨンギ)東京朝鮮に出てきた勢い。
53分も東京朝鮮。相手のゴールキックを拾ったハン・ヨンギのミドルはクロスバーの上へ。55分も東京朝鮮。エリア内から打ち切ったプ・チウのシュートは左スミを襲うも、水たまりでブレーキが掛かり、詰めたハン・ヨンギはオフェンスファウル。57分も東京朝鮮。ムン・インジュのドリブルで左FKを獲得すると、ホン・リジンのキックは秋元に跳ね返されるも、「逆に失点してから今までなかった攻勢に出られた」とは姜監督。形勢逆転。攻勢は東京朝鮮。
リードを広げたい早実も58分に久々のチャンス。橋山がエリア内で粘って残し、宮脇が左足で叩いたシュートはチュウ・サンホンがキャッチ。59分は東京朝鮮。ムン・インジュが左へ振り分け、抜け出したキム・セリュンのシュートはよく戻った早実のセンターバック高橋一真(2年・Forza'02)が決死のクリア。68分も東京朝鮮。右からチョン・リュンギョンがロングスローを投げ込み、ムン・インジュが右足で打ったシュートは枠の右へ。気付けば残り時間は10分間とアディショナルタイムのみ。
70分に切られた東京朝鮮2枚目のカード。キム・セリュンに替わって登場したのは、「いきなり呼ばれたので、ちょっとビックリしました」というシン・ジュンボム(3年・西東京朝鮮第一中)。72分は早実にセットプレーのチャンス。右寄り、ゴールまで25m強の位置から鈴木が直接狙ったFKは枠の上へ。74分は東京朝鮮。ホン・リジンの右FKは山崎がパンチングで懸命に弾き出し、ルーズボールは宮脇が大きくクリア。いよいよゲームは最終盤へ。
衝撃の同点弾は「僕はすぐ緊張しちゃうので、ちょっとでも緊張しないように、冷静にやろうと」自分に言い聞かせていた途中出場の13番。77分に右サイドでスローインを手にした東京朝鮮。「試合に出るまでにも『ここは俺が投げたい』と思った所は何個かありました」というシン・ジュンボムはロングスローを放り込むと、ルーズボールはそのシン・ジュンボムの足元へ。「シュートをする直前にコースは見えたので、『思い切り振って蹴ってやろう』と思って」利き足の左足から繰り出されたシュートは、一片の迷いもない軌道を描いて左スミのゴールネットへ突き刺さります。「神様に見えましたね(笑)」とハン・ヨンギが笑えば、「まさかあんな感じで入るとは(笑)」と姜監督もやはり笑顔。「自分でもメッチャビックリしました」という一撃は、シン・ジュンボムにとって何とAチームでの公式戦初ゴール。執念の同点劇。勝敗の行方は前後半10分間ずつの延長戦へと持ち越されることになりました。


東京朝鮮のキックオフで動き出した延長戦は、両チームともにセットプレーで窺う相手ゴール。83分は東京朝鮮。ホン・リジンの左CKはDFが確実にクリア。85分は早実。秋元の右ロングスローを宮脇がニアですらし、鈴木が収め掛けるもムン・ヒョンジュンが執念でカット。直後の早実は再び秋元が右ロングスローを敢行し、ここも宮脇が競り勝ちましたが、チョン・リュンギョンがクリア。90分も早実。鈴木の右CKをハン・ヨンギが気合でクリアすると、早くも前半終了のホイッスル。ゲームは泣いても笑っても最後の10分間へ。
疲労もあってどちらにも好機が訪れないまま、所定の100分間が終了しようとしているタイミングで、姜監督は大きな決断。「監督になって初めてですし、あそこは賭けですね。でも、やっぱり送る時は迷いなく信じて送り出せました」という交替はGK同士。チュウ・サンホンに替わり、ゴールマウスに向かったのは「練習の時から確率的にPKを止めているのもありました」と指揮官も言及したカン・ブラマ(2年・東京朝鮮第一中)。加えてパク・リョンイ(3年・東京朝鮮第一中)も送り込み、万全の態勢を整えた東京朝鮮。鳴り響いたタイムアップのホイッスル。熱戦はとうとうPK戦へと突入します。


先攻は東京朝鮮。1人目のプ・チウは冷静に左スミを狙い、GKの逆を突いて成功。後攻は早実。1人目の秋元は右スミへ流し込み、キャプテンの仕事をきっちりと完遂。東京朝鮮2人目はチョン・ユギョン(2年・東京朝鮮第一中)。「僕は『もうちょっと早く蹴ってくれ』と言っているんですけど、今日はいつもより長かったですね」と指揮官も苦笑した通り、ホイッスルが鳴ってから30秒以上の時間を取って、右スミへ蹴ったボールはしっかりゴールネットへ。これでリズムが狂ったのか、早実2人目のキックは右ポストを直撃。2-1。2人目を終えて東京朝鮮が一歩前へ。
東京朝鮮3人目はリュ・ユウォン。左スミを狙ったキックは山崎も読んでいましたが、わずかに届かず成功。早実3人目の宮脇は有無を言わせず右スミへグサリ。東京朝鮮4人目は途中出場のパク・リョンイ。ファーストタッチにもかかわらず、GKよりわずかに外側の左スミギリギリに成功させる強心臓を披露。外せば終わりの早実4人目は中盤アンカーの土居隆馬(3年・星稜中)。右スミへ蹴り込んだキックはゴールネットへ。スコアは4-3。次は運命の5人目。
東京朝鮮の人垣からキッカーとして出てきたのは「『これを絶対決めて次に繋げよう』と考えていました」というハン・ヨンギ。狙ったのは左上。右足から放たれたボールが、豪快に揺らしたゴールネット。「選手を信じていましたが、良く入れてくれました。練習中より全然シュートが上手でした」と姜監督も笑った東京朝鮮が激闘をPK戦で制し、ベスト8へ駒を進める結果となりました。


殊勲の同点弾を叩き出したシン・ジュンボムに対して、「ずっとケガで出遅れていた子なので、Tリーグの試合もほとんど出ていないんですよ」と話したのは姜監督。本人も「ケガもありますし、僕の実力不足もあって、あまり出る機会は少なかったです」とそのことは首肯したものの、続けて「試合に出て活躍するのが僕の目標だったので、『メンバーどまりではダメだ』と思って、『ちょっとでも試合に出られるように頑張ろう』と思って練習していました」とのこと。その中で「監督も『オマエはロングスローが武器だからもっと磨け』と言われて、『それが自分の武器なんだな』と思ったので、練習をいっぱいしました」というロングスローを磨き続けたことがこの日の途中出場に繋がり、結果的に公式戦初ゴールを呼び込ぶ格好に。ハン・ヨンギもゴールを振り返って、「本当に凄かったですね」と笑顔で語っていました。次は西が丘を懸けたクォーターファイナル。苦しいゲームを伏兵の活躍でモノにした東京朝鮮の勢いは果たしてどこまで。         土屋

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