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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2016年06月13日

インターハイ東京準々決勝 東京朝鮮×成立学園@清瀬内山

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0612kiyose2.JPGお互いに日頃から交流のあるチーム同士がセミファイナルへの切符を懸けて争う"十条ダービー"。東京朝鮮と成立学園の対峙は引き続き清瀬内山グラウンドです。
T2リーグでは9試合を消化して、8勝1分けの無敗と首位を独走中。関東大会予選は創価、都立日野台を退けて挑んだ関東第一戦にこそ、新チーム発足後の都内における公式戦での初黒星を喫しましたが、このインターハイ予選も保善とのPK戦を制してブロックを抜け出し、先週の1回戦では私立武蔵の健闘に苦しめられながらも、リャン・ヒョンジュ(3年・大宮アルディージャJY)のドッピエッタもあって、きっちりこのクォーターファイナルまで勝ち上がってきた東京朝鮮。「あと2つなので、去年のリベンジで必ず全国に行けるようにしたいですね」とは高隆志監督。2年連続のセミファイナルを戦うための80分間に向かいます。
T1リーグもここ3試合は無敗。関東大会予選はかえつ有明や堀越といった曲者を下し、ある程度守備を重視しながら臨んだ関東第一戦も、高橋恒樹(3年・成立ゼブラFC)と竹本大輝(3年・成立ゼブラFC)の2ゴールできっちり勝ち切るなど、例年以上の勝負強さを身に付けつつある成立学園。先週の関東大会予選は初戦で矢板中央に屈したものの、「勝って勢いを付けて今日を迎えたかったですけど、関東大会で負けていたことも良かったです。今日は締められるというか、調子に乗っていたらやられるかもしれないので」とは宮内聡監督。久々の敗戦を教訓にして、今大会の初戦となる一戦に挑みます。会場には1試合目同様に両チームの応援団を含めた大観衆が。注目の好カードは成立のキックオフでスタートしました。


立ち上がりからペースを掴んだのは東京朝鮮。「あまりシュートも打てなくて、相手の方がシュートが多くてうまく行かなかったですし、右サイドから攻められて合わない所がありました」と成立の最前線に入った森田裕也(3年・愛媛FC新居浜JY)も話したように、左へ流れがちなリャン・ヒョンジュとサイドハーフのチョン・リョンホ(3年・埼玉朝鮮中)を軸に攻勢へ。成立も「相手のCBの2人を動かさないと、あそこにまともに行っても全然勝てないので、サイドにスペースを創って、サイドでポイントを創ろうということを意図的にやりました。初めは風下だったんだけど、いくつか繋いでスペースができたらそこにボールを送ろうと。高い位置でサッカーをやろうという狙い」(宮内監督)を打ち出す中、東京朝鮮がゲームリズムを握ります。
22分は東京朝鮮。レフティのムン・インジュ(2年・埼玉朝鮮中)が短く付け、チョン・リョンホが思い切って枠へ飛ばしたミドルは、重い球質も成立のGK園田悠太(3年・横浜F・マリノスJY追浜)が冷静なパンチングで対応。25分には成立も大野泰成(3年・ゼブラFC)が左へ振り分け、西羽開(3年・鹿島アントラーズつくばJY)が外へ流したボールを、高橋がクロスへ変えるもゴールキックへ。28分には東京朝鮮も左CKをリャン・ヒョンジュが蹴り込むも、中央でオフェンスファウルの判定。30分には成立も、再び大野と高橋の連携で奪った左CKを鈴木龍之介(3年・成立ゼブラFC)が蹴り入れるも、東京朝鮮の左サイドバックを任されたリ・ヨンギ(3年・東京朝鮮中)が大きくクリア。東京朝鮮もキム・テウ(3年・西東京朝鮮第一中)とキム・セヨン(3年・東京朝鮮中)で組んだCBコンビの集中力が高く、お互いになかなフィニッシュを取り切れません。
それでも徐々にサイドを攻略し始めた成立に勢いが。33分は右サイドで萩原幹太(3年・成立ゼブラFC)が起点となり、2年生唯一のスタメン起用となったボランチの鈴木皓(2年・柏レイソルU-15)が裏へ落とすと、3列目から飛び出した大野はわずかに届かなかったものの好トライ。37分にも鈴木龍之介の突破で獲得した左FKを大野が放り込み、ファーへ突っ込んだ長草優之(3年・鹿島アントラーズつくばJY)のヘディングは、東京朝鮮のGKチュウ・サンホン(2年・神奈川朝鮮中)が丁寧にキャッチ。40分には東京朝鮮もカン・ガンホン(3年・東京朝鮮中)が時間を創り、チョン・リョンホが上げたクロスはリャン・ヒョンジュのハンドという判定でチャンス逸。「サイドは崩していたんですけど、中の可能性はちょっと低かったですかね」と宮内監督。ボールこそ成立が握っていた前半は、それでもスコアレスでハーフタイムに入りました。


後半はスタートから東京朝鮮に勢いが。42分に後方からキム・テウが大きく蹴り込んだFKはDFのクリアに遭いましたが、直後にもカン・ガンホンのパスからリャン・ヒョンジュがエリア内へ切れ込むも、ここは成立のセンターバック長草が完璧なタックルで回避。43分にもチョン・リョンホ、カン・ガンホンと繋ぎ、ムン・インジュが縦に付けたボールがこぼれると、ピョン・ヨンジュ(3年・西東京朝鮮第一中)のミドルは枠の右へ外れましたが、惜しいシーンを続けて創り出します。
ところが、先にスコアを動かしたのは以前も「なぜかアイツは大事な試合で点を取るんですよ」と宮内監督も首を捻りながら笑っていた11番。43分に右寄りでボールを持った大野がDFラインの裏へ柔らかいパスを落とすと、斜めに走り込んできた高橋はフリーで抜け出し、そのままGKとの1対1も冷静に右スミのゴールネットへボールを流し込みます。「恒樹は斜めに走ってくれるので、練習からああいう抜け出しをやっていて狙い通りという感じ」と大野も話し、高監督も「関東予選の関東第一戦でもあの形は見ていたのに悔しいですね」と言及した、高橋のダイアゴナルランが生み出した貴重な先制点。成立が1点のリードを手にしました。
追加点はわずかに1分後。中盤でボランチの鈴木皓が前を向いたタイミングで、「相手の集中がちょっと切れていて、フリーになったのでヒロに要求した」森田はその鈴木皓の素晴らしいパスを受けると、対峙したマーカーを切り返しで外しながらGKを冷静に見極め、左スミのゴールネットへ鮮やかにグサリ。「あのシュートの時は『決められる』と思っていました。余裕がありました」と語った"土佐っ子"のファインゴール。両者の点差は一瞬で2点に広がります。
あっという間に小さくないビハインドを突き付けられた東京朝鮮も、その直後に決定的なシーン。成立のパスミスを見逃さなかったリャン・ヒョンジュはエリア内でフリーになり、慎重にGKをかわそうとフェイントを仕掛けましたが、落ち着いて動きを見極めた園田はボールに飛び付いてドリブルを強奪。この決定機逸を見て、高監督は48分に2枚替え。ピョン・ヨンジュとカン・ガンホンを下げて、プ・チウ(2年・東京朝鮮第五中)とリ・トンソン(3年・東京朝鮮第五中)を投入し、前線はリャン・ヒョンジュとクォン・ジョンソク(3年・山梨学院高)の2トップにシフトし、右サイドハーフにプ・チウ、ボランチにリ・トンソンを配して整える反撃態勢。
輝いたのは「今出ている選手の中で点取り屋はアイツ」と宮内監督も認める14番のストライカー。59分にバックパスを受けたGKへ猛然と突っ掛けた森田は、そのままの勢いでボールを強奪。無人となったゴールへボールを丁寧に流し込みます。「僕は高校2年の時にセカンドチームだったんですけど、森岡(幸太)コーチに『前から追え』ってずっと言われていたので、それが生かされました」と"森岡イズム"を強調した森田はこれで見事なドッピエッタ。大きな大きな3点目が成立に記録されました。
厳しい状況に追い込まれた東京朝鮮。62分に右からムン・インジュが蹴り込んだCKにクォン・ジョンソクが飛び込むも、園田が的確なパンチングで阻止。65分には左サイドバックのリ・ヨンギとパク・チャンフン(3年・第一学院高)をそのまま入れ替え、サイドの攻守にテコ入れを図りますが、66分に右からキム・ソンホ(3年・東京朝鮮第五中)が蹴り込んだFKを、ファーでキム・テウが折り返すも森田が懸命にクリア。70分にもキム・ソンホが右から好クロスを放り込むも、キム・テウのヘディングは枠の左へ。大野も「左利きでロングフィードも上手くて、自分が低い位置まで落ちずにアイツにサイドチェンジとか任せられるので、もう1個前でやれるかなと思います」とその存在に言及した小山珠里(3年・成立ゼブラFC)と長草のCBコンビも安定感を誇り続ける成立ディフェンスをどうしても崩し切れません。
70分に足の攣った高橋と鈴木亮祐(3年・AZ'86東京青梅)をスイッチした成立は、71分にチャンス。森田が裏へ通したボールに鈴木龍之介が走り込むも、ここはチュウ・サンホンが飛び出して果敢にキャッチ。73分にも大野が右へ振り分け、萩原を経由して中能健人(3年・成立ゼブラFC)が上げたクロスは、中央に入った鈴木亮祐のオフフェンスファウル。75分には敵将の高監督も「あの子は本当に上手かったですね」と称賛した大野に替えて、町田ジェフリー(3年・浦和レッズJY)を最前線に解き放ち、鈴木龍之介をボランチに移して取り掛かるゲームクローズ。
何とか1点ずつ返していきたい東京朝鮮でしたが、掲示されたアディショナルタイムの3分間でも成立ゴールに迫るシーンは創り切れず、清瀬内山の空に吸い込まれたファイナルホイッスル。「一番大事なのはこの時間に何をやろうとしているのかというのを攻撃も守備も合わせると。そこが今日は良かったかなと思います」と宮内監督も話した成立が3ゴールを奪い切り、来週のセミファイナルへと駒を進める結果となりました。


「今日が一番嫌というか、シード権をもらっているとほとんど勝った試しがないので」と冗談めかして苦笑いしたのは宮内監督ですが、成立が関東大会での敗戦を受けての難しいゲームにきっちり勝ち切ってみせました。今年のチームの特徴を問われ、「練習からみんなバチバチで、戦うという所をベースにやっているので、監督もそれは常に言っていますし、みんな戦う意識が練習から出ているので、それが試合に出始めているのかなと思います。自分たちの代は全員1年生の頃から『戦うこと』をベースにしてやってきたので、それを3年間継続してやっていきたいです」と大野が話せば、「最近練習も凄く激しくなってきていて、全員の意識も高くなってきたと思います」と森田もチームの現状に手応えを。その森田のチーム3点目が示すように、泥臭さや戦う意識も確実に向上しつつあるゼブラ軍団が狙う2年ぶりの全国まではあと1勝です。     土屋

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