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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
ディフェンディングチャンピオンと2年前の関西王者が激突する注目の好カード。阪南大と大阪体育大の一戦は引き続きヤンマーフィールド長居です。
シーズンを通じてわずかに1敗。1試合平均で4ゴール近い数字を叩き出すなど、まさに完全優勝と表現しても差し支えないような結果で関西を制した昨シーズンの阪南大。迎えた今シーズンも前期は開幕6連勝と最高のスタートを切りましたが、ゴールデンウイーク以降はやや取りこぼしが目立ち始め、勝ち点を伸ばし切れず。後期も第3節で関西大に敗れ、前節も「裏を突くという所で京産大にまんまとやられた」と須佐徹太郎監督も話した通り、京都産業大に0-1で手痛い敗戦。現在首位を走る関西学院大とのポイント差は6。これ以上星を落とす訳には行きません。
一昨シーズンは24年ぶりに関西1部で優勝を果たすと、勢いそのままに臨んだインカレでも28年ぶりに日本一へ輝くなど、古豪復活を見事に遂げている大阪体育大。リーグ戦4位という前年の結果を受けて挑んでいる今シーズンは、前期こそ3位という好位置に付けていたものの、後期に入ってからは1勝2分け3敗と黒星が先行しており、前節の立命館大戦は5失点を奪われるショッキングな完敗を経験。インカレ出場権獲得を考えると、この90分間は浮上のキッカケにしたいキーゲームです。会場には1試合目を上回る観衆の数が。強豪同士の対峙は阪南大のキックオフでスタートしました。
スコアが動いたのは開始わずかに1分。外山凌(3年・前橋育英)が外に付けたボールを、開いた山口一真(2年・山梨学院大附属)は左からクロス。ここに飛び込んだ前田央樹(3年・アビスパ福岡U-18)がDFともつれながら足を伸ばすと、ボールはゴールネットへ転がり込みます。いきなりの先制劇におそらくはまだ席に着いていなかった観衆の方も。あっという間に阪南大が1点のリードを手にしました。
5分にも阪南大に決定機。中央でボールを持ったキャプテンの松下佳貴(4年・松山工業)は、「あんなパスなかなか出せないでしょ」と須佐監督も驚く完璧なスルーパスをグサリ。まったくのフリーで抜け出した前田の1対1は、大体大のGK本田渉(2年・アルビレックス新潟U-18)がファインセーブで凌ぎましたが、既に入団が内定している神戸で特別指定選手としてJ1でのプレーを経験している松下が格の違いを披露。7分にも松下の左CKへ前田が合わせたヘディングはクロスバーの上に外れ、11分に山口の左クロスへニアに突っ込んだ八久保颯(4年・秀岳館)のヘディングは枠の左へ外れたものの、「誰かを使ってワンタッチで3人目が飛び出すようなリズム変化が全然起こらなかった」(須佐監督)前節からの違いを鮮明に打ち出します。
さて、なかなか攻撃の形を創り切れない大体大。12分には後方からのフィードを収めた池上丈二(3年・青森山田)が左足で叩いたチームファーストシュートは、寄せたDFがきっちりブロック。直後に池上が右から蹴ったCKもDFのクリアに遭うと、14分には小川明(1年・履正社)の左クロスが中央にこぼれ、思い切って狙った澤上竜二(4年・飛龍)のミドルは大きくクロスバーの上へ。変わらないゲームリズム。
16分の得点は同点弾ではなく追加点。外山が左サイドへスルーパスを通すと、上がってきたSBの康翔貴(3年・大阪朝鮮)はマイナスへ正確なクロス。待っていた山口が豪快に叩き込んでスコアは2-0に。さらに18分にも左サイドから外山が低いクロスを入れると、GKの前に潜った前田のワンタッチシュートがゴールに吸い込まれ、スコアは3-0に変わります。「最近クロスが単調になっていたのを修正したので、2点目は良かったですね。ニアで合わせた3点目も、単純なニアじゃなくてGKの前へ行けと言っていましたから」と指揮官も納得のクロスから圧巻の連続ゴール。点差が開きます。
止まらない"阪南乃風"。21分に右SBの田渕大貴(3年・大阪桐蔭)が中央へ巧みにボールを入れると、受けた山口は右へラストパス。バウンドを合わせた前田のダイレクトボレーは、ゴール左スミへそのまま飛び込みます。前田は前半だけで早くもハットトリック達成。「『とにかく背後を取ろう』と。『背後を取らない限りシュートは打てない。それをしっかりやろうぜ』というのが前半には上手く出ましたね」と須佐監督。あっという間に両者の点差は4点まで広がりました。
25分も阪南大。相手のミスパスを高い位置で奪った前田は、そのまま自ら左足でシュートを放つも、ここは本田が何とかキャッチ。同じく25分も阪南大。左から山口が蹴り込んだCKは、田渕が粘るもシュートには持ち込めず。28分も阪南大。再び左から山口がCKを入れると、飛び込んだ前田の強烈なヘディングはクロスバーにハードヒット。阪南が漂わせる5点目の香り。
大体大も30分過ぎからはセットプレーで見い出したい活路。31分に池上が蹴った右CKへ、CBを務める菊池流帆(1年・青森山田)が合わせたヘディングはクロスバーの上へ。33分にも池上の右CKから、こぼれを木田直樹(4年・奈良育英)が狙うもDFが体でブロック。そのCKをここも池上が蹴り込み、ニアへ走った菊池のヘディングはここもクロスバーの上へ。35分には右サイドでボールを受けた澤上が、カットインしながら枠へ収めたミドルは阪南大のGK大西将(4年・阪南大学高)ががっちりキャッチ。「前半の途中からペースダウンしてしまった」(須佐監督)阪南相手に、ようやく手数は出てきたものの遠いゴール。
36分に飛び出したのはまたもレフティのアイデア。ややピッチ右寄りでドリブルを始めた松下は、突如として左足アウトで最高のスルーパスをDFラインの裏へ。抜け出した前田のシュートはゴール左へ外れて5点目とは行かなかったものの、「トレスボランチ気味になって攻撃に出て来なかった」(須佐監督)相手のプレスが甘かったこともあって、松下が技術の高さを存分に見せ付けます。44分に大体大が掴んだFKのチャンスも、ゴールまで約25mの距離から澤上が狙ったシュートはカベがブロック。阪南が大量4点のリードを手にして、最初の45分間は終了しました。
4点を追い掛ける展開を強いられた大体大は後半スタートから交替を。木田に替えて中村優仁(4年・流通経済大柏)を送り込み、攻撃の推進力向上に着手すると、開始早々の46分にいきなり決定機。池上の右FKをファーに回った久保田駿斗(4年・長崎日大)が枠へ収め、カバーに入ったDFにライン上で掻き出されるも、このゲーム初めての決定的なシーンを創出。47分にも池上の右CKから、中盤アンカーの秋山拓也(3年・愛産大三河)が当てたヘディングは枠の左へ。上々の立ち上がりを披露します。
49分も大体大。秋山が浮き球をうまく抑え、ミドルレンジから枠に飛ばしたシュートは大西がファインセーブで阻止。直後の左CKも池上が蹴ると、澤上のヘディングはゴール右へ。52分も大体大の決定機。エリア内へ侵入した澤上のシュートはDFに阻まれるも、こぼれを山田貴仁(2年・帝京長岡)が落とし、フリーで打った池上のシュートはクロスバーの上へ外れ、頭を抱えるピッチ内とベンチ。53分にも羽田昇平(2年・金光大阪)のフィードに山田が競り勝ち、池上が放ったシュートは大西が何とかキャッチ。続く大体大のラッシュ。
ところが、輝いたのはまたも阪南の左。59分に左サイドでボールを引き出した外山は、中央をしっかり見ながらGKとDFラインの間へ絶妙のグラウンダークロス。ここへフリーで走り込んだ前田は難なくボールをゴールネットへ送り届けます。ここまでも3ゴールを生み出してきた阪南の左がまたも躍動。前田はハットトリックプラスワンの大活躍。スコアボードに"5"という数字が踊りました。
何とか1点を返したい大体大でしたが、その前に立ちはだかるのは守護神の大西に、指揮官も「だいぶ1つの軸になってくれている」と認める大野佑哉(1年・山梨学院大附属)と甲斐健太郎(3年・立正大淞南)のCBコンビ。60分には山田のダイレクトパスで中村が1対1を迎えるも、大西が気迫のビッグセーブで仁王立ち。その右CKを池上が放り込み、こぼれを再度池上が中央へ送ると、久保田が左足で打ったシュートは枠の右へ。鍵を掛け続ける阪南の堅牢。
65分の歓喜も左サイドから。外山のクロスを上がってきた脇坂泰斗(2年・川崎フロンターレU-18)が繋ぎ、飛び込んだ康を経由したボールに反応したのは八久保。右スミへ流し込んだボールは、ゆっくりとゴールネットを揺らします。「アイツがやっと治ってきて、あそこで力負けしないから大きいですよね」と須佐監督も話した康が、エリア内で流れに絡んで奪った追加点。6得点は今シーズンのリーグ戦最多得点。阪南強し。
相次いで両者が切った交替カード。66分は大体大。少し傷んだ小川と井上和巳(4年・大体大浪商)をそのままスイッチ。67分は阪南大。4得点に絡んだ外山を下げて、松尾雄斗(2年・コンサドーレ札幌U-18)をピッチヘ。68分に澤上が強引なミドルを枠の上へ大きく外すと、73分に阪南2人目の交替は脇坂に替えて、後期はこれが初出場となる帰ってきた重廣卓也(2年・広島皆実)。74分には松尾が、76分には康がそれぞれ本田にキャッチを強いるシュートを放つなど、交替カードもどちらかと言えば阪南サイドがチームへもたらす躍動感。
76分に大体大が切った最後のカード。7本のCKを1人で蹴るなど奮闘した池上を下げて、ルーキーのドリブラー末吉塁(1年・初芝橋本)をピッチヘ。すると、81分には山田賢汰(4年・立正大淞南)の左CKがクリアされたボールに末吉が食らい付き、マーカーを巧みに2人かわして外へ付けるも、山田が上げたボールは大西が判断良くキャッチ。逆に83分にこちらも殊勲の前田を下げて、草野侑己(1年・JFAアカデミー福島)をピッチヘ解き放った阪南は直後の83分、大野が頭で跳ね返したボールから八久保がスルーパスを繰り出し、松尾のトラップは流れてシュートは打てませんでしたが、交替した選手も積極的なアピールの姿勢を。
85分に大体大が掴んだこの日9本目のCKも、左から山田が蹴ったボールは甲斐が大きくクリア。86分は阪南大。田渕がSBとは思えない見事なスルーパスを通し、右からカットインしながら草野が狙ったシュートは本田が何とかファインセーブ。88分も阪南大。山口のパスをルーレット気味に足裏で回転しながら前に持ち出した草野は、そのままシュートを狙うとわずかに枠の右へ外れたものの、ルーキーが魅せたインパクト抜群のフィニッシュ。ファイナルスコアは6-0。「初めの電光石火だけ。あまり誉められた内容ではないし、あと最低でも4点は取らないと」と須佐監督はやや不満気な表情で語りましたが、終わってみれば阪南大が6-0というスペシャルなスコアで、貴重な勝ち点3を積み上げる結果となりました。
京産大に敗れたことで「『自分たちで判断してやっていかなくてはいけない』と。『俺らがガンガン言ってやっていたら遅れるし、楽しくないだろ』と、色々なことを全て変えたんですよ」と須佐監督が話したように、もう一度チームを見つめ直した阪南大。「月曜日中に映像の分析をみんなのスマホに送って、スタッフも『月曜日中に色々なことを共有しよう』と休みのシフトを変えて、『それを見て火曜日にミーティングしよう』と。練習計画も何となく俺が決めていたのも、ヘッドコーチに『責任を持て』と言って、みんなが働いてエネルギーが出るように変えたんですよ。"須佐個人商店"から(笑)」と指揮官は笑いましたが、その成果がこの日の6ゴールという大勝劇に。シーズン終盤に来て、再び阪南大には強力なスイッチが入ったようです。とはいえ、この勝利にも「前半の途中からペースダウンしたのがダメですよ」とまだまだ須佐監督は満足の行かない様子。リーグ終盤、そして年末のインカレに向けて、阪南大のこれからが非常に楽しみです。 土屋
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