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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2015年05月25日

インターハイ東京1次予選D決勝 東京朝鮮×多摩大目黒@駒沢第2

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0524koma2-2.jpg第2試合は赤い名門と青い新鋭の激突。ユニフォームカラーと同様にチームカラーもまったく異なる東京朝鮮と多摩大目黒の対決は引き続き駒沢第2です。
例年のように都内でも有数のタレントを有し、あと一歩という所までは勝ち上がるものの、なかなか東京突破という壁を打ち破れない東京朝鮮。今シーズンも関東大会予選は日本学園と撃ち合ったものの2-4というスコアで敗れ、初戦敗退を余儀なくされましたが、今大会は初戦で都立美原を退けると、再びぶつかった日本学園に3-0で完勝を収めて1次予選ファイナルへ。「うまさは昔の先輩よりはないですが、年々良い伝統というかチームワークは増していて、80人が団結しているのかなと思います」とは高隆志監督。部員全員の一体感を武器に大事な一戦へ挑みます。
昨シーズンは各校の監督からも一目置かれる個々のタレントと確かなチーム力を有し、リーグ戦でもT1昇格を果たすなど、都内を沸かせる主役の一端を担った多摩大目黒。今シーズンはJリーグでのプレー経験を持つ塩川岳人監督の退任を受け、中等部を都内屈指の強豪に育て上げた遠藤雅貴監督が就任。リーグ戦では厳しい時期が続いていますが、関東大会予選では昨年の選手権予選を制した都立三鷹に競り勝ち、今大会も初戦は都立松が谷を3-1という快勝で下して、2年連続の2次トーナメント進出まであと1勝と迫っています。12時キックオフの駒沢はもはや真夏の気配。照り付ける陽射しの中、東京朝鮮のキックオフでゲームはスタートしました。


いきなりの決定機は多摩大目黒。6分、2トップの一角に入った鰺坂賢(2年・世田谷FC)がラインの裏に抜け出し独走。GKとの1対1からフリーで放ったシュートは右のポストを叩き、先制とはいきませんでしたが高監督と東京朝鮮のキャプテンを託されたキム・ファンジ(3年・東京朝鮮第一中)が「ラッキーでした」と声を揃えたシーンで好カードは幕を開けます。
7分は東京朝鮮。左SBのパク・ヒャンジェ(3年・東京朝鮮中)がクロスを蹴り込み、リ・フィドン(3年・埼玉朝鮮中)が抜け出し掛けるも、ここは多摩目の左SB下茂宏充(3年・多摩大目黒中)が素晴らしいカバーで回避。9分は多摩目。右から1年生の中村亮太(1年・多摩大目黒中)が蹴ったCKはDFがクリア。12分は東京朝鮮。リ・フィドンのパスを右サイドで受けたリャン・ヒョンジュ(2年・大宮アルディージャJY)が、カットインしながら枠へ収めたシュートは多摩目のGK大野隆滉(3年・FC多摩)がキャッチ。お互いに繰り出す手数。上がっていくゲームテンポ。
徐々に見えてきたのはお互いの異なるスタイル。東京朝鮮は早めに縦を選択して、多摩目はコンビネーションを多用して、それぞれアタックを展開。その中でも創り合った決定的なシーン。19分は東京朝鮮。エリア内に潜ったリャン・ヒョンジュが粘って粘って打ち切ったシュートは、大野が懸命に弾き出してCBの宮崎隼(3年・港北FC)がクリア。22分も東京朝鮮。リ・フィドンのスルーパスに抜け出したリャン・ヒョンジュがゴールを陥れるも、ここはオフサイドの判定でノーゴール。25分は多摩目。ボランチの片岡大輝(3年・多摩大目黒中)を起点にキャプテンの中島慶之(3年・FCトリプレッタJY)が高速パスを打ち込むと、完璧なコントロールで反転した中村のシュートは枠の右へ。少しずつゴールの予感が両者に漂い始めます。
ただ、30分以降は持ち味とも言うべき縦への推進力を生かした東京朝鮮に傾いた流れ。30分にキム・ソンホ(2年・東京朝鮮第五中)のドリブルで獲得した、ゴールまで約30mのFKはリ・キョンチョル(3年・東京朝鮮中)が枠の上へ外しましたが、32分には左サイドを1人で運んだカン・ドゥホ(3年・東京朝鮮中)が強烈な枠内シュートを蹴り込み、大野が何とかファインセーブで回避。36分にもカン・ドゥホが右へサイドを変えると、キム・スンミョン(3年・東京朝鮮第五中)は斜めのパスを送り、DFと入れ替わって飛び出したキム・ソンホのシュートは、ここも大野がファインセーブで掻き出しましたが、ゲームリズムは完全に赤へ。
38分も東京朝鮮。リャン・ヒョンジュが右サイドをえぐり切り、マイナスに折り返したボールは良く戻った中島が間一髪でクリア。直後の右CKをリ・キョンチョルが蹴り込むと、GKの前で飛んだペク・スンホ(3年・西東京朝鮮第一中)のヘディングはクロスバーの上へ。40分も東京朝鮮。キム・ソンホが左へ振り分け、縦に力強く持ち出したカン・ドゥホのシュートはわずかに枠の右へ。40+1分には多摩目も右サイドからレフティの福本純也(3年・多摩大目黒中)がFKを直接狙うも、ボールはクロスバーの上へ。「どこに出しても恥ずかしくないボランチ」と指揮官も太鼓判を押すリ・キョンチョルとキム・ソンホがゲームをコントロールし、カン・ドゥホの推進力で縦へのパワーも加わった東京朝鮮が押し気味に進めた前半は、スコアレスのままでハーフタイムに入りました。


後半のファーストシュートは多摩目。42分、福本の左FKを東京朝鮮のCBキム・テウ(2年・西東京朝鮮第一中)がクリアすると、中村がダイレクトで狙ったボレーはクロスバーを越えましたが、1年生とは思えない20番の積極性でスタートしたセカンドハーフ。46分には東京朝鮮もキム・ソンホのパスから、右サイドへ持ち出したリ・フィドンのシュートはサイドネットの外側へグサリ。48分には多摩目に決定的なチャンス。福本のパスを中村が右へ捌き、ヒールでの巧みな切り返しでマーカーを剥がした鰺坂の左足シュートはクロスバーにハードヒット。49分にも中村が右サイドへFKを送り、まったくのフリーで受けた宮崎のクロスは、「根性で食らい付いていくしかないと思っている」と語るキム・ファンジが何とかクリアしたものの、後半は多摩目のチャンスが続きます。
元々「前半は0-0で後半勝負というプラン」(高監督)を考えていた東京朝鮮も、この序盤の苦しい時間帯をきっちり凌ぐと、以降は少しずつ奪い返したゲームリズム。49分にキム・ソンホとの連携で抜け出したリャン・ヒョンジュのトーキックシュートはクロスバーの上へ。51分にはパク・ヒャンジェと入れ替えたチェ・ギョンオ(3年・東京朝鮮第一中)を右SHへ投入し、その位置にいたキム・スンミョンを左SBへスライドさせて、サイドの顔触れに変化を。53分にはそのキム・スンミョンが左へ流し、パク・ヒョンジェのカットインシュートは大野にキャッチされるも、続くフィニッシュへの意欲。青き新鋭を飲み込みつつある伝統の赤。
55分も東京朝鮮。キム・ソンホの左CKを叩いたリャン・ヒョンジュのヘディングはクロスバーの上へ。57分も東京朝鮮。キム・ソンホの左CKをニアで合わせたキム・ファンジのヘディングは、マークに付いていた中島がブロックで阻み、赤き主将は全身で悔しさを表現。58分も東京朝鮮。今度は右からリ・キョンチョルがCKを蹴り入れ、キム・ファンジのヘディングは枠を襲うも、GKとDFの人垣が何とか弾いてクリア。59分も東京朝鮮。リャン・ヒョンジュが右へ送り、チェ・ギョンオのシュートは大野がセーブ。リバウンドに詰めたカン・ドゥホのシュートはヒットしませんでしたが、セットプレーでジワジワ押し込む赤の圧力。
決まり手はやはりセットプレー。64分、左サイドで獲得したこの日8本目のCKをキム・ソンホが蹴ると、一旦クリアされたボールを拾ったキム・ソンホはすかさず右足で中へ。ファーサイドで待っていたリャン・ヒョンジュが頭で叩き付けたボールは、意志を持ったかのようにバウンドしながらゴール左スミへ弾み込みます。「我慢していたらキョンチョルとヒョンジュのどっちかが入れてくれるチーム」という高監督が評した後者の"ヒョンジュ"が奪った貴重な先制弾。残り15分で東京朝鮮が1点のリードを手にしました。
ビハインドを追い掛ける展開となった多摩目は65分に1枚目のカードを投入。前線で奮闘した鰺坂に替えて、レフティの古橋謙介(2年・多摩大目黒中)を送り込むと、その古橋はDFにクリアこそされたものの、いきなり鋭い右CKを披露。68分にも下茂のスルーパスからスルーを挟み、受けた福本が右カットインから放ったシュートは枠を越えるも、らしいコンビネーションから好トライ。70分にも決定機。福本の左FKがファーまで届き、フリーで当てた宮崎のシュートは、しかしゴール左へ。同点までは至りません。
突き放したい東京朝鮮は73分、リ・キョンチョルが蹴り込んだ左FKをGKがファンブルしてしまい、数選手が殺到するもDFが何とかクリア。75分にも右サイドをゴリゴリ運んだチェ・ギョンオが折り返し、キム・ソンホのスルーに反応したリ・フィドンの枠内シュートは大野ががっちりキャッチ。変わらない点差。76分には多摩目も片岡と茂木怜央(1年・大豆戸FC)をピッチへ解き放ち、いよいよゲームはラスト5分とアディショナルタイムへ。
76分は多摩目。加藤天馬(3年・多摩大目黒中)の右ロングスローはDFがクリア。80分も多摩目。古橋の左FKもDFがクリア。直後の右CKも古橋が好キックを蹴り込み、CBを務め上げた森井琉斗(1年・多摩大目黒中)のヘディングはゴール前の混戦を生み出すも、シュートには至らず。「1つ1つ盛り上げたい時に盛り上がってくれる凄い良いヤツら」とキム・ファンジも信頼を寄せる応援団に護られ、必死に耐える東京朝鮮。
80分も多摩目。右から古橋が丁寧に蹴ったCKもきっちりDFが跳ね返すと、これがこのゲームのラストチャンス。「試合に出ている3年、ベンチにいる3年、ベンチに入れなくて応援してくれている3年、みんながそのチームを引っ張っていこうと、全国に行きたいという気持ちが1つになったから、今日は3年の強い気持ちが掴んだ勝利だと思います」と胸を張ったのはキム・ファンジ。1点を守り抜いた東京朝鮮が3年ぶりにベスト8への挑戦権を獲得する結果となりました。


「今年はキャプテンの精神的な面が凄くあるかなと思います。信頼できるキャプテンで周りを引っ張れますし、チームメイトから信頼を受けています」と高監督が話すキム・ファンジを中心に、「僕は27年指導者をやっていますけど、レギュラーじゃない子も本当に心から試合を応援しているというのは、今までになかったことだと思います」と指揮官に言わしめる団結力をチームのベースに置いている東京朝鮮。高監督が「色々な面で友達想いで、Bチームの試合があれば、必ずAチームの練習が終わったら遠くの会場でも見に行って、帰りはBチームの選手と一緒にゴハンを食べるようなキャプテンなので、あんなキャプテンは見たことがない」と話していたことを伝えると、キム・ファンジは「いつも公式戦はこうやって声を出して応援してくれているので、メンバー外のヤツらの試合も、自分が見に行って応援するのが当たり前だと思っています」とキッパリ。「僕の前であまりいいカッコしないのが良いですよね。生意気な態度をするんですよ。でも、裏では全然違うことができるので、新しいタイプのカッコいいヤツらです」と笑顔を見せた高監督。稀代のキャプテンを頂いた"カッコいいヤツら"の進撃は果たしてどこまで。      土屋

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