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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
在籍クラブの多様性では国内トップクラスのJ3もいよいよ開幕。中位からのステップアップを狙う相模原がJ-22をホームに迎える一戦は相模原ギオンスタジアムです。
J3初年度の成績は12チームの中で6位。黒星が白星を2つ上回り、失点が得点を4つ上回るなど、まさに中位という成績でシーズンを終えたSC相模原。新たに辛島啓珠監督を招聘した今シーズンは、「経験のある選手が入ってきた」と在籍4年目の曽我部慶太も話したように、森勇介、井上平、須藤右介などJリーグでの出場試合数が三桁に届く実力者を新たに加え、さらなる高みを目指す1年に。「当然J2ライセンスがなくても、結果は優勝を目指すという所に目標は置いています」と辛島監督。覚悟を持ってこの開幕戦に挑みます。
22歳以下の選手のみで構成される、リーグの新たな試みとして昨シーズンから創設されたJリーグ・アンダー22選抜。各クラブの将来を担うような選手が毎週末ごとに集結するチームは、急造集団ではあるものの「J3のタフな試合の中で若い選手は本当に経験を積んでいってもらって、成長に繋げていってもらいたいと思います」と高畠勉監督。その指揮官が「今回はAFCのU-23の1次予選に向かうメンバーにも来てもらいました」と話したように、水曜日に開催されたU-22日本代表の国際親善試合で共に4ゴールを叩き出した鈴木武蔵と中島翔哉が揃って登場。様々な"この先"を見据えた90分間に臨みます。スタジアムは冷たい風が吹く中でも、確かな春の訪れを感じさせるうららかな陽射しが。J3のオープニングマッチはJ-22のキックオフでスタートしました。
序盤からサポーターの声援をバックに手数を繰り出したのは相模原。5分に相手のミスを奪った井上のパスを、キャプテンマークを巻いた高原直泰がはたいたボールはDFにクリアされたものの、その左CKを曽我部が蹴ると、ニアへ走り込んだ高原のヘディングは薄く当たってゴール右へ。7分にも左へ開いた井上の左クロスに、樋口寛規が合わせたヘディングは枠の右へ外れましたが、「前半から結構前に行けていた」と辛島監督も認めたように、相模原の攻撃する時間が増えていきます。
一方のJ-22は1トップの鈴木にその下の石毛秀樹、左SHの中島と3人のU-17W杯経験者を配したアタッカー陣も、なかなか連携という面ではスムーズに行かず。9分には左SBの浦田尚樹がクロスを上げると、GKより一瞬早くボールをつついた鈴木もシュートは打てず。10分には中島が強引にミドルを放つも、ボールは枠の左へ。逆に15分には須藤の展開から森が右クロスを上げると、高原はシュートまで持ち込めなかったものの、続く相模原ペース。
21分は相模原に決定機。森とのワンツーから曽我部が抜け出し、上げたクロスを須藤が枠へ収めたボレーはJ-22のGK牲川歩見がファインセーブで応酬。その左CKを曽我部が蹴り込み、ニアへ突っ込んだ高原のダイビングヘッドは枠の左へ。ところが、ゲームリズムに変化の兆しが訪れたのは22分の決定機。田村亮介が右へ振り分け、石毛のクロスはピンポイントで中央へ。鈴木がヘディングで合わせたボールはクロスバーを直撃し、詰めた中島のシュートは相模原のGK佐藤健が何とかキャッチしたものの、U-17W杯経験者トリオのコンビネーションでJ-22があわやというシーンを創出します。
24分に2本続けて左から曽我部が蹴ったCKは中と合わず、右からやはり曽我部が入れたCKにフェア・モービーが飛び付くも、ボールはクロスバーの上へ外れると、ここからはJ-22にインプレーからの勢いが。27分に松原が上げたクロスに、鈴木が合わせたヘディングは佐藤がファインセーブで回避。29分にもボランチ起用となった野澤英之がスルーパスを狙い、懸命に走りながら足を伸ばした鈴木のシュートは、果敢に飛び出した佐藤がファインセーブ。「乗らせたら個人個人で上手い選手が多いので嫌だなと思った」と相手を評したのは井上。サイドアタックから窺うゴールへの道筋。
煌いたのは「ここ2年ケガしてほとんどプレーしていなくて、そんな僕を拾ってくれた場所なので、本当に優勝という形で恩返しできるように頑張っていきたい」と語るナンバー7。35分、縦パスを受けた高原が右へ振り分け、開いていたトロのクロスは正確に中へ。「あのもう少し前のシーンで同じような形があって、前で触られてしまったので、たぶん前に入ったら行けるんじゃないかなと思って」エリア内へ潜った井上はヘディングを枠内へ。GKも掻き出せず、ボールはゴールネットへ転がり込みます。「そんなに当たった感じがないので、『あんな弱くて入ったんだ』とちょっとビックリしましたけど(笑)」と笑った井上の移籍後初ゴールはいきなり開幕戦のファーストゴール。相模原がスコアを動かしました。
以降もリズムはホームチーム。38分に曽我部が右サイドをえぐって上げたクロスは、牲川がワンハンドで何とかセーブ。39分に曽我部の右CKがこぼれると、最後は樋口がミドルを枠の上へ。44分にJ-22も松原のパスを受けた中島が2回の切り返しで中央へ。田村のシュートはDFに当たって跳ね返り、拾った野澤のシュートはトロがきっちりブロック。「対戦相手を見た時は結構メンバーにJ1の子も入っているし(笑)、『どうなんだろうな』というか、やってみないとわからないなというのはありました」とは辛島監督ですが、全体的にゲームをコントロールする時間を長く創った相模原が1点のリードを手にして、最初の45分間は終了しました。
後半はスタートからJ-22に交替が。田村に替わって杉森考起がそのまま右SHの位置へ投入されると、48分に浦田が蹴った左CKを高原がクリアしたシーンを経て、J-22にアクシデント。ピッチに倒れた石毛がプレーを続けることが難しくなり、北川航也との交替を余儀なくされてしまいます。
一方、「後半も良い形で入れたんじゃないかなと思います」と辛島監督も話した相模原は続けてチャンスを。50分には左SBの大森啓生からパスを受けた高原が完璧な左クロスを送るも、樋口のダイレクトシュートはクロスバーの上へ。52分にも曽我部が左から右足でクロスを放り込み、最後は樋口が左スミを狙ったシュートは牲川にキャッチされましたが、前へのパワーで上回ったのは明らかにホームチーム。
56分の咆哮は緑のゴール裏。右サイドで獲得したFKのスポットには曽我部。「向こうもそこまでキツく付いてこないと思っていた」という8番のキックが中央に入ると、巨体を寝かせて飛び込んだのはCBの工藤祐生。豪快なダイビングヘッドで押し出されたボールはゴールネットへ突き刺さります。「蹴る前から結構自信があったし、あそこら辺に蹴れば中にはみんなヘディングか強い選手がいるので、僕のボール次第かなと思ってました」という曽我部のアシストで点差が広がりました。
「相手の残っている選手はやはり去年3敗しているという所で、思う所はあったんじゃないですか」と語った高畠監督は、59分に松原が右から左足で送ったクロスを、鈴木がバックヘッドでクロスバーの上へ外したシーンを見届け、2枚替えを決断。その松原と鈴木を下げて、坂井大将と柳下大樹を投入。柳下はそのまま2トップの一角に入り、坂井はボランチの位置へ。ボランチだった野澤がCBに1列下がり、CBの茂木力也が右SBにスライドして、残された30分へ向かいます。
64分は相模原。曽我部を起点に大森が左クロスを送り込むと、左足で叩いた高原のボレーはわずかにクロスバーの上へ外れたものの、ゴールを感じさせるフィニッシュにスタンドからも大きなどよめきが。65分も相模原。高原が左へ振り分け、井上のクロスは樋口が打ち切れずにこぼれるも、詰めた高原の目前で野澤がカバー。68分も相模原。高原のパスから井上が思い切って放ったミドルはわずかにクロスバーの上へ。「収まる所があって、ボールを持てる人がたくさんいる分、サイドから人がどんどん上がって来れる」と曽我部も話した通り、積極的なサイドアタックから狙うさらなる追加点。
72分にはJ-22にこの日最大のスムーズなアタックが。中島が右へ展開すると、上がってきた茂木はDFラインとGKの間に鋭いクロス。飛び込んだ北川がダイレクトで合わせたシュートはゴールネットを揺らし、完璧な形からの追撃弾かと思われましたが、判定は北川のオフサイド。1点の遠いJ-22。スコアボードの数字は変わりません。
辛島監督が動いたのは76分。先制弾の井上に替えて鈴木健太を左SHへ投入し、樋口が2トップの一角へ。77分に樋口が強烈なミドルを枠内へ打ち込み、牲川が何とかキャッチすると、79分にはトロへ激しいタックルを見舞った橋本拳人にイエローカードが。既に1枚もらっていた橋本は退場処分となり、J-22は残された10分あまりを10人で戦うことになります。
84分には樋口の左クロスから、トロがワンステップで放ったミドルはクロスバーに嫌われたものの、一連の流れに漂う確かな王国の香り。85分に曽我部とレオジーニョをスイッチすると、86分には樋口が右へ流し、運んだレオジーニョのクロスはわずかに樋口へ合いませんでしたが、最後まで攻撃の意欲を落とさなかった相模原に3度目の歓喜が。
86分、須藤が浮かせたボールをオーバーラップした大森が左から中へ送ると、ニアへ飛び込んだ樋口のヘディングはゴール右スミへ飛び込みます。「チームとしてサイドを上手く使うというのは、シーズンが始まってから言い続けてきたこと」と辛島監督も言及したサイドアタックの意識は1点目と3点目に成果として直結。高原と服部康平、フェア・モービーと小谷祐喜の交替でゲームクローズも遂行させた相模原が、3-0という最高のスコアで開幕戦の勝利を掴み取る結果となりました。
相模原の強さが際立つゲームでした。「前半ちょっと行けていた分、後半はもう少しダウンしてしまうかなというのがあった」とは辛島監督ですが、J-22が交替も含めて組織としてバラけてしまった部分を差し引いても、10対1というシュート数以上に後半は相手を圧倒。とりわけトロと須藤で組んだドイスボランチの安定感は、おそらくJ2クラスと言っても差し支えないレベル。森と樋口の右サイドコンビもJ3を席巻する可能性を十分秘めており、まだ1試合目とはいえリーグを掻き回す存在になっていきそうな90分間だったのは間違いありません。「シーズン36試合ある中で色々なことがあると思うんですけど、安定した戦い方をしたいなと思いますし、できるだけケガ人を出さすに良いコンディションで1試合1試合臨んで、ベストを尽くしてやっていきたいなと思います」と辛島監督。相模原に『世界でいちばん熱い夏』が訪れるのか、今後も注目していきたいと思います。 土屋
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