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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2015年03月04日

ACLグループステージ第2節 柏×ビン・ズオン

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0303hitachidai.jpg2年ぶりにアジアの激闘へその身を投じている太陽王。ベトナム王者を迎え入れて戦う大事な一戦の舞台は、言うまでもなく日立台です。
降り続く雨の中で延長までもつれ込んだチョンブリとのプレーオフを、終了間際のレアンドロ弾で辛うじて勝ち上がり、ACLのステージに再び帰ってきた柏。グループステージ初戦となった全北現代モータースとのアウェイゲームは、押し込まれる時間が長い中でも3バックを中心にしっかり守って勝ち点1を獲得。「この間の非常に劣勢の中で得た勝ち点1は、今日勝ち点3を取るか取らないかで大きく変わってきてしまう」とキャプテンの大谷秀和。黄色いサポーターの前で勝利のみが求められる90分間に挑みます。
対するは昨シーズンのベトナムリーグ、通称"Vリーグ"を堂々と制覇し、ACLへストレートインで参戦してきたビン・ズオン。ここ10年間で3度のリーグ優勝を果たすなど、その確かな実力へ加えて、豊富な資金力で有力選手を獲得することから付いた異名は"ベトナムのチェルシー"。初戦の山東魯能戦は激しい打ち合いの結果、2-3と惜しくも敗れたものの、その試合でゴールを挙げたU-17W杯優勝メンバーでもあるナイジェリア人ストライカーのガニユ・オセニや、ウガンダ代表でもレギュラーを務めるモーゼス・オロヤなど、強烈な個を有する外国籍選手もスカッドに名前を連ねており、アウェイの地でジャイアントキリングを狙います。3月とはいえ、気温5.3度と寒さの厳しいコンディションの下、ビン・ズオンのキックオフでゲームはスタートしました。


3分のファーストシュートは柏。中央から茨田陽生が右へ綺麗なスルーパスを通し、走った工藤壮人のダイレクトシュートは弱く、ビン・ズオンのGKエセルにキャッチされたものの、8番が早くも才能の一端を発揮すると、5分は柏の決定機。今季初スタメンの山中亮輔が送ったパスを、大谷は浮かせて裏へ。トラップしたクリスティアーノが反転しながら放ったボレーはわずかに枠の上へ消えましたが、「相手はアウェイですし、どういう入り方をするかはちょっとやってみないとわからない所はありましたけど、自分たちは普段トレーニングを続けていることを入りで出せた」と大谷も話したように、柏が早々に主導権を握ります。
7分の柏は大津が獲得したFK。中央左、ゴールまで約30mの距離からクリスティアーノが直接狙ったキックはカベにヒット。8分も柏。太田徹郎の左FKがこぼれると、反応した大津のボレーはわずかに枠の左へ。11分にも崩しのパターンが。大津のパスを太田が左へ流し、山中のグラウンダークロスは工藤が合わせ切れなかったものの、得意のサイドアタックも披露。12分にも大谷が左へ展開し、ここも山中がクロス。太田のボレーは枠の上へ消えましたが、「相手の戻り方だったり、スペースが空くのが左サイドが多いと言っていたので左からの攻撃が多かった」と大谷。左サイドからの攻撃に切れ味が。
一方のビン・ズオンも攻め込まれる時間が長い中で、きっちりボールを繋ぎたい意思は明確に。21分はセットプレーのチャンス。珍しい大谷のロストをガニユ・オセニに奪われ、たまらず鈴木大輔が倒して生まれたFK。左寄り、ゴールまで25mの位置で札幌でもプレーしたレ・コン・ビンが枠へ収めたキックは、柏のGK菅野孝憲ががっちりキャッチしたものの、25分にも左サイドからレ・タン・タイが鋭いFKを蹴り込むなど、セットプレーに滲ませるゴールへの意欲。
25分は柏の決定機。山中のピンポントクロスから、DF間へ潜った工藤のヘディングはエセルが何とかキャッチ。26分も柏。クリスティアーノが外へ付け、キム・チャンスのクロスに大津が合わせたヘディングは枠の左へ。28分も柏の決定機。太田の右CKをエセルがこぼすと、飛び込んだエドゥアルドが至近距離から放ったシュートはしかしクロスバーの上へ。チャンスは創る中で「あとは最後の所をどうやってネットを揺らすか」(大谷)という部分。
隙を窺うビン・ズオンが2本目のシュートを記録したのは30分。右からレ・タン・タイがFKを蹴り込み、ニアへ飛び込んだレ・コン・ビンのヘディングはクロスバーを越えましたが、セットプレーはやはり脅威に。35分にもエセルのキックをガニユ・オセニがきっちり収め、レ・コン・ビンがトライしたミドルは枠の右へ外れたものの、39分にはビン・ズオンが生み出した絶好の先制機。モーゼス・オロヤの浮き球をギャップで受けたグエン・チョン・ホアンが落とし、レ・タン・タイは右からクロス。レ・コン・ビンがスライス回転で放ったシュートはわずかに枠の右へ逸れたものの、あわやゴールというシーンにスタンドもザワつきます。
「攻め込んでて取れない時間が続くちょっと嫌な感じ」(大谷)を払拭したのは、CF起用に燃える9番のストライカー。43分、エドゥアルドが正確な左足で右のハイサイドへフィードを通し、クリスティアーノは丁寧に中へ。DFの間を抜けてきたボールに、誰よりもきっちり反応していたのは「チャンスは絶対に来るだろうなという流れだったので、来た時にどれだけ冷静にゴールへ流し込めるかという準備はしっかりしていた」という工藤。右足で確実に押し出したボールは、ゴール右スミへゆっくりと吸い込まれます。「何となくはわかっていましたけど、今日の朝に監督からストライカーのポジションで行くと実際言われた」という工藤が、飢えていたCFのポジションでしっかり結果を。柏がスコアを動かしました。
悪癖再び。44分にレ・コン・ビンが左からクイックでFKを蹴り込むと、アッバス・ディエンは強い体でマーカーを弾き飛ばしてヘディングまで。ボールはわずかに枠の左へ外れるも、チョンブリ戦でも露呈した得点直後のピンチはこの試合でも。ただ、ここを相手のシュートミスで何とか凌ぐと、輝いたのはまたもブラジリアンコンビ。44分、エドゥアルドが右サイドへ送った素晴らしいフィードを、クリスティアーノは頭でそのまま中へ。工藤と並走していたCBのヴランコヴィッチは体を捻り切れず、自らの頭で自らのゴールへボールを叩き込んでしまいます。「前半の最後の2点がとても残念」とグエン・タイン・ソン監督も渋い顔。柏が2点のリードを手にして、ハーフタイムへ入りました。


「後半の始めの所ではビン・ズオンの攻撃で、やはりゴールを取りに行かなくてはいけないというメンタル的な所で、ちょっとボールを持たれた」と工藤も振り返ったように、後半の立ち上がりはビン・ズオンに前へのパワーが。50分にレ・タン・タイとマイ・ティエン・タインを入れ替えると、51分にアウ・バン・ホアンが蹴った右FKはエドゥアルドにクリアされましたが、53分にグエン・チョン・ホアンのパスからマイ・ティエン・タインが狙った30mミドルはクロスバーにハードヒット。ベトナム王者の意地を前面に押し出します。
56分に躍動したのはこのスタイルにも的確に順応した右SB。大津、大谷と繋いだパスから、茨田は右サイドへパーフェクトなスルーパスをグサリ。ここに走り込んだキム・チャンスはDFの裏を完全に取って抜け出すと、GKとの1対1も冷静にゴール右スミへボールを送り届けます。このスタイルのキーポイントとも言うべきサイドバックが、自らゴールという成果まで。点差が広がりました。
まずは1点を返したいビン・ズオンも手数は続けて。59分にレ・コン・ビンが蹴った左FKは中央でオフェンスファウルに。61分にもモーゼス・オロヤのシンプルな縦パスにガニユ・オセヤが走るも、ここはエドゥアルドが完璧なカバーリングでオフェンスファウル。64分には柏も太田の右CKに、フリーで合わせたエドゥアルドのヘディングはクロスバーの上へ。65分は再びビン・ズオン。時間を追うごとに存在感を増してきたモーゼス・オロヤがドリブルで運び、左からカットインしたレ・コン・ビンのブレ球ミドルは菅野がきっちりファインセーブで回避するも、「このレベルの相手なので、相手にチャンスを一切与えないというのは難しいと思う」と大谷。ビン・ズオンが漂わせるゴールの予感。
ただ、この日の柏はしたたかに。67分は右CKのチャンス。太田が蹴り込んだボールをニアで大津がフリックすると、ファーへ流れたボールへ頭から突っ込んだのは「ニアで潰れてファーで決めるとか、そういう犠牲の精神だったりとかがチームの中にたくさんできてきているので、そういう所は犠牲になった選手のためにも最後僕自身が決め切らなくてはいけない」と決意する工藤。ダイビングヘッドはGKも掻き出せず、ボールはゴールの中へ転がり込みます。「僕自身の得意な形」で9番はドッピエッタを達成。4-0と試合の大勢は決しました。
トドメの一撃は「ポジション的に去年より前に入るシーンも多いので、ゴールに直接絡むようなプレーの意識は上がっています」と話す意外な男。75分、太田とのワンツーを経て大津が中へ送ったパスを、大谷はエリア外からミドル。DFに当たって少しコースの変わったボールは、ゴール右スミギリギリへゆっくり弾み込みます。「5点目ですからね(笑) 自分のゴールは別にどうでもいいです(笑)」と笑ったキャプテンの今シーズン初ゴールが飛び出し、スコアは5-0に変わりました。
吉田監督は76分に1人目の交替を。ゴールまで決めた大谷はここでお役御免。「タニくんに聞いたら『他にキャプテンマークを付けるヤツがいなかった』と。次はもう少し頼ってもらえるように頑張らなきゃいけないと思います」と苦笑した工藤にキャプテンマークは受け渡され、U-22日本代表に選出された秋野央樹がピッチへ飛び出します。
5失点目の直前にGKをエセルからブイ・タン・チュオンに入れ替え、スタンドのどよめきを誘ったグエン・タイン・ソン監督は、79分にもアッバス・ディエンとグエン・アイン・ドゥックを交替させると、81分にようやく一矢。積極的な姿勢の目立ったレ・コン・ビンが左から裏へ落としたボールに、絶妙のラインブレイクで飛び出したのはガニユ・オセニ。世界を知る男はコースを狭めたGKの頭上を柔らかく破るループで、ゴールを陥れます。「最後の失点はチームとして必要なかったと思いますし、どんなゲームでもしっかり最後までチームを締めながらやる必要があると思いました」と大谷。赤きビン・ズオンサポーターも終盤に歓喜の瞬間を享受しました。
「まずは勝つということが大事ですけど、得失点差という所も少し頭に入れながら」(工藤)ゲームを進めていく中で、吉田監督もゲームクローズを着々と。82分にはキム・チャンスと武富孝介をスイッチして、太田を右SBへスライド。84分に太田の右CKから武富がループをクロスバーの上へ外すと、88分には茨田に替えて「エドゥの所で出るかなと思っていたんですけど、まさかアンカーで出るとは思っていなかった」と話す中谷進之介がアンカーとしてACLデビュー。90+2分には武富、クリスティアーノ、工藤とボールが回り、武富のラストパスから秋野が放ったシュートは枠の右へ外れると、これがこのゲームのラストチャンス。「今日勝ち点3を取るか取らないかで非常に変わってきてしまっていたので、ホームで結果を出せたことは良かったと思います」と大谷も語った柏が、ホーム開幕をきっちりと白星で飾る結果となりました。


個人的には2人の選手が目に付きました。1人は太田。「間でボールを受けるのはうまい選手なので、あとはいかに入っている時に周りがうまく使ってあげられるかだと思いますね」と大谷も認めたように、ギャップギャップでボールを引き出して、周囲に付けるスキルはチームでもトップクラス。加えてプレーオフの決勝点やこの日の4点目のように、精度の高いプレースキックも大きな武器に。スタメンでも途中出場でも計算できる26番の存在は、これからさらにチームの鍵を握ってきそうな気がします。もう1人は工藤。「全然戸惑いはないですし、むしろCFで勝負したいというのは常に持ち続けている」と話す久々のCF起用で見えてきたのは、同じ指揮官を頂いたU-18時代のスタイル。「ビルドアップの時はゼロトップに近い形でスペースに動き出して、徹郎だったりタニくんのサポートをしながら攻撃を活性化できたので、僕自身もやっていて楽しかった」と自ら振り返ったように、味方を生かすポジショニングとスペースメイクはおそらくレアンドロ以上。「今日はほとんどノーミスと言っていいくらいボールを取られることもなかったと思う」というプレーをもう一段階レベルの上がった相手にも披露できれば、自ずとポジション奪取も見えてくるのかなと。今後へのさらなる可能性が、この2人からも透けて見えてくるような90分間だったのではないでしょうか。       土屋

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