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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
【1】古巣対決のその先へ
雨の降りしきるピッチでかつての仲間が喜んでいる。
試合は5点を失った前半で決まってしまった。
「今週はずっとワクワクしていた」という90分間を終えて、
太田翔は思わず天を仰いだ。
中学時代の3年間を三菱養和調布ジュニアユースで過ごした。
ユースには上がれず、進学の関係で高校サッカーという選択肢もなく、
色々なチームを探していた中で横河武蔵野FCユースに辿り着く。
そのスピードは圧巻。
1年生の頃から試合に出場し、大事な局面でゴールを重ねてきた。
得点感覚は古巣相手に研ぎ澄まされる。
昨年1月に行われた新人戦で1ゴール。
全国大会出場を懸けたJユースカップの関東予選決勝でも
試合を決める追加点を叩き込む。
「本当は取られちゃいけない選手なんですけど、
いつも養和のゲームでは点を取られているので」
と苦笑した三菱養和SCユースを率いる山本信夫監督は
「養和出身の選手が試合に出てきてくれるのは嬉しいですし、
でも負けたくないというのも選手にも当然あると思うので
僕も当然そこは同じ気持ちです」と続けた。
自身にとっては公式戦で5度目となる古巣対決。
「メンバーも中学時代にほとんど一緒に
3年間戦ってきたメンバーなので
負けたくないというのはずっとあった」特別な一戦。
かつてのチームメイトたちとはあえて連絡を取らなかった。
試合会場に入ってからも
「会った時にちょっとは話したんですけど、
前みたいに仲良くという感じじゃなく」ライバルとして一線を引いた。
しかし、その想いは空回り、気付けば45分間で5点を失う。
劣勢の中で何もできない自分に腹が立った。
「『やらねえんだったら止めちまえ』
『チャレンジしないんだったら止めちまえ』と。
やって失敗するんだったらうまくなるかもしれないけど、
やらないんだったらうまくならないし。
『やらないでミスして5失点して何になるの?』って
ハーフタイムに話しました」と増本浩平監督。
勝敗は決まってしまった。残りの45分間で何を得られるか。
51分に追撃の1点が決まる。
「入ると思ったので迷いはなかった」太田のミドルがゴールネットへ突き刺さる。
今日も古巣のゴールにボールを叩き込んだ。
それでもまだ、足りない。
そのシーンは終了間際の90+2分に訪れる。
やはり中学の3年間を養和で過ごした
森田幸紀が左からクロスを上げる。
走り込んだ太田は躊躇なく右足を振り抜く。
軌道はまたしてもゴールネットを揺らした。
意地の2ゴール。最低限の仕事はしたが結果は結果だ。
「関東大会では勝つことができて、
今度は自分の代でも勝ってやろうと思っていたので
負けてしまったのは凄い悔しいですね」
自分たちの代で挑んだ最初の古巣対決は
悔しさと共に太田の心へ深く刻まれた。
「後半になってやっと何かやり出したけど
お前は前半からやれよっていう話」と指揮官は手厳しい。
ただ、その信頼の証は巻かれた腕章に宿っている。
「僕は引っ張っていくという感じでもないので
やっていてみんなが付いてきてくれるという感じで、
みんなもまだ俺のことを不安だと思うんですけど」と
まだキャプテンとしては頼りない。
それでも、この90分間を経て
目指すものはおそらく明確になった。
今までは古巣相手のゴールに
喜んでいるだけでもそれで良かった。
でも、今は彼の立場がそうはさせない。
「ああいうヤツをキャプテンにすることに意味がある」という
指揮官の期待に応えるために。
古巣対決のその先へ。
新米キャプテンを頂いた横河の2015年はまだ始まったばかりだ。
土屋
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