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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年12月21日

Jユースカップ準決勝 鹿島ユース×清水ユース@長居

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1220nagai2.jpg大阪冬の陣・第2弾はプレミアEASTのリターンマッチ。トップチームも"オリジナル10"でJ2を一度も経験していない4クラブの内の2つと、名門のDNAを受け継ぐ強豪同士の対峙は、引き続きヤンマースタジアム長居です。
夏のクラ選ベスト4を経て、2度目の戴冠を冬空の長居で経験したのは2004年。それからは主要な全国大会での上位進出はなかなか叶わなかった鹿島ユース。そんなチームにとって、変化の兆しが訪れたのはブラジル人指揮官のキッカ監督就任。3年間に渡る王国の薫陶を受け、指揮を引き継いだトップチームの三冠を選手で経験している熊谷浩二監督を「本当に鹿島アントラーズが大好きで、その強い気持ちを持っていないとアントラーズを語る資格がないというか、背負って立つ資格がないからやめてくれと言われている」と評したのは色摩雄貴(2年・鹿島アントラーズつくばJY)。情熱の指揮官に率いられ、10年ぶりのセミファイナルへ強い気持ちで挑みます。
大会得点王に輝いた長沢駿を擁し、2度目の戴冠をやはり冬空の長居で経験したのは2005年。以降は全国レベルでの結果に恵まれない期間が続いたものの、クラブOBでもある大榎克己監督の就任を転機に、再びユース年代で存在感を放っている清水ユース。今シースンもクラ選はラウンド16まで進出し、プレミアEASTでも首位争いを繰り広げていたものの、指揮官は夏に残留争いに喘ぐトップチームの監督へ。「選手は本当に大変だったと思います」と話すのは、その夏にコーチから昇格した平岡宏章監督。勝負の冬に意地の全国制覇まであと2勝に迫っています。長居は1試合目から降り続いている雨で相当な重馬場。気温は6.9度。極寒とも言うべきコンディションの中、清水のキックオフでゲームはスタートしました。


ピッチコンディションもあってか、静かに立ち上がったゲームのファーストシュートは7分で清水。右サイドからドリブルでカットインした西澤健太(3年・清水エスパルスJY)がそのまま放ったミドルは、鹿島のGK山田晃平(3年・群馬鬼石中)が何とかキャッチ。鹿島のファーストシュートは直後の7分。こちらもミドルレンジから平戸太貴(3年・鹿島アントラーズJY)が狙い、清水のGK山川卓己(3年・清水エスパルスJY)がキャッチしたものの、まずはお互いにミドルでチャンスを窺います。
そんな中、先制点は意外な形から。9分、平戸ともつれた清水のDFは体勢が悪く、クリアを自陣方向へ。プレゼントボールを受け取った武田諒太(2年・鹿島アントラーズJY)は、GKとの1対1も冷静に制して、ゴール左スミへボールを送り届けます。トップ昇格が内定している鈴木優磨(3年・鹿島アントラーズユース)の出場停止を受けて、スタメン起用された29番が早くも一仕事。鹿島が1点のアドバンテージを手にしました。
「前半は自分たちのサッカーというか、前からプレッシャーを掛けて、そこで点が取れれば良いなと思っていた」(平戸)中で、狙い通りに先制した鹿島。以降は膠着状態に陥ったゲームの中でも、「相手もウチのプレスに困っていたことがわかったので、そこを連動できたことで相手の攻撃を防げたと思う」とキャプテンの千葉健太(2年・鹿島アントラーズJY)も話した通り、前からの果敢なプレスで相手を封じ込め、冷静にゲームを進めていきます。
一方、「相手がああいう風にロングボールを蹴ってくるのはわかり切っているので、そのセカンドをどれだけ拾えるかが勝敗の鍵を握るというのは選手にも伝えてあった」(平岡監督)清水は、そのセカンド奪取で後手を踏んだ格好に。26分には望月大(3年・清水エスパルスJY)、田口雄太(2年・清水エスパルスJY)と繋ぎ、キャプテンマークを巻く森主麗司(3年・清水エスパルスJY)が放ったミドルは大きく枠の上へ。27分にも沼野誠也(2年・清水エスパルスJY)のパスから、既にJ1でのリーグ戦出場も経験している水谷拓磨(3年・清水エスパルスJY)が大きく左へ。走った望月大のトラップは大きく、シュートまでは行けず。出てこない攻撃のリズム。
29分は鹿島。左からのアーリーはDFにクリアされたものの、こぼれを叩いた田中稔也(2年・FC KRILO)のボレーはクロスバーの上へ。30分から33分の間に集めた4本のCKを経て、35分も鹿島。田中の右クロスがこぼれ、中央でフリーになった武田がシュートを放つと、ここは右のゴールポストを直撃。42分も鹿島。右から大里優斗(2年・鹿島アントラーズつくばJY)が蹴ったCKは、西澤のクリアに遭いましたが、大里が再び左足で入れた右クロスは、中央で誰も触れずにゴールキックへ。「監督の指示通りチームがうまく連動して、まとまってできたかなと思う」とは平戸。鹿島がさらなる攻勢を仕掛けます。
44分には押されていた清水にも大きなチャンス。左サイドでボールを受けた水谷がクロスを入れると、ファーで待っていた沼野がヘディング。ボールはわずかに枠の右へ逸れ、先制とは行かなかったものの、「この前後あたりから落ち着きは出てきていた」と平岡監督。とはいえ、「意外ともう少しボールを握られてというイメージを持って入ったんですけど、前半に関して言えば思ったよりこちらがプレーできたかなという感じ」と熊谷監督も手応えを口にした鹿島が、1点をリードしたままでハーフタイムへ入りました。


「相手のロングボールに対してしっかりセカンドを拾って、1つ繋いでいけば必ずチャンスは出てくる。おそらく前半も残り5分くらいで沼野のヘディングシュートがあったと思うんですけど、あのあたりから落ち着きは出てきていたので、そのまま後半も入っていこうということで送り出しました」と平岡監督。ハーフタイムが明けた48分には森主を起点に水谷が絶妙スルーパス。沼野はカットインで自らスペースを潰してしまい、シュートまでは持ち込めませんでしたが、51分には決定機。右サイドで粘った水谷がクロスを上げ切ると、3列目から飛び込んだ宮本航汰(3年・清水エスパルスJY)が至近距離で合わせたヘディングは、山田がファインセーブで回避したものの、立ち上がりから滲ませる同点への意欲。
すると、オレンジの歓喜が弾けたのは直後の51分。西澤が頭で残したボールを拾い、右から中央へ潜った沼野はスルーパス。ここも3列目から走り込んで来た宮本はファーストタッチで縦へ持ち出すと、GKとの1対1も堂々とゴール中央にぶち込みます。トップ昇格が決まっているボランチは、2度のチャンスがあればどちらかは確実に。「狙っていたような形で崩してできた」(平岡監督)同点弾。ビハインドを跳ね除けた清水。鹿島のリードは霧散しました。
「1-0でウチが後半を迎えていたので、相手がそういう状況で入ってくるというのはわかっていたんですけど、少し後手を踏んでしまった所はあったかなと思う」と話した熊谷監督は53分に1人目の交替を決断。先制ゴールを挙げた武田を下げて、ドリブラーの色摩を投入。「1点入ってしまったけど、自分もこういう出番が続いていたので、安心して出ることができました」とは本人。大事な局面でジョーカーがピッチへ解き放たれます。
57分は鹿島。田中が左へ回し、大里のクロスをファーで色摩が折り返すと、吉岡樹利也(2年・ソレッソ熊本)のシュートはヒットせずに山川にキャッチされましたが、「ああいう練習も結構チームでやっている」(色摩)形からフィニッシュまで。61分は清水。西澤とのパス交換から森主が右へ展開し、沼野のクロスは山田がキャッチしたものの、惜しいサイドアタックを。直後も清水。CBの鈴木翔太(3年・清水エスパルスJY)が果敢に狙ったミドルは枠の右へ外れるも、手数と流れは共に清水へ。
62分には平岡監督も決断。沼野に替えて福井悠陽(2年・F.C.コーマラント)を送り込み、サイドに新たな変化を。66分は鹿島。田中が左へ送り、森主のラストパスに水谷が飛び込むも、シュートは打てず山田がキャッチ。67分は清水。左サイドで田口が裏へ落とし、走った西澤のループはゴール左へ。69分は鹿島に2人目の交替。右SBで奮闘した宮本健太(2年・鹿島アントラーズつくばJY)を、「プレミアでも後期では右サイドで使いながらやっていた」(熊谷監督)寺門宥斗(3年・鹿島アントラーズノルテJY)と入れ替え、サイドに注ぎ込む推進力。71分は清水に2人目の交替。望月を下げて送り出すのは、「練習復帰したのが今週の頭からだったので、できて20分か30分」と指揮官も話したエースの北川航也(3年・清水エスパルスユース)。「今日は沼野がよく基点を創ってくれていたので、引っ張るだけ引っ張ってと思ったんですけど、僕の中で疲れているように感じたのでここで思い切って勝負に出ようと」(平岡監督)、世代屈指のストライカーに勝負を預けます。
「ハーフタイムに1点リードしていて、失点するかもしれないけど、それでも1対1だから慌てる必要はないとみんなわかっていた」と話したのは千葉。慌てない鹿島の勝ち越しゴールは意外な形から。73分に田中が左へ送ると、「守備の所も含めて波のある選手だったが、ここに来て非常に計算できてファイトできる、ウチのポイントになってきた」と熊谷監督も認めた大里が鋭いクロス。これをファーサイドに飛び込んだ寺門が頭で叩くと、スリッピーなピッチもあってGKがトンネルしてしまい、ボールはコロコロとゴールの中へ転がり込みます。スタメンに2年生が非常に多い中で、「ほとんど控えの選手は3年生で、そこは遜色なくできる選手だと思う」と熊谷監督も信頼を寄せる3年生がしっかり結果を。鹿島が再び1点のリードを手にしました。
またも追い掛ける展開となった清水。76分には西澤の右FKを森主が頭で合わせるも、ここはオフサイドの判定。逆に78分には平戸の左CKから、こぼれを平戸が残し、大里が入れた好クロスをCBの町田浩樹(2年・鹿島アントラーズつくばJY)がヘディングで枠の右へ外した鹿島のチャンスを見ると、平岡監督は79分に2枚替え。梅村豪(1年・清水エスパルスJY)と福井を下げて、鈴木健太郎(2年・UKI-C.FC)と深澤優太郎(3年・清水エスパルスJY)を投入。交替カードを使い切って最後の勝負に。
「試合の中では押し込まれる時間というのは必ずあると思うので、そこは耐えて耐えてと思いながらチャンスが来ると思ってやっていた」8番の試合を決定付ける追加点は82分。CBを務める中野純(2年・鹿島アントラーズJY)のヘディングを右サイドで拾った色摩は、「自分の得意なドリブル」で完全にえぐり切ると、「最初はニアから選択してという戦術だったので、空いていたニアに速いボールを入れようと」クロス。「サイドを突破して上げてくれるというのはわかっていたし信じていたので、ニアのポイントへ入っていこうと決めていた」平戸がワンタッチで流し込んだボールは、ゴールネットへ到達します。「2度ぐらいチャンスがあったけど、決め切れなかったので少しホッとしました」と笑顔を見せた平戸の一撃。点差は2点に広がりました。
追い込まれたオレンジ軍団。84分には左に開いた森主の折り返しを北川が繋ぐも、西澤のボレーはDFがきっちりブロック。85分に田中と垣田裕暉(2年・鹿島アントラーズJY)をスイッチした鹿島の交替を挟み、87分には決定的なチャンス。沼野が中央へ送ったボールを、懸命に収めた北川がGKとの1対1を迎えるも、ここも鹿島の守護神を託された山田がファインセーブで仁王立ち。89分にも北川が左へ回し、水谷が右足で上げたクロスに西澤が頭から飛び込むも、ボールはクロスバーの上へ。どうしてもスコアを動かすことができません。
90+1分に吉岡に替わって、試合を締める役割は3年生の吉野龍之介(3年・鹿島アントラーズJY)が。90+3分にはタッチライン際で「流れも悪かったし中盤だったし、切っておこうと思って思い切り滑りました」という千葉が強烈なスライディングでボールをタッチラインの外へ弾き飛ばすと、期せずしてどよめいたスタンド。そして、94分17秒に若鹿が聞いたのは自らの勝利を告げるホイッスル。「このチームの鹿島らしさというのはわからないんですけど、まずは勝負に徹するということと、流れを見るというようなことは常々言っています」と熊谷監督が話した通り、流れを見ながら勝負に徹した鹿島が、ファイナル進出を力強く手繰り寄せる結果となりました。


「こういう大きな試合というのはちょっとしたミスで失点してしまうとなかなか難しくなってしまうし、それが2つも続いてしまったら勝ちにくいですよね」と肩を落とした平岡監督。それでも、トップチームの影響をモロに受けた格好で、難しい"夏以降"を強いられながらも、ここまで勝ち上がってきた清水の健闘は大いに称えられるべきものでした。北川、水谷、宮本の3人はこの春からトップチームへ昇格することになりますが、最後のロッカールームでは"3人"との再会を誓ったという"3人以外"の3年生。「まずは3人が先にトップの方へ昇格しますけど、彼らがしっかりと活躍することと、4年後に他の選手たちが清水に戻ってきて、活躍してくれることを願っています」と平岡監督。再びオレンジを纏う日まで。"3人"と"3人以外"は自らを磨き続けるため、しばしの別れを経験します。
「当たり前のことを当たり前にやるということを常々言ってきていて、それは攻守の切り替えであって、球際で戦うことであって、それから走るということ。これだけは徹底してやらせてきているつもりなので、とにかくそこだけは負けないようにしていきたいと思います」と柔和な口調の中にも、この言葉が口を衝いた時には表情を引き締めた熊谷監督。「以前は球際で引いていた部分があったんですけど、戦えるチームにならなきゃというコンセプトでやっていたし、そこを引いたら絶対出してくれないので、そこを意識してやっていたら戦える選手になれたと思います」と手応えを掴んでいるのは色摩。その言葉は何よりピッチの上のプレーで、彼らが雄弁に語っています。印象的だったのは試合後に話を聞いた選手が、みんな自分で考えてしっかりと言葉を紡いでいたこと。「監督にも言われるんですけど、まずはサッカー選手である前に人間として当たり前のことを当たり前にできなきゃいけないし、挨拶だったり身だしなみだったり礼儀だったり、そういう面をサッカー以前の所で教えてもらって今年1年やってきたので、そういう効果が少しずつ1人1人できてきたのかなと思います」とキャプテンの千葉もキッパリ。「鹿島らしい勝ち方」(色摩)の背景には、クラブが大切に積み上げてきた伝統が間違いなく息衝いていたようです。      土屋

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