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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年09月22日

T1リーグ第16節 実践学園×東京朝鮮@実践学園G

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0921jissen.jpg無敗で首位を快走している高尾のブルーが、残留を懸けて戦う7位のレッドを迎え撃つ一戦。舞台は前者のホーム、実践学園高尾グランドです。
15試合を終えた段階で10勝5分けと堂々の無敗。チーム初のリーグ戦制覇をいよいよ現実のものとして捉え始めている実践学園。選手権予選でも、実力校の大成と対戦した1回戦を何とか1点差で制すなど、チームの調子も上々。3日前に2位の駒澤大学高が引き分けたため、勝利を収めれば限りなく優勝の近付く90分間に挑みます。
後半戦はここまで1勝2分け2敗と黒星が先行し、残留争いの渦中に巻き込まれている東京朝鮮。とはいえ、「僕は良いチームだと思っている」とコ・リュンジ監督も語るチームは、選手権予選の1回戦でも正則学園を劇的な後半アディショナルタイム弾で振り切っており、好調を維持した格好で重要な一戦に臨みます。中央線の終点でもある高尾には、少なくない保護者の方々が集結。注目の90分間は15時ジャストに、実践がボールを蹴り出して時計の針が動き出しました。


ファーストシュートはホームチーム。4分、キャプテンマークを巻く渡辺東史也(3年・八王子由井中)がFKを素早く左のハイサイドへ蹴り込むと、走った杉山大周(3年・FC杉野)のダイレクトボレーは東京朝鮮のGKチョン・ジョンオ(3年・西東京朝鮮第一中)にキャッチされましたが、6分にも杉山がヘディングで競り勝ったこぼれを、小池将史(3年・北区赤羽岩淵中)はボレーで叩いて枠の左へ外すなど、実践が勢いよく立ち上がります。
10分の決定機も実践。橋本康平(3年・東急SレイエスFC)が蹴った右CKから、ニアで小池がヘディングしたボールはGKを破るも、カバーに入っていたキム・ジョンホ(3年・東京朝鮮第五中)がライン上でスーパークリア。15分にも橋本が左サイドの裏へボールを送り、斜めに潜った小池が折り返すと、百瀬隆平(3年・JACPA東京FC)のシュートはDFがブロック。18分にも橋本の右CKを、ニアで待っていた杉山がフリックで流し、最後はDFが何とかクリアしたものの、左サイドを中心に続けた手数でペースは間違いなく実践に。
ところが、21分にスコアを動かしたのはアウェイチーム。ハン・ヨンテ(3年・東京朝鮮第一中)が右へ送ったボールを、リャン・ヒョンジュ(1年・大宮アルディージャJY)はそのままシュート。DFに当たった跳ね返りをキム・ジョンホが打ち返すと、さらにこぼれ球をハン・ヨンテが体を投げ出しながらプッシュ。ボールはゆっくりと静かにゴールネットへ転がり込みます。「あの点数は素晴らしいですね」と笑ったコ・リュンジ監督は、「前の子たちはああいう上手さは前からあったので、『我慢したらチャンスは必ず来る』と言っていた」とも。始めて迎えたチャンスを成果へ結び付けた東京朝鮮が、1点のリードを手にしました。
29分も東京朝鮮。リ・キョンチョル(2年・東京朝鮮中)の右ロングスローから、最後はリャン・ヒョンジュが実践のGK飯島太貴(3年・FC駒沢)にキャッチを強いるシュートを打ち込むと、野口幸司コーチは一旦3バックに変えたシステムを、再び4バックへ。ワンチャンスでの失点で失い掛けた流れを取り戻すべく、采配を振るいます。
38分は実践。細かくパスを回し、百瀬のパスを受けてグラウンダーで入れた野崎智寛(2年・杉並FC)のクロスは、中央と合わずにゴールキックへ。41分も実践。橋本の右CKは一旦DFにクリアされるも、野崎が拾って残し、再び放り込んだ橋本のクロスは密集を抜け、左のゴールポストへヒット。直後も実践。鋭いカウンターから杉山が右へ振り分け、新井直人(3年・FC渋谷)が枠へ収めたシュートはチョン・ジョンオがしっかりキャッチしましたが、押し込むのは高尾のブルー。
44分は実践。百瀬の左ロングスローをニアで小池がすらすも、シュートまでは持ち込めず。45分は東京朝鮮。前半途中からケガのキム・ヨンボ(3年・ACアスミ)に替わって投入されたペク・スンホ(2年・西東京朝鮮第一中)を起点に、キム・ジョンホが仕掛けて上げたクロスへシン・テス(3年・大阪朝鮮高)が突っ込むも、その前に飛び出した飯島ががっちりキャッチ。45+1分は実践。左サイドで百瀬からのリターンを橋本がクロスに変えると、こぼれに反応した渡辺のミドルは枠の右へ。45+2分は東京朝鮮。ハン・ヨンテが中央を突進し、2人を振り払いながら打ち切った35mミドルは枠の右へ。終盤に手数の増えた前半は東京朝鮮が1点のアドバンテージを守って、ハーフタイムへ入りました。


後半開始から動いたのは実践。野崎と橋本を下げて、上倉晃司(2年・FC町田ゼルビアJY)と黒石川瑛(2年・AZ'86東京青梅)を投入する2枚替えを敢行すると、47分には新井、上倉と繋いで杉山が独走。ここは懸命に戻ったキム・ファンジ(2年・東京朝鮮第一中)が懸命のタックルで回避しましたが、48分にも左右合わせて4本連続クロスが東京朝鮮ゴール前を襲うなど、「前半の立ち上がりに結構チャンスが創れたので、いけるんじゃないかという雰囲気」(野口コーチ)を払拭したかのような実践が仕掛けたラッシュ。
すると、50分に訪れた絶好の同点機。黒石川がロングフィードをDFラインの裏へ落とし、走り込んだ小池がDFともつれて倒れると、ホイッスルを吹いた主審はペナルティスポットを指差します。キッカーはキャプテンの渡辺。短い助走から左スミを狙ったキックは、しかし「実践はまだ負けなしということで、自分たちは勝っていたので、後半の45分は本当に気合を入れて守ろうと思っていました」と語るチョン・ジョンオが完璧な反応でファインセーブ。スコアを振り出しに引き戻せません。
53分は東京朝鮮に2人目の交替が。左WBのカン・ドゥホ(2年・東京朝鮮中)とホン・セジン(3年・東京朝鮮第一中)を入れ替え、中盤より前の配置転換を図ると、54分は実践も3人目の交替を。杉山と大山友幸(2年・三菱養和巣鴨JY)をスイッチして、高橋龍世(3年・FC多摩)が攻撃的な位置へスライド。54分には百瀬の左ロングスローに高橋が競り勝ち、チャンスの一歩手前まで。57分には飯島のキックを小池が頭で落とし、抜け出し掛けた上倉のドリブルはリャン・ヒョンジュがうまく体を入れてクリアしたものの、続く実践の攻勢。
ただ、58分にキム・ジョンホが粘って残し、ハン・ヨンテの狙ったシュートがDFに当たって枠の左へ外れたワンプレーから、一気に押し込んだ十条のレッド。58分に左からリャン・ヒョンジュが蹴り入れたCKを、ファーで合わせたハン・ヨンテのヘディングは飯島がキャッチ。59分にリャン・ヒョンジュが左からカットインしながら放ったミドルは、わずかに枠の左へ外れるも一瞬で反転したゲームリズム。
押し切った東京朝鮮。60分、左サイドでリ・キョンチョルが縦へ付けると、ドリブルで運んだハン・ヨンテはマーカーをかわしながら、サイドをえぐり切ってマイナス気味にグラウンダーで中へ。そのポイントへ全力で突っ込んで来たキム・ジョンホのダイレクトシュートは、綺麗にゴールを貫きます。「アレは本当に上手いですね。あそこでえぐれる選手だと相手も知っているのにえぐれますから」と指揮官も賞賛したハン・ヨンテの突破は圧巻。リードが広がりました。
2点を追い掛ける展開となった実践は、失点直後に中盤で奮闘した和氣貴也(2年・横河武蔵野FC JY)を下げて、天下谷真太郎(3年・FCトリプレッタ)を送り込むと、すぐさま的中した交替策。61分、左サイドへの展開から小池がクロスを上げ切り、こぼれに飛び付いた天下谷のボレーは豪快にゴールネットを揺らします。失点からわずか1分で生まれた追撃弾。あっという間に再び点差は1点に縮まりました。
再びラッシュは実践。66分に左CKをショートで始めた渡辺が、百瀬のリターンを中央へ放り込むもDFがクリア。新井と勝田勇気(2年・東急SレイエスFC)をスイッチした66分の交替を挟み、67分に百瀬が飛距離を出した左ロングスローはチョン・ジョンオがキャッチ。70分にも大山のシンプルなフィードを高橋が落とし、勝田はチョン・ジョンオともつれるもシュートは打てず。それでもセットプレーはロングスローも含めて十分な脅威に。
瞬時に牙を向く赤の10番。72分、シン・テス、コ・スンドク(3年・東京朝鮮中)、キム・ジョンホと回ったフラッシュパスの発動から、抜け出したハン・ヨンテのシュートは飛び出した飯島がファインセーブで回避しましたが、そのCKを右からリ・キョンチョルが蹴り込むと、ファーで拾ったハン・ヨンテは縦へ強引に運び、サイドネットの外側へ突き刺さるフィニッシュまで。78分にゴールまで約30mの距離からリャン・ヒョンジュが直接狙ったFKはわずかにクロスバーを越えたものの、ハン・ヨンテの存在が東京朝鮮の歩む勝利への道筋を明るく照らします。
アクシデント発生は79分。自陣での激しい競り合いで実践の選手を後ろから突き倒す格好になった東京朝鮮のDFに、主審はイエローカードを提示。前半開始早々にも1枚もらっていたため、退場処分となってしまいます。この最終盤に来て、アウェイチームに襲い掛かった試練。逆にホームチームは数的優位を何が何でも生かしたいラスト10分間に。
81分は実践。左サイドで創り、黒石川のパスから上倉が狙ったミドルはクロスバーの上へ。83分も実践。溜めた高橋が右へ送り、勝田の折り返しを上倉がダイレクトで打ち切るも、ボールはわずかに枠の左へ。86分も実践。右から小池が蹴ったCKを、フリーで当てた勝田のヘディングは枠の左へ。89分も実践。再び右から小池が入れたCKに、天下谷が呼応したヘディングも枠の左へ。頭を抱えるベンチ。変わらないスコア。
「ベンチの方の応援もあって気合で防ぎました」と笑った守護神ショーの開幕。90+1分、黒石川が左から蹴ったCKに至近距離から合わせた勝田のヘディングは、「食らったと思ったんですけど、ボールは見えていたので左手の手の平で弾きました」というチョン・ジョンオが驚異的な反応でビッグセーブ。90+2分、渡辺の左クロスを横溝聖太郎(3年・FC杉野)が頭で繋ぎ、大山が左スミギリギリへ収めたミドルも、チョン・ジョンオが完璧な横っ飛びでビッグセーブ。その光景にどよめくスタンド。
90+4分、百瀬が蹴り込んだクロスから、高橋が放ったヘディングは勢いも弱くチョン・ジョンオがキャッチ。90+5分、小池が右へ振り分け、上倉が通したグラウンダークロスを横溝がきっちり枠へ飛ばすも、もはや鬼神と化したチョン・ジョンオが「ちょっとノッている部分はありましたね」という言葉通りにビッグセーブで仁王立ち。90+5分、小池の右CKがこぼれ、百瀬の狙ったボレーがクロスバーの上へ外れると、鳴り響いたタイムアップのホイッスル。「相手は強いし、T1の1位なので、今日は最初から2-1なら最高と言っていた」と笑ったコ・リュンジ監督の予感的中。東京朝鮮が実践の無敗継続をストップし、残留へ向けて大きな勝ち点3を獲得する結果となりました。


最終盤の3連続ファインセーブで一躍勝利の立役者になったチョン・ジョンオは、実は「3月からキーパーに転向したので、まだ半年くらいしか経っていない」(コ・リュンジ監督)という新米GK。元々フィールドプレーヤーをやっていたものの、「運動神経が良いので僕が頼んだらイヤイヤやってくれたんですよ」と指揮官。本人も当初は「ずっとフィールドプレーヤーだったのでいきなりキーパーと言われて少し動揺はあった」そうですが、「みんな応援してくれているので、だんだんやる気が出てきました」とのこと。「普段はヘボキーパーとか言われてるんです」と笑顔で話してくれました。ただ、このゲームのハイライトとも言うべきファインセーブ連発に関しては、「たまたまです」と謙遜しながらも、「最初のPKを止めたあたりで『今日はいけるかもしれない』と思いました」とも。確かにPKストップ以降は自信のようなオーラがゴールマウスに漂っており、それがあの圧巻のシーンに繋がったのかなと。GKの魅力を問うと、「相手のシュートを止めた時に、相手の悔しがる顔を見た時です」と静かに笑ったチョン・ジョンオ。この日の高尾のピッチには、間違いなく守護神という名の"神"が舞い降りていました。          土屋

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