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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
1次トーナメント屈指の好カードがこのステージで実現。赤をモチーフにした両雄、東京朝鮮と暁星が対峙するのは引き続き駒沢第2です。
昨年は関東大会予選2回戦で成立学園、インターハイ予選1次トーナメントと選手権予選2回戦で駒澤大学高、今年の関東予選はやはり2回戦で修徳にそれぞれ敗れるなど、ここ最近はクジ運にも恵まれず、各大会での早期敗退が続いていた東京朝鮮。ところが、今大会も優勝候補に挙げられる都立東久留米総合と同じ山型に放り込まれたものの、先週のゲームでその難敵を2-1と撃破。2次トーナメント進出に王手を懸けています。
昨年の選手権予選では優勝候補大本命の國學院久我山と雨中の大激戦を繰り広げ、最後は延長で涙を飲んだものの、改めてその存在感を内外にアピールした暁星。関東大会予選では2回戦で駒澤大学高に敗れましたが、T3リーグでは3試合を終えて無敗の首位。1次トーナメントから参加している今大会も、2試合で8ゴールと好調をキープしてこの一戦に挑みます。駒沢第2のスタンドには、好カードということもあってかなりの観客が。注目の一戦は12時、東京朝鮮のキックオフで幕を開けました。
先に勢いを持ってゲームに入ったのは東京朝鮮。6分、左サイドで獲得したCKをリャン・ヒョンジュ(1年・大宮アルディージャJY)が蹴り込むと、10番を背負ったエースのハン・ヨンテ(3年・東京朝鮮第一中)が飛び込み、最後は暁星のキャプテン宮川大史(3年・暁星中)が何とかクリアしたものの、まずは惜しいシーンを創出すると、7分には決定機。中央突破からハン・ヨンテが左へラストパスを送り、リャン・ヒョンジュが枠へ飛ばしたシュートは暁星のGK小林颯(3年・暁星中)がファインセーブで応酬しましたが、東京朝鮮の推進力が相手を上回ります。
14分も東京朝鮮。左サイドで浮き球を収めたリャン・ソッチュ(3年・大宮アルディージャJY)は、そのままカットインからシュートまで。ボールはゴール左へ外れるも、積極的な好トライ。19分に左からコ・スンドク(3年・東京朝鮮中)が入れたFKはオフェンスファウルを取られましたが、24分にも中盤でルーズボールに反応したペク・スンホ(2年・西東京朝鮮第一中)がクロスバーを越えるミドルをボレーで。応援にも力が入る東京朝鮮応援団。
さて、「戦前から押し込まれることは予測していた」という暁星の林義規監督が、チームに強調していたのは「勝てとは言わないけど必ずヘディングは競ろう」という部分。序盤こそ東京朝鮮の1トップを務めるハン・ヨンテに収められるシーンも多かったものの、徐々に増永裕輔(3年・暁星中)と沼崎和弥(2年・暁星中)のCBコンビもポイントを掴み、ヘディングで跳ね返すシーンが増加。この状況で「もうちょっと蹴らないで繋いでくると思ったけど、やっぱり俺の所の弱点を知っていて、ポイントをあそこで創りたかったんだろうね」と林監督も振り返ったように、東京朝鮮がより長いボールを入れてきたことが、結果的に暁星の守備リズムを構築する格好に。逆に及川大翔(2年・FC東京U-15深川)を中心に、サイドへの展開も出てきた暁星が押し返し始めます。
27分は暁星。右から及川が蹴ったCKを岩本将尭(2年・暁星中)が繋ぎ、宮川のシュートは枠の右へ外れましたが、ようやくファーストシュートを記録。30分には流れるような展開。宮川が基点を創り、中舘智(3年・暁星中)、及川、渡邉創允(2年・暁星中)と細かく回ったパスから、及川の左足ミドルは東京朝鮮のGKチョン・ジョンオ(3年・西東京朝鮮第一中)にキャッチされるも、綺麗なアタックに沸き上がるスタンド。直後にも左SBの酒井貴大(3年・暁星中)がハイサイドから戻し、岩本の右足アーリーはわずかに中舘へ届かなかったものの、一気に暁星がフィニッシュを続けて取り切ります。
なかなか形を創れなくなった東京朝鮮は33分にチャンス。リ・キョンチョル(2年・東京朝鮮中)のパスからハン・ヨンテが裏へ。リャン・ヒョンジュが抜け出しかけるも、ここは増永が的確なカバーでスイープ。34分にもCBのチェ・フィジョン(3年・神奈川朝鮮高)がFKを放り込み、最後はコ・スンドクがミドルを放つも、ボールはクロスバーの遥か上へ。取り戻せないゲームリズム。
36分は暁星。右サイド、ゴールまで約30mの位置から、宮川が無回転で狙ったFKはわずかにゴール右へ。39分も暁星。中舘が左へ振り分け、酒井が入れたクロスにマーカー2人を引きずりながら渡邉が当てたヘディングは枠の右へ外れましたが、サイドからのクロスというパターンの徹底は間違いなく相手の脅威に。「前半の終わりくらいからこっちの攻めも良くなったね」と林監督。20分前後を境に両者のペースが入れ替わった前半は、スコアレスでハーフタイムに入りました。
10分間の休息を挟んでも流れはそのまま。43分は暁星。右サイドでSBの森春貴(3年・暁星中)が絡んだ流れから岩本が中へ折り返し、及川が打ち切ったミドルはクロスバーの上へ外れましたが、後半のファーストシュートを手にすると、48分のチャンスも暁星。及川が右サイドへスルーパスを通し、中舘のカットインシュートはDFにブロックされるも、前線だけできっちりフィニッシュの形まで。49分には先に動いた林監督。中舘と佐藤優輝(2年)を入れ替え、アタッカーの陣容に変化を加えます。
駒沢第2を震わせたのは「キャプテンだし去年からまったく責任感から何から違うから、今日なんかも目の色変わっていたよね」と林監督も認めた14番。50分、右サイドで獲得したFK。前半より少し中央寄りのポイントに立ったのはここも宮川。無回転か、それとも巻いたボールか。短い助走から後者を選択した宮川が蹴ったボールは、綺麗な弧を描いてゴール左上へ飛び込みます。「俺はCKとかFKとかそのあたりはアイツらに任しているの」という指揮官の信頼に応える宮川のゴラッソ。暁星が先にスコアを動かしました。
畳み掛けた"白"を纏う林軍団。55分、右サイドでボールを持った渡邉は、そのままピッチを縦断しながら左へ運ぶと、そのまま左足でミドルにトライ。左スミへ向かったボールは、チョン・ジョンオも懸命に飛び付きましたが、一歩及ばずゴールネットに収まります。「思わぬ追加点」と率直に振り返ったのは林監督。わずか5分間で暁星が2点のアドバンテージを手にしました。
小さくないビハインドを追い掛ける中でも、単発の攻撃ばかりが目に付き、ゴールの匂いが漂わなかった東京朝鮮の追撃弾は突然に。62分、左サイドからリ・キョンチョルが放り込んだボールにハン・ヨンテが競り合うと、こぼれをリャン・ソッチュは再び中央へ。至近距離からハン・ヨンテが叩いたシュートは、クロスバーに当たってゴールネットを揺らします。やはりここぞという時に頼りになるエースの10番。たちまち点差は1点に縮まります。
一瞬で変わった流れ。64分は東京朝鮮。リ・キョンチョルが左へ短く繋ぎ、リャン・ヒョンジュがカットインから狙ったシュートはDFが何とかブロック。直後のCKをリャン・ヒョンジュが蹴り込むと、ファーで合わせたハン・ヨンテのヘディングは枠の右へ。72分も東京朝鮮。コ・スンドクの右CKから、こぼれにリャン・ソッチュが反応。シュートはヒットしなかったものの、次々と暁星ゴールへ押し寄せる赤い稲妻。
それでも「冬と春には全国トップレベルくらい走らせているから、そんなに急に運動量は落ちない」と林監督も自信を覗かせたスタミナの部分は、押し込まれる展開でも衰えを知らず。むしろ劣勢の中で研ぎ澄まされた集中力が結実したのは74分。及川のパスを張智視(3年・ソレイユFC)が右へ振り分けると、佐藤はマーカーを外して鋭いクロス。ここに飛び込んでいたのは、しっかり中央に潜っていた張。狂喜と絶叫の応援団。アディショナルタイムに訪れたラストプレーのピンチも小林がファインセーブで凌ぎ切り、聞いたのは勝利を告げるホイッスル。「技術とかフィジカルの強さというのは他のチームにはなかなか追い付かない所があるけど、"想い"とか"魂"という所では負けられないからね」と指揮官が言い切った暁星が大一番を制し、2次トーナメントへ駒を進める結果となりました。
暁星のやり切る力が優ったゲームという印象です。CBの小林大輔(3年・暁星中)を欠く中で、前半途中からハイボールを放り込んできた相手にも、増永と沼崎がきっちり対応。「ヘディングで勝つということは蹴られた時に良いポジションを取っているということだよね」と林監督。「CBがヘディングで頑張って返していたから」(林監督)、0-0なら問題なしと見ていた前半を乗り切れたのは間違いない所。再三狙っていたクロスが3点目という成果で実ったあたりにも、愚直にやり切れるメンタルの強さを感じました。「コイツらは試験期間だったから非常にタイトだったんだよね。みんな良く勉強するから、コンディション的に心配だったんだけど、今日は良く頑張ったんじゃないの」と指揮官も評価を口に。ダークホースから本命へ。首都の赤い彗星が加速度を増して、ネクストステージへと殴り込みます。 土屋
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